魔物の証明
『魔物の証明』(まもののしょうめい、原題:英: An Item of Supporting Evidence)は、イギリスのホラー小説家ブライアン・ラムレイによる短編ホラー小説。タイタス・クロウの初期作品でありクトゥルフ神話。
1968年2月に書かれ、オーガスト・ダーレス主催の『アーカム・コレクター』1970年冬号に掲載された[1]。ダーレスから薄手の小冊子への掲載用に掌編を書いてほしいという要望を受けて執筆された[2]。
あらすじ[編集]
ロリウス・ウルビクスが著した「国境の要塞」には、ローマと神話生物の戦いが記されている。蛮族が地獄から召喚した魔物イェグ‐ハは、ローマ軍を蹂躙するも、恐怖に錯乱した一兵士の剣によって討ち倒される。その後ウルビクスは、手練れ数名を連れて原野の只中に出て行ったが、その目的は定かではない。
20世紀となり、とある遺跡から、480体にわたるローマ兵士の惨殺死体が発掘され、話題となる。またタイタス・クロウは、ウルビクスの著作に材をとったクトゥルー神話歴史小説「イェグ‐ハの王国」を発表する。
怪奇画家チャンドラー・デイヴィーズは、クロウの作品に不満がある。優れた娯楽小説と高評価しつつも、魔物がさも実在したかのように書かれているのは、歴史をかじった者ならばまるでデタラメとすぐにわかってしまい、失敗作品であるという。デイヴィーズは、ローマ軍が蛮族に負けた事実を、歪曲して怪物に壊滅させられたと書いただけだろうとみなす。歴史小説と謳っているから、愚かな読者達は魔物が実在したと信じてしまうではないか。
クロウのブロウン館を訪問したデイヴィーズ画伯は、クロウと討論を交わす。クロウはウルビクスの著書を読み上げ、さらに大英博物館に所蔵されている有翼無顔の怪物像について説明する。食い下がるデイヴィーズに、クロウはある物品を取り出して見せる。
ウルビクスがイェグ‐ハの死体を埋めた場所を訪れたクロウは、怪物の残骸を発掘して持ち帰っていた。イェグ‐ハの「眼窩のない髑髏」は文鎮にされ、「一対の翼の骨」はハンガーとして使われている。クロウはデイヴィーズに口外無用を約束させ、次の著書の挿絵を担当することも引き受けてもらう。
登場人物・用語[編集]
- タイタス・クロウ - ブロウン館の主。クトゥルー神話作家。
- チャンドラー・デイヴィーズ - 怪奇画家。クトゥルー神話作品を時代遅れと評する。ホラー通でこだわりが強い。
- イェグ‐ハ - 無貌でずんぐりした体に翼をもつ怪物。残忍で凶暴。大英博物館には、身長10フィート(3メートル)の彫像が収蔵されている。
- 「イェグ‐ハの王国」 - クロウが執筆したクトゥルー神話歴史小説。
- 「国境の要塞」 - あまり世に知られていない、ロリウス・ウルビクスの著作。原典は西暦138年に書かれ、クロウは翻訳本を持っている。
収録[編集]
関連作品[編集]
- 縛り首の木 - 1968年3月執筆、『アーカム・コレクター』1970年冬号で(本作と同時に)発表[1][2]。
- 黒の召喚者 - 1967年8月執筆、1971年の処女単行本『黒の召喚者』で発表[1]。
- 呪医の人形 - 1970年4月執筆。ジェラルド・ドーソンが再登場する。