ニース (ロードス島戦記)

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ニースは、水野良の小説『ロードス島戦記』『ロードス島伝説』『新ロードス島戦記』の登場人物で、架空の人物。作中に「ニース」は二人登場し、血縁はないが祖母と孫娘の関係にある。区別のために祖母の方を「大ニース」や「偉大なるニース」、孫娘の方を「小ニース」や「小さなニース」と呼ぶ。

大ニース[編集]

ニース(? - 新王国暦524年)は大地母神マーファの司祭であり、「マーファの愛娘」の異名をもつ。「偉大なるニース」と謳われた六英雄の一人。後にロードス島におけるマーファ教団の最高司祭となる。

経歴(大ニース)[編集]

17歳で高司祭となったほどの強い信仰心と神聖魔法の実力の持ち主。地震で崩壊した神殿の修理と被災者を救済するため、白竜山脈で古代王国の秘宝の守護者となっていた氷竜ブラムドの呪いを解いた礼として財宝を譲り受け、「竜を手懐ける者(ドラゴンテイマー)」と称される。

魔神戦争では、魔神に滅ぼされた「石の王国」の仇討ちのためにモス公国へ進撃しようとした「鉄の王国」のドワーフ戦士団を説得し抑えた。もし進撃を止められずにいたら、数千のドワーフ戦士を黙って通す国は無いため、経路上にある国と戦争になっていた。そしてドワーフ族に代わって実態を調査することを約束し、単身モスに向かう。

モスでは諸国間の対立や戦いを調停し、魔神に対するモス連合軍の樹立に尽力する。その後はナシェルの離宮にて他の六英雄やフラウス達と行動を共にした。

魔神王との一度目の戦いで、自身の体にマーファ神を降臨させる「降臨(コール・ゴッド)」の奇跡を使い、魔神王を退ける。魔神との最終決戦となった「もっとも深き迷宮」では仲間達と共に最深部に辿り着き、再び魔神王と戦いこれを討ち果たす。無事に生還したことで六英雄と呼ばれるようになる。

魔神戦争終結後はターバのマーファ神殿で最高司祭となり、赤子であったレイリアを引き取って娘として育てた。レイリアが遥かな昔「亡者の女王」呼ばれた破壊神カーディスの教団の最高司祭・ナニールの転生体であることを知りながら、魂の浄化や封印ではなく、ただ慈愛をもってレイリアの魂を導き、ついにナニールの魂が発現することを防いだ(後にその魂はレイリアの娘として「生まれ変わる」ことになる)。

英雄戦争時、「鉄の王国」のドワーフであるギムの治療のため神殿を留守にしていたところを賊に襲撃され、レイリアが失踪する。最高司祭として神殿を離れることが出来ない彼女は、ギムに捜索を託すこととなる。後、レイリアはスレインに連れられて帰還し、さらに後にスレインと結婚。生まれた娘に母である彼女の名「ニース」がつけられる。

レイリア失踪の14年後、邪神戦争の一年前に「邪悪な女神の復活の兆しを告げる神託」を受けるが、すべてを娘婿のスレインに託し、神託の十日後に逝去した。その際、ウォートフレーベ、魔神戦争で仮面の魔法戦士として共に戦ったカーラ(肉体はウッド・チャック)が友人として彼女の元を訪れている。

人物(大ニース)[編集]

敬虔なマーファの信者で、深い信仰心と慈愛、それを体言する強い意志を持つ。物言いは穏やかながらも、言うべきことははっきり言う。自身の肉体に神そのものを宿す「降臨」の奇跡を使用し、その上で生き延びた数少ない人物である(「降臨」できるだけでも相当の技量と信仰心が必要とされる上、神を受け入れるに器が足りていなければ、「降臨」と引き換えに肉体と魂は砕け散る)。

その人柄ゆえに多くの者を惹きつけ、氷竜ブラムドとも友として接する。ブラムドがアシュラムに殺されたと知ったとき、彼に対して強い怒りを示した。その後、ブラムドを蘇生させたと言われている。おそらくカーラの素性も知っていたと思われるが、そのうえでカーラとも友として接していた。ウォートと惹かれあっていた描写もあったが、結局最後まで結ばれることはなく二人とも生涯独身である。

天寿を全うした人間としては短命で、前述の「降臨」によって肉体・精神に大きな負担がかかったことがその原因だと考えられている。

登場作品(大ニース)[編集]

  • 小説
  • テーブルトークRPG
    • 『ロードス島RPG エキスパートルール』 - ロードス島RPG対応の能力値を掲載
    • ソード・ワールドRPG ロードス島ワールドガイド』 - ソード・ワールドRPG対応の能力値を掲載
  • コミック
    • 『ロードス島戦記 灰色の魔女』全3巻 作画/越智善彦(角川コミックスエース)
    • 『ロードス島戦記 -英雄騎士伝-』全6巻 漫画/夏元雅人(角川コミックスエース)

小ニース[編集]

