九条葱
九条葱(くじょうねぎ、九条ねぎ、九条ネギとも)は、日本の青ネギ(葉ネギ)の一種。京都府により「京の伝統野菜」に指定されている。京都市南区九条地区が主産地であったことからその名がついたが、現在では京都府各地で生産している[1]。
沿革[編集]
言い伝えによると、九条葱のルーツは伏見稲荷建立の時期に浪速より移植されたネギである[2]。『続日本後紀』には九条村にて水葱を栽培したと記されている[3]。『延喜式』には栽培法が記されている。京の都は北から南にゆるやかに傾斜しており、都の南部に位置する九条付近は野菜生産に適した有機物に富んだ土壌に恵まれていた[1]。また、比較的風の弱い京都盆地の気象条件は(風で倒されやすい)青ネギの栽培に適していた[3]。
弘法大師(空海)が大蛇に追いかけられたとき、ネギ畑に隠れて難を逃れたという逸話が残っている。そのため、東寺周辺の農家の人々は東寺の縁日(御影供)にあたる21日はネギ畑に入らないようになり、その日はネギを食べないという風習がある。それにちなんで東寺の五重塔の上には葱坊主がつけられたとも言われる[3]。
江戸時代には九条から上鳥羽あたりのネギが最高品質と評価され、京の野菜の横綱とみなされていた[3]。
ハウス栽培が導入されてからは、京都府全域で栽培されている。現在の主な産地は京都府内においては八幡市都々城(京都やましろ農業協同組合)、京都市淀・久世(京都中央農業協同組合)、南丹市八木、京丹後市久美浜(京都農業協同組合)など。ブランド野菜としての確立に加えて、昨今のラーメン人気の影響もあり、消費の拡大を受けて作付面積が増えてきており、2013年度の京都府内の作付面積は約200ヘクタールと、2008年度から27%増加している[4]。
特徴[編集]
九条葱には浅黄種(あさぎだね)と呼ばれる細ネギと、黒種(くろだね)と呼ばれる太ネギの二系統がある[5]。
浅黄種は淡緑色で細長く、根から葉の分岐点までが短く、分けつが多い。早生種で耐暑性があり、夏から初秋にかけて出荷される。黒種は葉身部が直径2センチ、長さが1メートル程度に成長し、葉色は濃緑色である。根から葉の分岐点までは長く、分けつはほとんどない。耐寒性があり、周年栽培できる。いわゆる九条葱として有名なのはこの黒種の方である[6]。
栽培と利用[編集]
本来は1年以上の期間をかけて露地で栽培される。秋に播種し、春に仮植する。夏にはいったん掘りあげて干しネギ(ネギ苗)とし、それを晩夏に定植する。秋から冬に収穫。近年では、周年を通じた需要に対応するためハウスを利用した移植や直播による栽培も増加している[1]。
やわらかく甘みのある葉はまっすぐに伸びる。冬には糖分がゼリー状となって葉身内部に蓄積し、さらに甘みを増す。香りが良いことから、鍋物や煮物、ぬた、ネギ焼きをはじめ、うどんやそうめん、ラーメンの薬味等によく利用される[1]。
脚注[編集]
- ↑ a b c d “九条ねぎ-1300年の歴史を持つやわらかく甘みのある青ネギ”. jeinou.com. 一般社団法人全国農業改良普及支援協会, 株式会社クボタ (2014年5月22日). 2021年7月3日確認。
- ↑ 大島國三郎(編輯) 『京都府園芸要鑑』 京都府農会、1909年、193頁。 。
- ↑ a b c d 竹田勝幸. “京野菜の原点である「九条ねぎ」”. shimo-higashi-kyoto.mypl.net. 株式会社ティ・プラス, 株式会社フューチャーリンクネットワーク. 2021年7月3日確認。
- ↑ “ラーメン人気で九条ねぎ生産増 京都・久御山”. kyoto-np.co.jp. 株式会社京都新聞社 (2014年10月1日). 2014年10月9日確認。
- ↑ “九条ねぎ”. city.kyoto.lg.jp. 京都市 (2019年11月6日). 2021年7月3日確認。
- ↑ 『都道府県別 地方野菜大全』 タキイ種苗株式会社出版部、農山漁村文化協会、2003年、2、196-196頁。ISBN 978-4-540-02156-5。