天仙液
天仙液(てんせんえき)は、漢方生薬だけを配合、処方した抗がん漢方薬である。中医学(漢方医学)の理論を基として、西洋医学の医療技術を取り入れた「中西医統合医療」によって、1991年に王振国(現・振国中西医結合腫瘍病院院長)が香港の製薬会社との共同研究で開発した。その後、各国で研究試験、臨床試験が数多く実施され、エビデンス(科学的根拠)が検証され、医学誌に研究論文が発表されている。
経歴[編集]
天仙液は、王振国が「伝統医学の漢方でがんを治したい」と決意して、薬草、生薬の研究から始めて、中医学(漢方医学)を基とした漢方がん治療の研究によって、1983年に天仙液の前身となる「複方天仙膠嚢(ふくほうてんせんこうのう)」(製品名「天仙丸」)を開発。天津医薬科学研究所における臨床試験で「抗がん効果あり」と認められ、1985年に国家プロジェクトである「政府科学技研発展計画」の一項目に取り上げられ、中国各地の医療関係、大学病院で臨床試験が行われた。
1988年に天仙丸が中国国家衛生部(日本の厚生労働省に相当)で医薬品の抗がん剤(抗がん漢方薬)の認可を受ける。1991年に香港の製薬会社・中日飛達聯合有限公司との共同研究により、天仙丸を液体化した「中國1號天仙液」を開発。その後、改良、進化を重ね、現在は「天仙液」「天仙液S(スーパー)」の2種類となっている。
目的[編集]
天仙液は、がん治療を目的とした抗がん漢方薬である。初期、中期、末期、それぞれのがん治療をはじめ、抗がん剤、放射線治療との併用、副作用の軽減、がん転移、再発の予防などに用いられる。なかでも、末期がんと宣告され、もう治療法がないと見放されたケースで、漢方療法の一つとして選択されているようだ。
現在、多くの国で医薬品(漢方薬)、漢方サプリメントとして認可されているが、日本ではまだ、未承認薬である。ただし、厚生労働省のガイドラインによれば、海外の医薬品の場合、1回で2カ月分まで個人輸入で入手できるようになっているという。
成分[編集]
天仙液の成分となる薬草、生薬は、多くが中国東北部にある“薬草の宝庫”長白山に自生している薬草からつくられた生薬である。
長白山はかっては活火山で、火山爆発が繰り返され、火山灰が蓄積された土壌にはゲルマニウム、セレン、マンガンなど20種類以上の人間には欠かせない微量元素が含まれているという。
天仙液は、こうした薬草から抗がん作用のある生薬を中心に、20種類以上を配合、処方した複合漢方薬である。なお、天仙液に含まれている主な生薬をあげると、以下の通りである。
冬虫夏草(とうちゅうかそう)、黄耆(おうぎ)、珍珠(ちんじゅ)、甘草(かんぞう)、莪朮(がじゅつ)、霊芝(れいし)、天南星(てんなんしょう)、白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)、女貞子(にょていし)、山薬(さんやく)、猪苓(ちょれい)、人参(にんじん)、枸杞子(くこし)、白朮(びゃくじゅつ)、青黛(ちんたい)、半枝蓮(はんしれん) 。
作用[編集]
天仙液は、中医学(漢方医学)の理論をもとに研究開発された抗がん漢方薬である。中医学は経験医学、臨床医学として、3000年の歴史を有している伝統医学である。古典医学書にはがんに対するとらえ方が記載されており、「癌」という文字は病気を意味する「疒」(やまいだれ)の中に、古い字体で岩や固まりを意味する「嵒」が入っている。がんは岩のような固まりができる病気、つまり身体の内外に「腫瘍」ができる病気ととらえられていた。そして、がんに関する病因メカニズムや自覚症状として身体に生じてくる病気の特徴、治療法などが示されている。それらの多くの理論と方法は、現在でも中医学の臨床治療方法の基本となっている。
なお、中医学のがんに対するとらえ方の基礎となる理論と方法は、以下のようになっている。
行気理気(気の流れをスムーズにする)、活血化瘀(滞った血流を良くし、固まった古い血を溶かす)、軟堅散結(しこりを軟らかくして散らす)、清熱解毒(こもっている熱、炎症を抑える)、袪湿化痰(湿邪を取り去り、痰を取り除く)、袪腐生新(腐った組織を排泄させ、新しいものを作る)などの袪邪作用の理論をもとに、直接がんを攻めることを重視した考え方である。
がんに対して直接、かつ確実に反応する袪邪作用が働く一方で、健脾和胃(消化器系を守って機能を高める)、益肝固腎(肝腎機能を助ける、肝に栄養を与える)、補気養血(身体のエネルギーを補い、血を養って増やす)、調補陰陽(身体のバランスを調節する)など身体のもつ免疫力を高め、正気を養う作用も働かせる。
このような中医学の理論と方法をもとに、生薬を配合、処方して、がんに作用する漢方薬として研究開発されたのが、抗がん漢方薬の天仙液である。漢方薬の特性は、身体の局所、部分に作用する西洋医療と違い、身体全体に作用して、がんに対する免疫力を高め、人間本来が持っている自己治癒力を引き出し、QOL(生活の質)を保ちながら、がんを治療していくところだといわれている。
研究[編集]
天仙液は、中医学の理論をもととして、西洋医療のテクノロジーを取り入れた「中西医統合医療」によって研究開発されている。世界各国の医療機関、大学病院で薬理、薬効、毒性などに関する基礎研究、研究試験、臨床試験が数多く実施されている。
例えば、国立台湾大学医学院付属医院では、入院中の末期乳がん患者を対象とした臨床試験が行われるなど、エビデンス(科学的根拠)が検証されている。その研究結果をアメリカ、イギリス、オランダ、台湾、香港などの医学誌に研究論文として掲載されている。
参考文献[編集]
- 『がんを治す大辞典』:帯津良一編著(二見書房刊)
- 『がん治療入門』土屋繁裕・関根進共著(NTT出版刊)
※以下は王振国著
- 『がんを治す新漢方療法』(クリピュア刊)
- 『帯津良一・王振国討論 漢方がん治療』(K&Bバブリッシャーズ刊)
- 『新しいがん治療 もう一つの地平を見つめて』(K&Bバブリッシャーズ刊)
- 『がんとの闘いに克った!』(日本医療企画刊)
- 『がん戦争100人が勝利宣言』(メタモル出版社)
- 『がんに克つ天仙液の驚異』(かんき出版社)