佐藤昭夫
佐藤 昭夫(さとう あきお、1928年7月13日[1][2] - 2017年1月8日[3][4])は、労働法学者、弁護士。早稲田大学名誉教授。
経歴[編集]
札幌市生まれ。仙台陸軍幼年学校卒業、陸軍予科士官学校在学中に敗戦[5]。1951年早稲田大学第一法学部卒業。1953年早稲田大学助手。1956年早稲田大学大学院労働法専修博士課程修了。1959年早稲田大学講師[2]。1962年「ピケット権の研究」で法学博士(早稲田大学)[6]。同年早稲田大学助教授。1967年早稲田大学教授。1999年3月早稲田大学退職、名誉教授、4月弁護士登録(第二東京弁護士会)[2]。
人物[編集]
国鉄闘争[編集]
国鉄闘争に関わってきたことで知られる。国鉄採用差別事件最高裁訴訟参加申立人代理人[7]、鉄建公団訴訟弁護団長[8]、国労5・27臨大闘争弾圧裁判弁護団長[9]、国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会呼びかけ発起人代表[10][11]、同会事務局長を務めた[12][13]。2008年2月に国労5・27臨大闘争弾圧被告団(8被告)の7被告により弁護団全員(佐藤昭夫、浅野史生、一瀬敬一郎、大口昭彦、萱野一樹、河村健夫、小島好己、西村正治、葉山岳夫)が解任された。その背景には中核派の組織分裂によって、7被告と裁判事務局長および1被告が異なる政治的立場になったという事情があるとされる[14][15]。中核派は佐藤らに対し「4者4団体路線に転落した上、ついに「国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会」の公然たる分裂に踏み切った」などと批判している[16]。一方、中核派から分裂した革共同再建協議会は元裁判事務局長による佐藤の著書の書評や追悼文を機関紙に掲載し、中核派の裁判への介入を批判している[17][4]。
早稲田大学[編集]
1961年の早稲田大学教員組合の結成に参加し、その書記長を務めた[8]。
2004~2011年の早稲田大学企業年金裁判では原告団の中心となった。2004年4月に早大の企業年金受給者が年金減額は不当だとして早大を東京地裁に提訴したが、2011年3月に最高裁が上告を棄却し受給者側の敗訴が確定した[18]。
2013年3月に早大が非常勤講師の契約更新上限を5年、最大担当授業数を週4コマまでとする就業規則を制定。同年4月に佐藤と松村比奈子(首都圏大学非常勤講師組合委員長・憲法学者)が早大の鎌田薫総長と常任理事ら計18人を労働基準法第90条違反で東京地検に刑事告発した[19][20][21]。2015年11月に労働委員会で早大と首都圏大学非常勤講師組合が和解協定を結び、紛争は一応の終結をみた[21]。なおそれまで早大に非常勤講師の組合はなかったが、2013年9月に首都圏大学非常勤講師組合の早稲田ユニオン分会が結成され[20]、その顧問に就任した[22]。
その他[編集]
- 全国一般東京東部労働組合の石川源嗣は『「武力信仰」悪夢再現を憂える』(悠々社、2015年)の書評で「佐藤さんは、戒能通孝、野村平爾など労働者側に立つ労働法学者の系列で、私の前著でも『労働法学の方法』から引用させてもらったり、全金田中機械支部の大和田委員長追悼会に同席させてもらったりしている」と述べている[23]。
- 不戦兵士・市民の会の理事[8]。
- 三一書房争議の第1次争議(1998~2006年)で労働委員会での代理人を務めた[24]。
- 無防備地域宣言運動全国ネットワークの賛同者の1人[25]。
- 「実教出版教科書問題に関し、違法不当な東京都教育委員会を訴える会」(略称:都教委を訴える会)の共同代表。もう1人の共同代表は高嶋伸欣[26]。
著書[編集]
- 『ピケット権の研究』(勁草書房、1961年)
- 『労働法学の課題』(日本評論社、1967年)
- 『政治スト論――団体行動権の保障のために』(一粒社、1971年、改訂版1975年)
- 『文献選集日本国憲法 9 労働基本権』(編、三省堂、1977年)
