第86回全国高等学校野球選手権大会決勝
深紅の大優勝旗、北の大地へ渡る!
- 小野塚康之
雪の冬に強い思いを持って鍛え続けた、野球少年達の夢!
- 伊藤史隆
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開催日時 | 2004年8月22日 | ||||||
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開催球場 | 阪神甲子園球場 | ||||||
監督 | |||||||
試合時間 | 2時間54分 | ||||||
2004年8月22日に阪神甲子園球場で行われた第86回全国高等学校野球選手権大会決勝(だい86かいぜんこくこうとうがっこうやきゅうせんしゅけんたいかいけっしょう)は、愛媛・済美と南北海道・駒大苫小牧が対戦した決勝戦。序盤から壮絶な打撃戦となったゲームは駒大苫小牧が制し、北海道勢初優勝を成し遂げた。
両校の勝ち上がり[編集]
済美[編集]
済美 | ||
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1回戦 | なし | |
2回戦 | 11 - 8 | vs. 秋田商 |
3回戦 | 6 - 0 | vs. 岩国 |
準々決勝 | 2 - 1 | vs. 中京大中京 |
準決勝 | 5 - 2 | vs. 千葉経済大学附属 |
春のセンバツで僅か創部3年目で初出場初優勝[1]。スラッガー鵜久森淳志を始めとした強力打線で圧倒、準々決勝の東北戦では終盤4−6で快進撃はここまでかと思われたが、脅威の粘りで高橋勇丞のサヨナラ3ランを呼び込んだ[2]。波に乗る済美は準決勝で明徳義塾を、初のナイターで行われた決勝戦で愛工大名電を制した[1]。
地方大会ではチームトップ打率の.750を誇る野間源生を始め打率4割以上のバッターが6人の重量打線を要して愛媛大会を制覇[3]。ただ、愛媛大会で徹底マークを受けた鵜久森が.188に沈んだ上[3]、高橋が不祥事でレギュラーはおろか、ベンチ入りメンバーからも外された[4]。また、エースの福井優也がほぼ一人で投げ抜くなどスタミナ面やリリーフ投手の出来が不安視されていた[3]。
蓋を開けてみれば鵜久森が1回戦の秋田商業戦[5]、2回戦の岩国戦で2試合連続本塁打[6]、準決勝の千葉経済大学附属戦でも本塁打を放つなど今大会3本塁打をマーク[7]。福井は2回戦の8失点を除いて27回を投げて4失点と安定した投球を見せた。守備は4試合で5失策とやや不安が見られるが、その不安を払拭するように4試合平均10安打。史上初の「春夏初出場で春夏連覇」を目指して決勝戦に臨んだ[8]。
駒大苫小牧[編集]
駒大苫小牧 | ||
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1回戦 | なし | |
2回戦 | 7 - 3 | vs. 佐世保実 |
3回戦 | 7 - 6 | vs. 日大三 |
準々決勝 | 6 - 1 | vs. 横浜 |
準決勝 | 10 - 8 | vs. 東海大甲府 |
駒大苫小牧は2001年に約半世紀ぶりの出場。前年2003年の第85回全国高等学校野球選手権大会では、初戦の倉敷工業戦で序盤大量リードにも関わらず台風10号の影響で雨天コールドゲーム[注 1]、翌日の再試合で涙を飲んだ[9]。翌日の新聞では「8・9の悲劇」と呼ばれた[10]。
前年の雪辱を果たすべく臨んだ秋季大会では全道大会決勝で鵡川に3−7で敗退[10]。その後、打倒鵡川を掲げ春季大会優勝[11]、夏の地方大会室蘭地区予選で再戦し雪辱を果たした[10]。2年連続の甲子園出場を果たした駒大苫小牧だが、済美とは投手起用が対称的で、岩田聖司、鈴木康仁の2枚左腕を中心に6人の投手で勝ち上がった[12]。打線に派手さは見られないが、3割以上が7人で送りバントもレギュラーナンバー全員が記録[12]。失策も7試合で僅かに3つと堅守を誇った[12]。
本大会では持ち味の猛打が炸裂。全ての試合で二桁安打を記録し、4試合で58安打の1試合平均約15本。本塁打は1回戦の佐世保実業戦でツーランを放った沢井義志と横浜戦でサイクルヒットを記録した林裕也の2本だが[13][14]、二塁打、三塁打の長打が多く、集中打が光った。この豪打の裏に隠れがちだが、犠打も非常に多く4試合で18個を記録した。投手陣は失点数が多いものの全試合継投で勝ち上がり、投球スタイルの違う2枚左腕の粘り強い投球でチームを決勝戦に導いた。
