当用漢字
当用漢字(とうようかんじ)とは、かつて官公署で使用されていた漢字の字種および字体制限である。現代では厳格に従う義務はないのだが、マスコミや出版社などで「自主規制」として強要されている例もある。
概要[編集]
GHQの政策により、「将来は(フィリピンのように)英語が標準語とされるだろう」という目論見による漢字の字種および字体制限とされる。
字種としては、「当用漢字表」を検索されたい。
字体としては、「当用漢字体」がある。「𦾔⇒旧」などがある。
これ以降、「人名漢字表」「常用漢字表」などが」生まれた。それもあって、日本における漢字文化は辛うじて存続しているものの、中国では国策によって「簡字体」が推進され、ベトナムや韓国などでも国策によって漢字を廃字化する動きがあり、漢語の同音異義語の区別が不分明となり、しばしば混乱の原因となる。
詳細[編集]
占領下にあった日本(OJ。「オキュパイド・ジャパン」の略)において、1946年(昭和21年11月5日)において、制定されたものが当用漢字である。
- この表は,法令・公用文書・新聞・雑誌および一般社会で、使用する漢字の範囲を示したものである。
- この表は,今日の国民生活の上で、漢字の制限があまり無理がなく行われることをめやすとして選んだものである。
- 固有名詞については、法規上その他に関係するところが大きいので,別に考えることとした。
- 簡易字体については、現在慣用されているものの中から採用し,これを本体として,参考のため原字をその下に掲げた。
- 字体と音訓との整理については、調査中である。
使用上の注意事項
- イ) - この表の漢字で書きあらわせないことばは,別のことばにかえるか、または、かな書きにする。
- ロ) - 代名詞・副詞・接続詞・感動詞・助動詞・助詞は、なるべくかな書きにする。
- ハ) - 外国(中華民国を除く)の地名・人名は、かな書きにする。ただし,「米国」「英米」等の用例は、従来の慣習に従ってもさしつかえない。
- ニ) - 外来語は,かな書きにする。
- ホ) - 動植物の名称は、かな書きにする。
- ヘ) - あて字は、かな書きにする。
- ト) - ふりがなは、原則として使わない。
- チ) - 専門用語については,この表を基準として、整理することが望ましい。
とあるが、問題なのは(ニ)の「外来語は,かな書きにする」と(ト)の「ふりがなは、原則として使わない」である。
「アメリカ」は「外来語は,『かな書き』にする」という原則によれば、「あめりか」と表記することになり、でなければ「美国」(中国表記)と表記するしかないため、「亜米利加」はいかがなものか、という話にはなる[1]。
「ふりがなは、原則として使わない」ということになると、これもまた不都合である。「米飯」が「こめめし」なのか「べいはん」なのか、はたまた「こめはん」なのか「べいめし」なのかは判別しがたい。すなわち、「日本語の使用をなるべく不自由にすれば、日本人は(アメリカ人にも分かる)英語を使うようになるだろう(笑)」という思惑があったらしい。ただし、たかだか建国二百年にも満たない「あめりか」が、千年以上前から宮廷文学(源氏物語など)があった日本にメンチを切ってしまったのが失敗であって、日本語に混乱をもたらすという悪影響を及しただけに終わった。「日本の文化を知りたい」と思う外国人にとっては、日本語はかなり学習の難しい言語になっている。「国」「國」「圀」のどれが正しいのかを知るのにオンラインで使いやすい漢和辞典がないというのも困りものである。
とはいえウクライナに対してロシアがメンチを切ってしまったため、「キエフ」だった都市が「キーウ」になった。したがって、「キエフ風カツレツ」は「キーウ風カツレツ」になった。
問題点[編集]
教育上の配慮が不足している点は否めない。「佛」は「仏」にされたのに「沸騰」「弗素」はそのままであるのは、「弗」に「状態が変わる」という意味があることによる。「画数が多いと手で書くときに手間がかかる(キーボードなら関係ないのだが)」ので、「略字」だと思えばどうということはないのだが、「本来の文字」を教わらないで略字だけ教えるというのも困ったものである。「波乱」は「波瀾」だったが、「瀾(限度・限界を超えて)」の意味が失われてしまった。「歿」も「没」にされている。そうなると、「この表記で合ってるんだっけ?」という不安が拭えない。
関連項目[編集]
その他[編集]
参考文献[編集]
脚注[編集]
- ↑ 中華民国は現在では国連加盟国ではなく、「中華人民共和国」が「国交正常化」以降国連加盟国である。