遠地津波

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遠地津波(えんちつなみ)は、地震の発生場所から遠く離れており、揺れが観測されなかった地域において観測される津波のことをいう。日本においては、震央が、本州四国九州北海道の沿岸から約600km以遠の地震に伴う津波をいう[1]。地震の規模は大きく波源が広いため、長周期の津波となることが多い[1]。遠地津波の特徴として、固有周期の大きい湾で波高が増幅される可能性があることや、津波による水位の振動が1日以上続くことも多いことなどが挙げられる[1]。対義語として「近地津波」がある。

概要[編集]

国外など遠地で発生した地震を「遠地地震」と呼ぶ。この遠地地震による津波を「遠地津波」と呼ぶのである。

地震津波は大規模で、遠方まで伝わるため、震源から遠く離れて揺れを観測しなかったにも関わらず、津波に襲われるという地域がある場合がある。これが遠地津波である。津波の到達まで時間があるので避難しやすく、人的被害防止は容易であるが、情報の伝達体制が整っていないと不意討ちを受ける形になり、被害が大きくなる。後者の例としては以下がある。

球形の地球表面では、発生した津波のエネルギーは地球の反対側の地点(対蹠点)に再び集中する。そのため、チリ沿岸で発生した津波は太平洋を挟んで反対側の日本に被害を及ぼしやすい性質がある。1960年のチリ地震津波では、日本にも三陸地方を中心に大きな津波が押し寄せ、1000人以上の死傷者が出るという甚大な被害が出た[2]。また同様の原理により、太平洋の中心に位置していて、かつ5,000 mの深海底に囲まれたハワイは、環太平洋各地からの津波を減衰しにくいまま受けるため、津波被害を受けやすい。

日本での対策[編集]

1960年の事例のように、日本には、チリなど南米で発生する地震により、たびたび遠地津波が襲来する。そのため気象庁では、国外でマグニチュード7.0 以上の地震、または都市部など著しい被害が発生する可能性がある地域で規模の大きな地震が発生した場合に、地震発生から概ね30分以内に「遠地地震に関する情報」を発表し、地震の発生時刻、発生場所(震源)、規模(マグニチュード)、日本や国外への津波の影響などの情報を提供している[3]。気象庁では、2010年のチリ地震による津波を踏まえ、太平洋の遠い海域で発生し日本へ来襲する遠地津波における予測精度の向上のため、 遠地津波データベースの改善、遠地津波予測シミュレーションの高速化・高精度化を行うとともに、 これらによる日本沿岸での津波予測値を海外の津波観測データを利用して修正し、より適切な津波警報等を発表する津波評価・解析装置の整備を進めるなどの対策を行ってきた[4]。例として、南鳥島には、1996年4月に、南米などから襲来する津波を、日本沿岸に到達する前に捕らえるための「遠地津波観測計」が設置された。ここで観測されたデータは、衛星回線を経由して気象庁へ伝送され、 津波注意報・津波警報などの情報に反映されている[5]

脚注[編集]

  1. a b c 海岸津波とその対策”. www.mlit.go.jp. 国土交通省(一部改変). 2021年2月26日確認。
  2. 遠地津波の外洋伝播計算”. www.pari.go.jp. 2021年2月26日確認。
  3. 遠地地震・津波”. webcache.googleusercontent.com. 気象庁(一部改変). 2021年2月26日確認。
  4. 気象庁|報道発表資料”. www.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年2月26日確認。
  5. 遠地津波観測”. www.jma-net.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年2月26日確認。