- 『国家的不当労働行為論――国鉄民営化批判の法理』(早稲田大学出版部、1990年)
- 『労働法学の方法――歴史の認識と法の理解』(悠々社、1998年)
- 『国鉄闘争におけるILO勧告の経緯と問題点――「4党合意」を美化したILO勧告の罪』(国鉄民営化問題研究会、2006年)[2]
- 『早稲田大学企業年金裁判――「連絡会」運動とともに』(編著、悠々社、2010年)
- 『国家的不当労働行為論 Ⅱ 国鉄民営化による団結破壊との闘い』(悠々社、2012年)
- 『「武力信仰」悪夢再現を憂える――戦後労働法を学んだ陸軍将校生徒〈米寿の記〉』(編著、悠々社、2015年)
出典[編集]
- ↑ 日外アソシエーツ編『現代日本人名録 2002 2. かな~せ』日外アソシエーツ、2002年、1300頁
- ↑ a b c d 南労会闘争についての意見書(PDF)港合同(2012年2月27日)
- ↑ 生涯闘う学者を貫かれた佐藤昭夫先生 謹んでご冥福をお祈りします(PDF)港合同ニュース第267号(2017年2月10日)
- ↑ a b 米村泰輔「追悼 佐藤昭夫先生 団結権を大切にし、戦争を憎む」未来第217号(2017年2月16日発行)
- ↑ 「武力信仰」悪夢再現を憂える / 佐藤 昭夫【編】 紀伊國屋書店ウェブストア
- ↑ CiNii 博士論文 - ピケット権の研究
- ↑ 呼びかけ発起人5月30日現在 許さない会
- ↑ a b c 萩尾健太「『「武力信仰」悪夢再現を憂える』佐藤昭夫著(悠々社)を読んで──佐藤先生こそ「将たる」人物である(PDF)」支部ニュースNo.503、自由法曹団東京支部、2015年10月
- ↑ 弁護団声明 国労5・27裁判弁護団
- ↑ 日刊動労千葉No.6543 動労千葉(2007年11月8日)
- ↑ 闘う労組の全国ネットへ3労組共闘の新たな挑戦が始まった 職場から闘い巻き起こそう 11・4集会 日韓米が団結固く 週刊『前進』(2319号2面1)(2007/11/12)
- ↑ 無罪獲得!今こそ国労再生へ! 国鉄千葉動力車労働組合(2006年12月19日)
- ↑ “今こそ国鉄闘争の主役に” 国労5・27臨大弾圧 許さない会が全国集会(12月9日) 週刊『前進』(2324号1面2)(2007/12/17)
- ↑ 弁護団声明 Ⅰ 弁護団声明の趣旨について(PDF)国労5・27裁判弁護団(2008年7月14日増補)
- ↑ 被告団が見解を表明 旧弁護団の解任と弁論分離についての被告団の見解 週刊『前進』08頁(2345号2面2)(2008/06/02)
- ↑ 国労5・27臨大闘争弾圧粉砕しよう 佐藤昭夫弁護士らによる「許さない会」の分裂を弾劾する 国労5・27臨大闘争弾圧被告団 週刊『前進』06頁(2395号3面1)(2009/06/15)
- ↑ 米村泰輔「書評 佐藤昭夫著 国家的不当労働行為論Ⅱ―国鉄民営化による団結破壊との闘い」未来第109号(2012年7月17日発行)
- ↑ 高橋彦博「企業年金裁判の動向について」『社会志林』第59巻、2012年7月
- ↑ 3万人の講師が失職の恐れ 法改正で揺れる大学の危機 ダイヤモンド・オンライン(2013年8月1日)
- ↑ a b 田中圭太郎「早稲田大学で起こった「非常勤講師雇い止め紛争」その内幕(3/5)」現代ビジネス(2017年7月26日)
- ↑ a b 松村比奈子「今週の一言 大学非常勤講師問題と憲法」法学館憲法研究所(2017年7月28日)
- ↑ 日本語教育研究センターインストラクター就業規則の届出に関する過半数代表者選挙 立候補者所信表明と推薦一覧(PDF)首都圏大学非常勤講師組合早稲田ユニオン(2015年)
- ↑ 佐藤昭夫さんの新著から学ぶ(東部労組機関紙2015年6月号コラム<二言三言>) レイバーネット日本
- ↑ "佐藤先生がご逝去されました。…"三一書房労働組合のTwitter
- ↑ アピール賛同 無防備地域宣言運動全国ネットワーク
- ↑ 6/30「実教出版教科書裁判」、傍聴参加を!6/28 増田都子のホームページ