試合前の前評判[編集]
試合前の前評判は福井の投球と強打の駒大苫小牧が勝負に挙げられた[15]。特にスロースターターの福井の立ち上がりを攻め、序盤で3、4点リードを奪い主導権を握り、逆に福井は駒大苫小牧の打線の積極性を利用してボール球を有効に使っての粘り強い投球が注目された[15]。
総合力は済美が僅かに上回っているが駒大苫小牧も集中打を防ぎ、持ち前の強打を発揮できるかどうかが鍵を握ると見られた[15]。
試合内容[編集]
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試合経過[編集]
先攻・済美、後攻・駒大苫小牧で試合開始。NHKは小野塚康之、朝日放送は伊藤史隆が実況を務めた。
イニング | スコア | 経過 |
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1回表 | 済 2 - 0 駒 | ①甘井、右前安打②小松、三塁前犠打③水本、2球目に岩田の暴投で甘井三進。四球④鵜久森、空振り三振⑤西田、右越え二塁打で2点先制⑥野間、見逃し三振 |
1回裏 | 済 2 - 1 駒 | ①桑原、死球②澤井、投前犠打③林、右中間三塁打で桑原生還④原田、四球⑤糸屋、三塁ゴロ併殺打 |
2回表 | 済 5 - 1 駒 | ⑦田坂、四球⑧新立、三塁前犠打⑨福井、右前安打①甘井、四球②小松、左犠飛で1点追加③水本、四球。投手が岩田から鈴木に交代④鵜久森、押し出し四球⑤西田、押し出し死球⑥野間、二ゴロ |
2回裏 | 済 5 - 1 駒 | ⑥佐々木、三邪飛⑦桑島、⑧鈴木、中前安打。桑島は三塁に到達⑨五十嵐、①桑原、空振り三振 |
3回表 | 済 5 - 1 駒 | ⑦田坂、見逃し三振⑧新立、左前安打⑨福井、投前犠打①甘井、左前安打②小松、中飛 |
3回裏 | 済 5 - 3 駒 | ②澤井、左前安打③林、投前犠打④原田、二ゴロ。澤井は三塁へ進塁⑤糸屋、右中間三塁打で1点追加⑥佐々木、右中間二塁打で糸屋生還⑦桑島、死球⑧鈴木、一ゴロ |
4回表 | 済 5 - 3 駒 | ③水本、空振り三振④鵜久森、見逃し三振⑤西田、遊飛 |
4回裏 | 済 5 - 6 駒 | ⑨五十嵐、右越え三塁打①桑原、一ゴロ②澤井、左線二塁打で五十嵐が生還③林、四球④原田、死球⑤糸屋、二塁走者の林に打球が当たり守備妨害で林がアウト。記録は安打⑥佐々木、中前適時打で2人生還⑦桑島、一邪飛 |
5回表 | 済 6 - 6 駒 | ⑥野間、二ゴロ⑦田坂、遊内野安打⑧新立、投前犠打⑨福井、右前二塁打で田坂生還①甘井、左前安打。二塁走者・福井は本塁憤死 |
5回裏 | 済 6 - 6 駒 | ⑧鈴木、一飛⑨五十嵐、中直①桑原、②澤井、遊内野安打③林、二ゴロ |
6回表 | 済 9 - 6 駒 | ②小松、左越え本塁打③水本、中前安打④鵜久森、左線二塁打⑤西田、中前安打。三塁走者・水本は生還したが二塁走者・鵜久森は本塁タッチアウト⑥野間、投前犠打⑦田坂、左越え二塁打で西田生還⑧新立、左邪飛 |
6回裏 | 済 9 - 9 駒 | ④原田、四球⑤糸屋、左越えツーラン本塁打⑥佐々木、四球。投手が福井から藤村に交代⑦桑島、投前犠打⑧鈴木、空振り三振⑨五十嵐、左前安打で佐々木生還①桑原、中前安打②澤井、左飛 |
7回表 | 済 9 - 9 駒 | ⑨福井、中前安打①甘井、投ゴロ。福井は二塁進塁②小松、右飛③水本、空振り三振 |
7回裏 | 済 9 - 12 駒 | ③林、二エラー④原田、一塁前犠打⑤糸屋、遊ゴロ。林は三塁進塁⑥佐々木、左越え二塁打で林が生還⑦桑島、中越え二塁打で佐々木生還⑧鈴木、左前適時打⑨五十嵐、投手強襲内野安打。投手が藤村から福井に交代①桑原、右飛 |
8回表 | 済 10 - 12 駒 | ④鵜久森、⑤西田、左前安打⑥野間、投前内野安打⑦田坂、中犠飛⑧新立、初球に糸屋からの二塁牽制が逸れ、西田は三塁を狙うがタッチアウト、遊飛 |
8回裏 | 済 10 - 13 駒 | ②澤井、二ゴロ③林、四球④原田、投前犠打⑤糸屋、中前適時打⑥佐々木、左飛 |
9回表 | 済 10 - 13 駒 | ⑨福井、右中間二塁打①甘井、左前安打②小松、6-4-3の併殺打③坂本、死球④鵜久森、遊飛。試合終了 |
試合後[編集]
