著作権判例百選第5版
『著作権判例百選 第5版』(ちょさくけんはんれいひゃくせん だい5はん)は、著作権侵害の申し立てを受けた地方裁判所の判決で、出版を差し止められた著作権関連の判例集である[1]。出版社は法律関連に強い有斐閣[1]。
背景[編集]
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第4版の書影 - 出版社のウェブサイトでみられる第4版の書影。「中山信弘・大渕哲也・小泉直樹・田村善之編」という責任表示が確認できる。 |
第5版に先立ち、2009年12月に第4版が発売された[2]。第4版では中山信弘・大渕哲也・小泉直樹・田村善之の4名が編者として記されていた[2]。それから6年後の2015年11月上旬に第5版が刊行されようとしていた[1]が大渕に編集の誘いが来ることはなかった[3]。
裁判[編集]
第4版で編者として示された4人の内、第5版の編集には参加しなかった大渕は、第5版と第4版が90%程度同一な内容で構成されており、第4版の二次著作物である第5版の編集者に自分の氏名を表示しなかったのは氏名表示権(著作権法第19条)の侵害であると、当該図書の差し止めを求めた[1]。一方、有斐閣はこの訴えに対して、「そもそも大渕哲也は『著作権判例百選第4版』の編集活動にも碌に参加しなかった。著作権法で言うところの著作者には当たらないのだから、著作者ではなく、著作者人格権も有さない。従って、彼の氏名を表示しないことは氏名表示権の侵害には当たらない」と主張した[3]。東京地方裁判所は、大渕の訴えを認めて、出版を差し止める仮処分決定を2015年10月下旬に下した[1]。
しかし、2016年11月11日に知的財産高等裁判所は、有斐閣の主張を認め、「第4版段階から著作権者ではなかった」と認定、著作権侵害の事実はなかったとした[3]。また、地裁の下した仮処分決定を取り消した[3]。これを受けて、有斐閣は「主張が認められ、ありがたい。刊行に向け検討している」旨のコメントを出していた[4]が、同月25日に「著作権判例百選〔第5版〕』刊行についてのお知らせ」で、翌月13日の刊行を予定していると発表し[5]、無事に出版されたようである。
書誌情報[編集]
- 『著作権判例百選』 小泉直樹、田村善之、駒田泰土、上野達弘、有斐閣、第5版。ISBN 978-4-641-11526-2。
出典[編集]
- ↑ a b c d e “「著作権判例百選」が著作権を侵害 「出版差し止め」が認められたのはナゼ?”. 弁護士ドットコム (2015年11月8日). 2016年11月25日確認。
- ↑ a b “著作権判例百選第4版〔No.198〕”. 有斐閣. 2016年11月25日確認。
- ↑ a b c d “「著作権判例百選」改訂版の著作権侵害否定し出版認める、知財高裁”. ブライナ (2016年11月15日). 2016年11月25日確認。
- ↑ “「著作権判例百選」改訂版の出版認める 知財高裁”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2016年11月14日21:50) 2016年11月26日閲覧。
- ↑ “著作権判例百選〔第5版〕』刊行についてのお知らせ(PDF)”. 有斐閣 (2016年11月25日). 2016年11月26日確認。
外部リンク[編集]
- 出版社の書籍紹介ページ
- 平成28年(モ)第40004号保全異議申立事件 決定 - 仮処分決定の認可をした一審の決定