飯盛信男

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飯盛 信男(いさがい のぶお、1947年 - 2017年5月17日)は、マルクス経済学者。佐賀大学名誉教授。サービス産業第三次産業)の研究で知られる。

経歴[編集]

佐賀県生まれ。1969年九州大学経済学部卒業。1974年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。1974年佐賀大学経済学部講師、1976年同助教授、1986年同教授[1]。1987年「サービス経済論序説」で経済学博士(九州大学)[2]。1991年佐賀大学大学院経済学研究科教授[1]。1999年『規制緩和とサービス産業』(新日本出版社、1998年)で日本流通学会賞学会賞受賞[3][4]。2012年定年退職、佐賀大学名誉教授。2017年死去、70歳。正四位瑞宝中綬章受章[1]

人物[編集]

サービス論研究の第一人者で、労働価値説に基づくサービス産業の理論的・実証的分析をリードした[5]。サービス労働は価値を形成するとするサービス労働価値生産説=有用効果生産説を主張した[1]。サービス労働を不生産的労働、価値非形成とする通説に対し、赤堀邦雄がサービス労働を価値形成的とする拡張説を定式化した(『価値論と生産的労働』三一書房、1971年)[6]。飯盛と馬場雅昭も拡張説の立場をとったが、馬場がサービス業を物質的生産部門であるとしたのに対し、飯盛はサービス業を非物質的生産部門であると主張した[7]。飯盛は『資本論』の運輸業を物質的生産部門であると規定する箇所から「有用効果」概念を採り入れ、この概念を商業、金融保険、不動産を除くサービス産業全般に広く適用している[8]スターリンが『弁証法的唯物論と史的唯物論』で定式化した物質的生産活動のみが所得をうむとの見解、対人サービスを広義の物質代謝活動とみなす櫛田豊らのサービス労働・労働力価値形成説には批判的である[1]

現代日本については小泉内閣の構造改革路線を批判し、立ち後れている教育・医療・福祉など公共サービス部門の拡充を主張した[9]自交総連の「タクシー運転免許の法制化を求める賛同署名」の賛同者に名を連ねている[10]

佐々木隆治は資本論の入門書で飯盛の『日本経済の再生とサービス産業』(青木書店、2014年)をサービス労働関係で「最初に読む本としておすすめ」と紹介している[11]

著書[編集]

  • 『生産的労働の理論――サービス部門の経済学』(青木書店、1977年)
  • 『生産的労働と第三次産業』(青木書店、1978年)
  • 『日本経済と第三次産業――低成長過程におけるその構造』(九州大学出版会、1981年、第2版1986年)
  • 『サービス経済論序説』(九州大学出版会[佐賀大学経済学会叢書]、1985年)
  • 『経済政策と第三次産業』(同文舘出版、1987年)
  • 『サービス産業の展開』(同文舘出版、1990年)
  • 『サービス産業論の課題』(同文舘出版、1993年)
  • 『平成不況とサービス産業』(青木書店、1995年)
  • 『規制緩和とサービス産業』(新日本出版社、1998年)
  • 『経済再生とサービス産業』(九州大学出版会、2001年、第2版2003年、第3版2005年)
  • 『サービス産業』(新日本出版社、2004年)
  • 『構造改革とサービス産業』(青木書店、2007年)
  • 『日本経済の再生とサービス産業』(青木書店、2014年)
  • 『サービス経済の拡大と未来社会』(飯盛寿子、枝松正行編、桜井書店、2018年)

出典[編集]

  1. a b c d e サービス経済の拡大と未来社会 桜井書店
  2. CiNii 博士論文
  3. 日本流通学会賞 日本流通学会
  4. researchmap
  5. 櫛田豊「『サービス商品論』に対する飯盛信男氏の書評へのリプライ」『季刊経済理論』第55巻第2号、2018年
  6. 飯盛信男「サービス論争の到達点と展望 : 拙論に対する諸批判への回答」『佐賀大学経済論集』第32巻第2号、1999年
  7. 渡辺雅男「サービス経済論争における飯盛説の新たな展開とその問題」『佐賀大学経済論集』第44巻第5号、2012年
  8. 佐藤拓也「「有用効果」概念とサービス産業の実証分析」『佐賀大学経済論集』第44巻第5号、2012年
  9. サービス産業 新日本出版社
  10. 自交労働者No.660 自交総連
  11. 佐々木隆治『マルクス 資本論』角川選書、2018年、558頁