縛り首の木

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縛り首の木』(しばりくびのき、原題:: Billy's Oak)は、イギリスのホラー小説家ブライアン・ラムレイによる短編ホラー小説。

1968年3月に書かれ、オーガスト・ダーレス主催の『アーカム・コレクター』1970年冬号に掲載された[1]。ダーレスから薄手の小冊子への掲載用に掌編を書いてほしいという要望を受けて執筆された[2]

タイタス・クロウの初期作品。クトゥルフ神話ではあるが、お話としては幽霊譚であり、ブロウン館にまつわる話。『深海の罠』に登場していた「水神クタアト」の掘り下げがある。「水神クタアト」がきっかけだが、本題の幽霊譚とは関係がない。

あらすじ[編集]

1675年、ビリーという男が、魔術を用いたと恐れられ、縛り首にされる。その土地には、1800年代後半にブロウン館が建てられる。館では奇妙な音が聞こえ、音の原因をつきとめようとした所有者は発狂し、次の所有者も音を嫌い、最終的にはタイタス・クロウが館を購入する。

ノンフィクション作家のドーソンは、ビリーを取り上げた怪奇実話集を著し、また取材調査中に異端の書物「水神クタアト」のことを知り実物を見たいと考えるようになる。探求の末に、タイタス・クロウという人物が個人蔵していると知り、連絡をとりつける。ドーソンは、クロウの隠棲するブロウン館を訪問し「人革装丁の汗をかく本」を見せてもらう。

神秘を信じていないドーソンは、クロウも神秘を信じていないのだと思っていた。だがクロウは神秘はあると言う。疑うドーソンにクロウは、幽霊をただちに見せることはできないが、幽霊の実在を示す手がかりを示すことならできると続ける。

梁がきしむような音が聞こえ、クロウは「縛り首のの木」がビリーの体重できしむ音だと説明する。ドーソンは、単に風で木の枝がきしむ音だろうと、カーテンを開けて窓の外を確認する。窓の外には何もなく、音だけが鳴っている。縛り首の立ち木は、70年前に館を建てた時に、とっくに切り倒されて失くなっている。

登場人物・用語[編集]

  • ジェラルド・ドーソン - 語り手。ノンフィクション作家。オカルトを全く信じていないが、著書を売るために、あたかも神秘が実在するかのように書いている。「水神クタアト」を見たいと考え、ブロウン館のクロウを訪問する。
  • タイタス・クロウ - ブロウン館の主。「水神クタアト」や、奇妙な大時計を所有する。
  • 大英博物館の学芸員 - 「水神クタアト」の閲覧を求めるドーソンの要求を断り、代わりにクロウを紹介する。
  • ウィリアム・フォヴァーグ(ビリー) - 280年前に死んだ黒魔術師。裁判に連行される途上で、農民たちに襲撃され、リンチの果てに縛り首にされた。
  • 「水神クタアト」 - 大英博物館収蔵、クロウの個人蔵、ほか1冊の、最低3冊が現存する。クロウの1冊は、400年以上前に製本された人革装丁もの。実用的な妖術書。
  • ネクロノミコン」 - 小説家がでっちあげたフィクションアイテム。だがクロウ曰く、実在する。

収録[編集]

関連作品[編集]

  • 魔物の証明 - 1968年2月執筆、『アーカム・コレクター』1970年冬号で(本作と同時に)発表[1][2]
  • 黒の召喚者 - 1967年8月執筆、1971年の処女単行本『黒の召喚者』で発表[1]

脚注[編集]

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注釈[編集]

出典[編集]

  1. a b c 創元推理文庫『タイタス・クロウの事件簿』タイタス・クロウについての若干の覚え書き、より。
  2. a b 創元推理文庫『タイタス・クロウの事件簿』魔物の証明、より。