済美は3年生は満足感のあるコメントを残したが、2年生の福井は「もう一度帰ってくる」と悔しさを滲ませて甲子園を後にした[16]。翌年の選抜出場は逃したが夏出場し、2回戦で敗れ夏連覇とはならなかった。
駒大苫小牧は航空機内で祝福された他、優勝報告会の会場となった北海道庁旧本庁舎は大勢の人で埋め尽くされたという[17]。翌年の選抜と夏も出場し、夏は1948年(昭和23年)の小倉以来57年ぶり5校目の夏連覇を達成した。2006年(平成18年)は不祥事で選抜を出場辞退し、夏は南北海道大会を制して甲子園へ出場したが、田中将大と斎藤佑樹による2日間の熱投も及ばず、準優勝だった。メディアでは「2.9連覇」とも呼ばれる[18]。
記録[編集]
試合記録[編集]
記録 | スコア | 補足 |
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決勝戦両チーム二桁得点 | 済美 10−13 駒大苫小牧 | 大会史上初 |
決勝戦最多安打 | 39安打 | 大会新記録 |
決勝戦最多得点 | 23得点 | 大会新記録 |
チーム記録[編集]
記録 | 校名 | 補足 | |
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通算最高打率 | .448 | 駒大苫小牧 | 大会新記録 |
決勝戦最多安打 | 20 | 駒大苫小牧 | 大会タイ記録(2回目) |
出典[編集]
- ↑ a b https://www2.myjcom.jp/special/tv/sports/baseball/highschool/column/detail/20220623.shtml
- ↑ https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201603250007-spnavi
- ↑ a b c https://www.asahi.com/koshien2004/profile/team40.html
- ↑ https://dot.asahi.com/articles/-/87128?page=1
- ↑ https://www.zakzak.co.jp/article/20230306-6U6UWA7K5ZOBPEU3MWVT4AHHUU/
- ↑ https://www.asahi.com/koshien2004/news/TKY200408160212.html
- ↑ https://www.asahi.com/koshien2004/news/TKY200408210159.html
- ↑ https://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=097-20190806-11
- ↑ https://www.yomiuri.co.jp/sports/koshien/summer/news/20190815-OYT1T50242/
- ↑ a b c https://jinde.co.jp/archives/note/30293.html
- ↑ http://www.fanxfan.jp/bb/spr04/haru/#hokkaido
- ↑ a b c https://www.asahi.com/koshien2004/profile/team02.html
- ↑ https://www.asahi.com/koshien2004/nanboku/MYT200408130001.html
- ↑ https://www.asahi.com/koshien2004/nanboku/MYT200408200012.html
- ↑ a b c https://www.asahi.com/koshien2004/news/TKY200408220128.html
- ↑ https://www.asahi.com/koshien2004/nanboku/MYT200408240001.html
- ↑ https://vk.sportsbull.jp/koshien/bestgame47/articles/ASL3X7QH4L3XUTQP03H.html
- ↑ https://www.jiji.com/jc/v?p=ziku-koushien_komazawa
脚注[編集]
- ↑ 現在は継続試合(サスペンデッドゲーム)が導入されている。