天使の復讐
『天使の復讐』(てんしのふくしゅう、原題:Ms.45)は、1981年のアメリカ合衆国のエクスプロイテーション映画。監督はアベル・フェラーラ、主演はゾーイ・タマリス(ゾーイ・ルンド)。北米以外ではAngel of Vengeance のタイトルで公開された。
あらすじ[編集]
ニューヨークの縫製工場に勤める聾唖の少女タナ(ゾーイ・タマリス)は、1日に2度も強姦されて精神に不調をきたす。2度目に強姦された際、咄嗟の反撃で犯人を殺してしまったため、死体をバラバラにして少しずつ捨てることにした。翌日、死体を入れたビニール袋を捨てたところを彼女に好意を持つ若者に見られてしまう。落とし物をしたのだと思ってタナを追いかけてきた若者を、強姦しに来たのだと思い込み、強姦犯の持ち物だった45口径の拳銃で咄嗟に射殺してしまう。内気で地味な少女だったタナは、派手な化粧と衣装に身を包み、夜な夜なニューヨークの街でクズ男たちを殺していく。
解説[編集]
レイプ・リベンジ・ムービー、グラインドハウス/エクスプロイテーション映画の代表的な作品の1つで、撮影当時18歳だったゾーイ・ルンドのデビュー作。公開当時は酷評されたが、現在ではカルト映画として高い評価を得ており、特にルンドの魅力と表情豊かな演技が高い評価を得ている。『ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ〜血まみれの天使〜』(1973年)、『狼よさらば』(1974年)、『タクシードライバー』(1976年)の影響を受けているとされる。『ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ』は幼少期に強姦されたショックで口がきけなくなり、15年後に売春組織に騙されて強制売春させられた女性が、組織の元締めや客に復讐を行うレイプ・リベンジ・ムービー。主人公が法の枠を超えて私的に復讐を果たすストーリーは『狼よさらば』や『ダーティハリー』(1971年)などの自警団映画とも共通するが、本作の主人公は関係のない男性も殺す殺人鬼へと変貌する。クライマックスのハロウィン・パーティーの前に修道女のコスプレをしたタナが鏡に銃を向ける場面は『タクシードライバー』の有名なシーンが元ネタだとされる。アベル・フェラーラ監督は『ドリラー・キラー』(1979年)、『キング・オブ・ニューヨーク』(1990年)、『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』(1992年)など荒廃したニューヨークを舞台とした作品を得意としている。音楽はジョー・デリアが担当し、その後フェラーラと長期間にわたってコラボした。