東武5050系電車
東武5050系電車(とうぶ5050けいでんしゃ)とは、かつて東武鉄道が保有していた車両の1形式。東武鉄道において最後まで残った、吊り掛け駆動方式の機器流用車であった。
概要[編集]
昭和30年代後半までに58両が更新された7300系と162両が新造された7800系は昭和50年代半ばになると後に登場した東武8000系電車に比べて接客設備が見劣りし、更新時期に迫っていた。そこで1979年より12両が5000系に更新されていたが、1980年からは5050系として更新されていくことになった。
こうして1984年までに4連・2連各12本の72両が5050系に更新され、残る78両は同年以降5070系へと更新された。なお、7300系は一度更新を受けていたことから1981年から84年までに58両全車が廃車された。
構造[編集]
車体は8000系のものに準じ、編成構成もTMMTおよびMTとこちらも8000系に準ずる。5157編成以降は8000系の81103編成に準ずる形で客用窓の固定支持方式が金属枠支持となった。
主要機器と台車は流用品で、主電動機は出力142kWのHS-269やTDK-544となっており、この2つは同一性能のため1台車に混在することも度々あった。駆動方式は吊り掛け式となっており、歯車比は4.13で設定された。台車は種車のFS10やKH-20、NL-1で、いずれもほぼ同一品となっているが、軸受のベアリングをローラー式から密封式に、ブレーキシリンダーを台車式に改造している。
制御装置は日立製のMMC-H-10E3を使用し、弱め界磁起動段が付加されている。
ブレーキ方式はHSC電磁直通ブレーキであるほか、MGも冷房電源に対応した大容量型となった。CPについては種車から流用している。
運用[編集]
当初は伊勢崎線、東上線に配置されたが、1983年以降は冷房化率を上げる目的で野田線にも配置された。その後、1991年には全編成が野田線に集結したが1995年より8000系の転属が進められ、5000系5101編成と手を組む5551編成以外の70両が栃木地区や群馬地区へと転属した。特に5556 - 5560編成の5本10両については霜取り用パンタグラフ増設・抑圧ブレーキおよび砂撒き装置の設置といった改造が行われた。
なお、8000系との併結も可能であったが、性能差も大きいため、ダイヤの乱れからやむを得ず併結を行った数回以外は原則行われなかった。
しかし、老朽化で部品調達が困難になりつつあったことから5000系と手を組んでいた1999年の5551編成を皮切りに2001年には18両が運用を離脱。2003年の5556 - 5558編成3本6両を皮切りに順次廃車も進められた。
そして2006年3月限りで定期運用を終了。同年6月に2両編成は全廃。12月16日には5162編成によりさよなら運転が行われ、12月31日をもって運用を完全に終えた。
その後、2007年6月に最後まで残っていた5161編成が廃車となり、これをもって東武鉄道は言わずもがな、関東地区の大手私鉄における吊り掛け車が全廃となった。
廃車後はすべて解体処分となり、現存車はない。