トランスファー (自動車)
トランスファーとは、四輪駆動の自動車に特有の機構であり、エンジンで発生した動力を必要に応じて前後輪へ伝達する機構である。
概要[編集]
トランスファーは端的に言ってしまえば二輪駆動(2WD)と四輪駆動(AWD)を切り替える機構である。パートタイム式AWDにおいては車内のレバーやスイッチが設けられており、乾燥路などのAWDを必要としないときは前後輪のどちらかが駆動輪となる2WDで駆動し、未舗装路などの滑りやすい路面などではトランスファーを操作して駆動方式をAWDに切り替えるものである。
パートタイム式で一般的な後輪駆動(RWD)ベースの車両(スズキ・ジムニーなど)の場合、トランスファーは通常トランスミッションの後方に設置され、RWDの際はトランスファーのインプットシャフトと直結しているリアアウトプットシャフトを通じて後輪にのみ動力が伝達される。トランスファーを操作しAWDにする際はギヤやチェーンでフロントアウトプットシャフトに動力が伝達され、動力が前輪へ伝達されるようになっている。本格的なSUVにおいては単純に二輪駆動と直結(リジッド)四輪駆動とするもののほか、加えてセンターデフを有するフルタイムAWDまで切り替えることができる車種も存在する。また、このトランスファーと副変速機を一体化したユニットが採用されることもある。
四輪駆動の駆動方式を切り替えるという「システム」に注目すればフルタイムAWDのセンターデフもトランスファーと見做すことができる。こういった場合は能動的な切り替えが不可能ではあるが、LSDや電子制御により路面状況に応じて駆動状況を自動で切り換えているものである。また、スバルのアクティブトルクスプリットAWDはセンターデフを持たないものの、マルチプレートトランスファーという技術が元になっている制御方式であり、今も概念図ではトランスファー制御と表記されているものである。トランスミッション後部に油圧式の多板クラッチを自動制御することで前後への動力伝達を100:0から50:50まで状況に合わせてコントロールすることができる。また、日産自動車のアテーサE-TSは通常RWDとなっているものの、後輪の空転と横Gを検知して前輪へ駆動力を分配する仕組みとなっている。
パワーテイクオフ[編集]
一部のSUVに搭載されるウインチ(メカニカルウインチ)や軽トラックのダンプカーなどにはパワーテイクオフという装置が設けられていることもある。これはエンジンの動力を車輪ではなく機器の動作に転用するための機構であり、機構的にはトランスファと同様のものが装備されることがある。