日本語の形容詞

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日本語の形容詞は、連用修飾・連体修飾・文終止などの役割のある品詞のひとつ。述語に分類されるが、「主語が見当たらない」という理由から国文法分野において議論があった。「暗黙の主語」として話者を指すという解釈が日本語処理分野においては一般的であり、形容詞「恥ずかしい」においては「あいつは恥ずかしい奴だ」と言ったとしても当人は恥じていないので、「あいつは私に『恥ずかしい』と感じせしめる奴だ」と同義である。

概要[編集]

活用形としては

  • 連用形
  • 終止形
  • 連体形

があるが、現代国語文法では終止形は「連体形の終止用法」に置きかえられてほとんど使われず、文語の一部とされる。
時制もないので「未然形」「已然形」もない。「打消し形」「仮定形」「命令形」もないので活用形は少ないが、連用形に接続する形態素があるので、日本語を母語としない日本語学習者(というか、日本語処理技術者)の悩みの種ではあるものの、「憶えちゃえばどうってことない」というので活用形のひとつとして暗記する流儀もある。

  • かり・けり(「くあり」の省略形)
  • がる(表出)
  • そう(様態)

などがある。「くあり」は語幹に接続して「痛かった」「痛くなる」「痛ければ」などと活用する。
「がる」は「痛がる」「痛がった」などになり、「そう」は「痛そう」などとなるように、異なった用言に変化する。

活用形の分類[編集]

人間が読み書きする場合の活用型分類の数はせいぜい五六種だが、コンピューターで処理する場合の活用型分類の数は二十数種くらいになったりもする[1]
基本的にはの五種が日本語教育において重要である。

  • ア段の音で終わるもの
  • オ段あるいはウ段の音で終わるもの
  • エ段の音で終わるもの
  • イ段の音で終わるもの
  • シの音で終わるもの

ただし、日本語教育(非・ネイティブに対する日本語の教育)においては、「エ段形容詞」と「イ段形容詞」教える必要はほとんどない。それは語彙を見ると解る。

  • ア段 - 「赤い」「甘い」「有難い」「辛(から)い」「高い」「辛(つら)い」「でかい」「早い/速い」など。
  • オ段 - 「青い」「遅い」「重い」「黄色い」「くどい」「黒い」「白い」「酷(ひど)い」「広い」「細い」「惨(むご)い」など。
  • ウ段 - 「暑い」「軽い」「寒い」「怠い」「低い」「古い」「眠い」「緩い」など。
  • エ段 - 「幽けき」「猛き」「むくつけき」
  • イ段 - 「ずるっちい」「ばっちい」「ばばっちい」「みみっちい」
  • シ音 - 「美しい」「美味しい」「悲しい」「苦しい」「寂しい」など。

とたり、現代語の文法においてはエ音は使われず、文語的表現にしか出てこないので、「日本の古典文学史を研究するために日本に来ました」という留学生でもなければ、気にしないからである。
「だったら『イ段』も『チ音』でよくはないか?」という話にはなるが、これは口語的・発声的に崩れた形であるらしく、文語文法や方言や若者ことばやネトスラングまで網羅しようと思うと使い勝手が悪くなる。そこで「ある程度整った、『書かれた文章』」を対象とするならば、五種類で間にあう。

精密化と汎用化[編集]

「ありがとうございます」「おめでとうございます」は普通に用いられる。これを「挨拶文としての定型文」として辞書登録で逃げれば実用性はさほど落ちない。とはいで日本語は生き物なので、どこでどう暴れだすかわからない。そこでそのリスクについては改めて検討しておかねばならない。
五十音図をローマ字の二次元表記と考えたとすると、日本式・訓令式・ヘボン式では直交歓迎が崩れるため、これを固定的なアルゴリズムによって処理しようと思うとプログラムが継ぎ接ぎだらけの不細工なものになる。このローマ字かな変換の上にかな漢字変換システムを構築しようとすると破綻するというのは現今の IME の変換精度の無残さから容易に推察できる。
そのため、「ア段音末尾の形容詞は、当該ア段音の直前にある子音で分類したうえで品詞コードを振って辞書登録する」ということにすれば文法記述が簡単になる。そうなると言語処理系の二階建てになってしまって収拾がつかなくなりそうだが、そんなこともない。ellispで実証済である。

一音節の形容詞[編集]

「酸い」は「酸っぱい」と変化する。「愛(う)い」は現代語ではほとんど(時代劇の中でもなければ)使われなくなった。こうした事例が今後見つかるかどうかは不明である。

参考文献[編集]

脚注[編集]

  1. ただし実装方法によって異なる。

関連項目[編集]

その他[編集]

形容詞ア段音の語の例
カ・ガ・サ・ザ・タ・ナ・バ・パ・マ・ヤ・ラ・ワ行の順に並べてある。「ダ行」があるのかどうかは不明。

  • {赤|あか}い(AdjKa)
  • {紅|あか}い(AdjKa)
  • {柔|やわ}らかい(AdjKa)
  • {苦|にが}い(AdjGa)
  • {浅|あさ}い(AdjSa)
  • {五月蠅|うるさ}い(AdjSa)
  • {煩|うるさ}い(AdjSa)
  • {小|ちい}さい(AdjSa)
  • うざい(AdjZa)
  • {痛|いた}い(AdjTa)
  • {固|かた}い(AdjTa)
  • {硬|かた}い(AdjTa)
  • {堅|かた}い(AdjTa)
  • {危|あぶな}い(AdjNa)
  • {汚|きたな}い(AdjNa)
  • {穢|きたな}い(AdjNa)
  • {切|せつな}い(AdjNa)
  • やばい(AdjBa)
  • {ヤバ|やば}い(AdjBa)
  • {酸|す}っぱい(AdjPa)
  • {甘|あま}い(AdjMa)
  • {美味|うま}い(AdjMa)
  • {旨|うま}い(AdjMa)
  • {上手|うま}い(AdjMa)
  • {巧|うま}い(AdjMa)
  • {速|はや}い(AdjYa)
  • {早|はや}い(AdjYa)
  • {辛|つら}い(AdjRa)
  • {偉|えら}い(AdjRa)
  • {辛|から}い(AdjRa)
  • {柔|やわ}い(AdjWa)
  • {怖|こわ}い(AdjWa)
  • {恐|こわ}い(AdjWa)
  • {畏|こわ}い(AdjWa)