副変速機
副変速機とは、自動車のトランスミッションの変速範囲からさらに広い範囲をカバーするため、主となる変速機とは別に設けられる変速機のことである。英語圏では「サブトランスミッション(Sub Transmission)」とも呼ばれる。
概要[編集]
エンジンの動力を効率よくタイヤに伝達するために使われるトランスミッションであるが、従来の有段ギア式の場合はトランスミッションがカバーできる範囲に限りが出てしまう。また、そういった場合にトランスミッションの段数を増やすという対応もあるが、車両設計上の制約から難しい場合もあり、そういった場合に省スペースでより多段階化するために設けられるのが副変速機である。
副変速機には主変速機全体の変速範囲を変えるタイプの他、主変速機にさらに1段か2段増やすタイプの物がある。前者のタイプとして、スバルの一部車種に採用されていたデュアルレンジというものがあり、シフトレバーとは別のレバーで操作することで副変速機を操作することができた。後者のタイプであれば軽トラックなどでよく採用されており、シフトレバーと一体となっているものがある。
なお、ドライバーが操作できない副変速機もあり、2010年代にスズキがスズキ・ワゴンRなどに採用していた副変速機付きCVTはその一例である。これはCVTからの出力軸にさらに有段の変速機を組み合わせたものであり、小型化して変速範囲が狭くなってしまったCVTの変速範囲を広げるために採用された。
大型トラックの場合はディーゼルエンジンの狭い常用回転域をフル活用するため、副変速機によるギアの多段化が行われている。近年ではオートメイテッドトランスミッションにより、主変速機と副変速機の両方を自動制御するトランスミッションも採用されている。
二輪駆動の自動車にも採用された例があるほか、ホンダ・CT125のようにバイクに搭載された例もある。
SUVにおける副変速機[編集]
SUVにおける副変速機は、雪道などで使用される高速(Hi)とより強いトルクを路面に伝えるときに使用される低速(Lo)の切り替えになっていることが多い。低速ギアを選択するとギアがよりローギアになり、タイヤに伝達されるトルクが増してより強力な駆動力を発揮することできる。本格SUVにおいては必須とされる装備でもある。
なお、SUVにおいては駆動輪の切り替えを行うトランスファーと混同されている例がある。これはSUVにおけるトランスファーの操作には2駆と4駆の切り替えの他、AWDのハイとローの切り替えという副変速機の操作も含まれているためである。また、説明書などでは特に明記せず「トランスファーの操作」として書かれていることも多い。そのため、一般ユーザが副変速機=トランスファーが同一のシステムと認識してしまっていると指摘する自動車コラムも存在する[1]。