魔の系譜
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『魔の系譜』は、民俗学者・谷川健一の最初期の著作。
概要[編集]
魔とは何か? 日本の王権を支えてきた影の部分を、著者は日本人の情念の歴史として捉え、死者の魔が生者を支配するという奇怪至極な歴史の裏側の流れを認めないものは、真の歴史を理解することはできないと主張する。呪術師や巫女の発生、呪詛や魔除けなどを通して、日本人特有の怨念を描く著者の眼光は鋭く、柳田国男や折口信夫がいまだ形をなし得なかった論点を直截に表現した本書が、
— 講談社学術文庫の背表紙より谷川民俗学 の原点といわれるゆえんであろう。
1971年に紀伊国屋書店から、1984年に講談社学術文庫から刊行されている。
日本史の裏面を流れる「魔」の系譜について考察している。ここでいう「魔」とは、死者が生者をうごかす力、敗者が勝者に与える影響、ノロイ、呪詛・妖術などの総称である。
学術文庫版のまえがきで折口信夫や柳田國男に触れている通り、本書もまた、細分化された精密な研究ではなく、諸研究を高い視点から鳥瞰して総合することを志向した内容である。
夢野久作の小説に多く触れているのも特徴で、「犬神考」の章では『犬神博士』、「狂笑の論理」の章では『いなか、の、じけん』『ココナットの実』に言及している。ただし、いずれも数行程度触れているにすぎない。
目次[編集]
- 怨念の序章
- 聖なる動物
- 崇徳上皇
- バスチャン考
- 仮面の人形
- 再生と転生
- 地霊の叫び
- 魂虫譚
- 犬神考
- 狂笑の論理
- 装飾古墳
類似する主張[編集]
- 井沢元彦 : ジャーナリスト、在野の歴史研究家。「怨霊」や「言霊」をキーワードに、日本の歴史を裏面から考察した著作を残している点で共通している。『魔の系譜』が難渋でとっつきにくいのに比べると、井沢元彦の『日本史真髄』などはかなり読みやすい。