ニース(新王国暦512年 - 602年)は大地母神マーファの司祭。祖母ニースとの区別のため「小ニース」「小さなニース」と呼ばれる。後にマーモ王国の王妃となった。

経歴(小ニース)[編集]

スレインとレイリアの娘として生まれ、祖母と同じ名を与えられる。レイリアと大ニースに血の繋がりはないため、小ニースと大ニースにも血縁はない。幼少の頃はザクソンで両親とともに暮らす。わずか6歳にして治癒の奇跡を使い、アルド・ノーバや人々からは聖女と称えられるようになった。

13歳のときに邪神戦争が勃発。自分が破壊神カーディス降臨の「扉」であり、邪神降臨を目論むバグナードに狙われていることを知ったニースは、隠れていてもバグナードの手から逃れることはできないと判断し、単身旅に出る。途中でスパークらと出会い、旅を共にするも、抵抗むなしくバグナードに捕らわれてしまう。バグナードによって破壊神カーディスを降臨させられ、彼が不死の王(ノーライフキング)となる契約を交わすために利用される。また、その後、邪神の復活による光と闇の共倒れを謀るカーラにより、再びカーディスを降臨させられそうになるが、それに対抗するために大地母神マーファをもその身に降臨させ、邪神の復活を妨げる。2柱の神を降臨させてなお生き延びたのは、後にも先にも小ニースただ一人であると思われる。

しかし、カーディスを降臨させたことで彼女は自分の魂の真実、自分がカーディス教団の最高司祭であり、「亡者の女王」と呼ばれたナニールの生まれ変わりであることを知る。かつて封印されていたナニールが事故で解放された際、偶然通りかかった冒険者によって滅ぼされたが、ナニールの魂は近隣で出産間近だった赤子の中に転生した。赤子は本来の魂とは別にナニールの転生した魂を宿すことになり、苦心した冒険者によって大ニースに預けられ、大ニースの娘、すなわちレイリアとして育てられることになった。マーファの加護によってナニールの魂が抑えられたため、本来の魂が消滅することなくレイリアは成長したが、レイリアが娘である小ニースを産んだ時、ナニールの魂はレイリアから小ニースに受け継がれ、小ニースは元から別の魂を持たないナニールの生まれ変わりとして生まれたのである。

邪神戦争が終結した後は、マーモ公国におけるマーファ神殿の司祭となり、時には聖女として、時には一人の少女としてマーモ公王スパークに寄り添う。後に彼女の運命を知り、その上で受け入れたスパークと結婚し、マーモ公妃となる。

新生マーモ帝国との戦い、続くカーディス教団との戦いにおいて、かつてナニールであったころに「永遠の愛」を誓い合った高司祭にして転生者フィオニスと再会する。ナニールの記憶を持つ彼女は苦悩の末、転生を繰り返す亡者の女王ナニールではなく、「ニース」としてスパークの傍らでただ一度の生を全うする事を選び、自ら破壊神を「降臨」させることで「終末の門」を破壊した。そのとき、自分の元に駆けつけたスパークと共に異空間に飛ばされ行方不明となるが、一年の時を経てスレインの魔法によって送還され、以降は「マーモ王国」王妃として国王スパークを支えた。

人物(小ニース)[編集]

大ニース以上に幼いころから高位の奇跡を願うことができ、小ニースこそが大地母神の生まれ変わりだと信じる者もいるほどである。聖女として称える者も多い。彼女自身、そんな周囲の期待に応えるため「聖女」であることを自らに課していた。芯の強い性格だが辛い事などを己の内に溜め込む癖があり、両親共に多忙な中、彼女が神殿内で最も心を許せたのはアルド・ノーバだった。

慈愛の神マーファの敬虔な信者であるが、街で自分に攻撃的な態度を見せた若者たちを神聖魔法で撃退したり、スパークを侮辱した騎士を「斬り捨ててしまえばいい」と言うなど残忍であったり、時の果ての空間にあっては自分からスパークを肉体的に求めたりと、かなり奔放な側面を併せ持つ。これらの性格は「亡者の女王」ナニールの魂(生まれ)とマーファへの信仰(育ち)が合わさった結果、形成されたものと思われる。どちらが本質というものではなく、両方があってのニースという人間である。

自らの肉体に神を3度も降臨させており、カーラの手でカーディスを降臨させられかけた未遂も含めれば4度である。これほどの多数にわたって同一の器に神を降臨させたこと自体が他に類を見ないが、その上で魂が砕け散っていないというのは聖職者の常識を超えており、聖女と崇める者が多いのと同時に、「亡者の女王」であることと相まって恐れられることも多かった。また、大ニースはマーファを降臨させた事で寿命を縮めたと言われていたが、小ニースは90歳没という長寿であった[1]

両親の友人であり、生まれたときから彼女のことを知っているパーンディードリットにとってはいつまでも「小さなニース」であり、2人からも自分の子供のように可愛がられている。スパークにとっては尊敬すべき聖女であると同時に、守るべき一人の少女であり、生涯の伴侶である。

登場作品(小ニース)[編集]

出典[編集]

  1. 「ロードス島戦記 誓約の宝冠 1」p.74。