ヨミウリ・オンライン事件
ヨミウリ・オンライン事件とは、ニュース記事の見出しのネット配信を巡る裁判である。著作性は認められなくても不法行為が成立するという判例を残した裁判である。
事件概要[編集]
平成14年当時、読売新聞が運営するヨミウリ・オンライン[注 1]はYahooニュースに同一の見出しを掲載し、その見出しをクリックするとヨミウリオンラインの同記事にジャンプするようになっていた。読売とヤフーの間には使用許諾契約が結ばれており、その合意の下での利用であった。一方、第三者であるAが運営するサービス上において、ヨミウリ・オンラインの見出しと同一の語句を利用し、ティッカー方式[注 2]で配信していた。この見出しをクリックするとヨミウリ・オンラインの記事にジャンプするものの、見出しの間には広告が表示されるようになっており、その枠は有料のポイントを購入することで表示されるようになっていた[注 3]。また、個人のWebサイトにHTMLタグをコピペするだけで簡単に設置できるとされており、アクセス増加をみこめるとも宣伝していた。平成14年1月にこのサービスを実装し、平成16年7月までに160万円を超える収入があったとされている。
争点[編集]
主に以下の三点が争点となった
結果[編集]
上記1・2については認められず、3の不法行為が成立するとされた。
大前提として、ニュース記事の見出しというのは制約のある中で事実表現しなければならないため、基本的に創意性を認める余地が少ないことから基本的には著作性は無いと判断された。しかし、だからと言って創意性が無いと判断するものではなく、具体的に検討したうえで創作性を判断するべきである。そのうえでこの事件で提示された見出しにおける創意性は認められなかった。また、複製権については必要な主張や証拠を提出しておらず、主張自体が失当であると判断されている。
不正競争防止法違反においては、違反が成立する商品の形態の模倣が成立しないことから該当しない。
不法行為については、まずヨミウリ・オンライン自体が広告収入を得る代わりに記事の閲覧が無料であるものである。また、これらの見出しは実際の取材活動や読売新聞社の業務の成果として作成されており、記事の見出しについても創意性は認められないものの相応の工夫や苦労は認められるとしている。また、読売新聞社がヤフーに対して有料で記事や見出しを提供している(見出しのみを有料で提供していることもある)。一方でAは営利目的でヨミウリ・オンラインの見出しを無断で利用し、しかも記事が公開されてから間もないという情報の鮮度が高い時期に見出しのデッドコピーを自社のサービスで配信していた。また、Aのサービスを設置したWebサイトは2万サイトに及ぶとされ、ヨミウリ・オンラインの見出しを有料で提供している読売新聞社の業務と競合していることが否定できない。そのため、Aのサービス自体が読売新聞社の利益を違法に侵害したものとみなすことができ、不法行為を構成するものであるとした。
結論とし、不法行為による損害賠償として23万7741円のみを認定し、著作権を含むそれ以外の訴えが棄却された。なお、訴訟費用はAが5/10000を、残りの費用をすべて読売新聞の負担とするべきとされた[注 4]。
余談[編集]
この事件後も新聞社によっては見出しについて著作権を有すると判断している[1]ほか、日本新聞協会では見出しについても著作権侵害の可能性があると声明の中で表明している。[2]。
なお、当の読売新聞ではリンクの方法により権利侵害の可能性があるとしている[3]。