特別背任罪

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特別背任罪(とくべつはいにんざい)とは、刑法規定の背任罪の特別法として会社法等に規定された犯罪類型である。未遂も罰せられる。懲役罰金の併科も認められる[1]。典型的背任事例は「不正融資」「不良貸付」であり、十分な担保がないまま融資を行う場合がある。

会社法の規定[編集]

会社法960条1項に特別背任罪の規定「取締役等の特別背任罪」がある。行為者が一定の責任ある地位にある場合に刑法より重い処罰がある。

  • 対象:取締役、会計参与監査役又は執行役支配人、事業に関するある種類または特定の事項の委任を受けた使用人、検査役、清算人
  • 目的:自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的
  • 行為:任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたとき
  • 罰則:10年以下の懲役もしくは 1000万円以下の罰金

保険業法の規定[編集]

保険業法第322条に「取締役等の特別背任罪」がある。

  • 対象:相互会社の取締役、執行役、会計参与又は監査役、保険会社の保険管理人又は保険計理人
  • 目的:自己若しくは第三者の利益を図り又は保険会社等に損害を加える目的
  • 行為:任務に背く行為をし、当該保険会社等に財産上の損害を加えたとき
  • 罰則10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金

そのほか

イトマン事件[編集]

戦後最大の経済事件とされる。大阪市の繊維商社・伊藤万(のちイトマン)の河村良彦社長が許永中の所有していた絵画・骨董品などを総額676億円で買い受けた。時価の2~3倍以上という金額であったから、伊藤万は多額の損害を受けた。さらに伊藤萬の経営に批判的な記事を書いた新潮社日本経済新聞社に資金が流れた[2][3][4]

1991年7月23日商法特別背任罪、並びに法人税法違反の罪で河村良彦元社長、伊藤寿永光元専務、許永中が逮捕された[[5]最高裁判所は、3人の上告をいずれも棄却し、それぞれ河村良彦元社長は懲役7年、許永中は懲役7年6か月・罰金5億円、伊藤寿永光は懲役10年が2005年10月に確定した。

脚注[編集]

  1. 佐久間修(2011)「刑法からみた企業法務 第3回会社法上の犯罪」ビジネス法務
  2. 衝撃事件の核心イトマン事件OB激白産経新聞、2018年12月19日
  3. 戦後最大の経済事件「イトマン事件」の深奥東洋経済ONLINE、2016年10月15日
  4. 國重惇史(2016)『住友銀行秘史』講談社
  5. >許永中告白10時間「イトマン事件の真実」