黒の召喚者
『黒の召喚者』(くろのしょうかんしゃ、原題:英: The Caller of the Black)は、イギリスのホラー小説家ブライアン・ラムレイによる短編ホラー小説。1967年8月に執筆され[1]、1971年に発表された。続編『続・黒の召喚者』( The Black Recalled)は1983年に発表された。
クトゥルフ神話の1つで、タイタス・クロウが初登場した作品であり、ラムレイがプロ作家として書いた最初期の作品の1つである[2]。オーガスト・ダーレスが手掛けたラムレイ処女出版の表題作であり、邦訳単行本でも表題作になっている。
ラムレイが創造したヒーロー、タイタス・クロウを主役としたオカルトアクション短編である。東雅夫は『クトゥルー神話事典』にて「邪悪な魔術師とクロウの妖術合戦譚」と解説している[3]。初期翻訳を手掛けた朝松健は、『続』での作家としての成長を高評価しており、よくある作品から、ラムレイ自身の創意にあふれた作品になったという旨の解説をしている[4]。
タイタスは、長編『タイタス・クロウ・サーガ』にて、1968年に消息を絶つことになっており、『続』はその後日談となっている。CCD=クトゥルー眷属邪神群という名称も、サーガで登場するものである[注 1]。また邪神イブ=ツトゥルについては、本体は登場しない。
『黒の召喚者』あらすじ[編集]
暇を持て余していたチェンバーズとシモンズという2人の金持ちは、軽い気持ちでジェームズ・D・ゲドニーの悪魔教団に加入するが、予想以上の邪悪さから脱退したいと考えるようになる。 ある日、シモンズは酒の席でゲドニーの悪口を漏らしてしまい、教団の幹部に聞かれる。ゲドニーはシモンズに脅しをかけ、3日後にシモンズはチェンバーズに恐怖の電話をかけた後に、駆けつけたチェンバーズの目の前で怪死を遂げる。チェンバーズはオカルティストのタイタス・クロウに救援を要請するも、やがて死んでしまう。
タイタスは、あえてゲドニーの交友関係に飛び込み、挑発と駆け引きを仕掛ける。タイタスの住むブロウン館に乗り込んだゲドニーは<暗黒のもの>を召喚してタイタスを攻撃するが、タイタスは流水で防ぎ術者のもとに送り返し、ゲドニーを倒す。
『続・黒の召喚者』あらすじ[編集]
『黒の召喚者』から数年後の1968年10月、ブロウン館が大嵐で倒壊し、タイタスとド・マリニーは行方不明となる。翌日、ゲドニーの残党の一人であるアーノルドはタイタスの友人と偽り、瓦礫の山を捜索する警察を手伝うふりをして、タイタスの書物を盗み去る。アーノルドはそれらの記録を調べ、教主のゲドニーを返り討ちにして殺したイブ-ツトゥルの魔術についての知識を得る。
8年後の1976年、アーノルドは同じ教団にいたギフォードとブロウン館の跡地で落ち合い、タイタスが死んだと判断して一安心する。その後、2人は相手を殺して組織を吸収合併しようと果し合いに持ち込む。アーノルドは、盗んだ知識を駆使し、黒の召喚術でギフォードに攻撃を加える。だが、ギフォードもまた黒の召喚術を極めており、肉体を<暗黒のもの>そのものへと変化させてアーノルドの術を無効化し、アーノルドを殺す。ギフォードが勝利の余韻にひたるもつかの間、跡地に残っていたタイタスの結界が作用し、ギフォードは打ち滅ぼされる。
主な登場人物・用語[編集]
- タイタス・クロウ - 主人公のオカルティスト。『続』には登場しない。
- アーカムの知人 - ウィルマース教授の教え子。タイタスに、<暗黒のもの>にまつわる情報を提供する。
- カボット・チェンバーズ - 有閑紳士。友人の怪死に恐怖し、タイタスに助けを求めた後、命を落とす。
- シモンズ - 有閑紳士。酒に酔ってゲドニーを侮辱し、呪殺される。
- ジェームズ・D・ゲドニー - CCD教団の教主・オカルティスト。邪神イブ-ツトゥルの血液を召喚して、人を殺す。
- ジェフリー・アーノルド - 『続』に登場。タイタスの蔵書を盗む。ゲドニーの教団を引き継ぎ、地下に潜伏していた。
- ベンジャミン・ギフォード - 『続』に登場。アメリカに渡って自分の教団を作った。
- <黒きもの>/<暗黒のもの> - 邪神イブ-ツトゥルの血液と言われる物質。異界から召喚し、敵の体に雪のように降らせて、溺れさせ窒息させる。或る古代文字のカードを標的に付与すると、マーキング追跡して出現する。
関連作品[編集]
- タイタス・クロウ・サーガ - 最終作『エリシア』に、イブ=ツトゥルが登場する。