ヨーゼフ・シゲティ
ヨーゼフ・シゲティ(Joseph Szigeti、1892年9月2日 - 1973年9月5日)は、ハンガリーの音楽家、バイオリニストである。求道的な音楽家として知られる。
経歴[編集]
ハンガリーのブダペストに生まれる。幼少時はトランシルヴァニアで過ごす。父と叔父がプロの音楽家で、音楽のレッスンを施す。父はオーケストラの首席奏者であり、叔父はコントラバス奏者であった。シゲティは早い段階から才能を示した。やがてブダペストに移り、王立音楽院でイェネ・フーバイに師事し、本格的な勉強を開始した。10歳のとき初めて公衆の前で演奏した。 1904年にベルリンのヨーゼフ・ヨアヒムを訪問したとき、レッスンの申し出があったが、シゲティはフーバイのもとに戻ることを選択した[1]。
15歳の時、ロンドンでデビューし、その後の6年間はイギリスを 中心とした演奏活動を行い、有名となった。
重要な出会いはブゾーニであった。ブゾーニはシゲティのメンターとなった。
晩年は、1960年からスイスに居を構え、フランコ・グッリ、海野義雄、久保陽子、潮田益子、前橋汀子、藤川真弓、佐藤陽子、宗倫匡、和波孝禧などを指導した。
1973年2月20日スイス・ルツェルンにて 永眠した。享年80歳。
人物[編集]
美音や聴衆に好まれる華やかな技法を取り入れず、音楽の精神性を重視した演奏スタイルを貫いた。クライスラー、ハイフェッツのような華やかさはないものの、音の汚れも辞さず、うわ付いたところは一切ない。傑出したヴァイオリニストの1人と尊敬されている。
一定のテクニックを備える演奏家に対しては、曲の解釈を深めるためのヒントを与えるアドバイスを行っていた。前橋によれば、シゲティからは演奏上の技術的な注意点などの話はまったくなく、作曲家がどんな気持ちで曲を作ったかといった話が中心であったという。
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタに関するシゲティの研究書は、ヴァイオリニストにとって大きな基準となっている[2]。
楽譜を掲載しその下に練習の方法、演奏上の注意などを書き込んだノートは実践的な内容である[3]。
カール・フレッシュは「勉強不足であり、時代遅れのボウイングだ。デタシェ、スタカート、スピカートの部分では、弓がヴァイオリンの駒に近づきすぎる。時々フォルテの部分で軋んだ音が出る」と評す。シゲティが現代のコンクールを受けたら、華やかさがないため、予選落ちは間違いがないとまで言われる。
参考文献・注釈[編集]
- ↑ Joseph Szigeti Biography by Rovi Staf
- ↑ ヨーゼフ シゲティ、谷口 幸男訳(1998)『ベートーヴェンのヴァイオリン作品』音楽之友社
- ↑ ヨーゼフ・シゲティ、山口秀雄訳(1967)『ヴァイオリニストの覚え書き』音楽之友社