ナシェル

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ナシェルは、水野良の小説『ロードス島伝説』の主人公で、架空の人物。ロードス全土を恐怖と混乱に陥れた魔神戦争にて『百の勇者』や、後に『六英雄』と称えられる者達を纏め「ロードスの統一王」としての道を歩みながらも、歴史の闇に消え、後の世に語り継がれることのない英雄である。

背景[編集]

モスの小国「スカード」の王、ブルークの長男として生まれる。母はハイランド王マイセンの妹エリザ。異母妹はリィーナ。

スカードは弱小国であり、事実上隣接するヴェノンの属国でありながら、ドワーフが好む麦酒(エール)の名産地であったため、南に隣接するドワーフ国『石の王国』との交易により経済的には繁栄していた。また、石の王国と「エールの誓い」と呼ばれる同盟関係を結んでおり、それによってヴェノンからの独立を守っていた。

ブルークはその経済力を背景にウォートを宮廷魔術師として、ベルド傭兵として雇ったが、実質はロードス統一王となる素質をもった息子の教育係としての雇用だった。

人物[編集]

文武に優れ知略に富み、強い意志と勇気、そして深い優しさを併せ持つ傑物。少々潔癖な一面もあるが、必要とあらば汚れを身にまとうことを恐れない気概と柔軟さを持つ。最強の戦士を自負するベルド(後の暗黒皇帝)が、「五年後には勝てないかもしれない」と考えるほどの可能性を感じさせていた。また、ウォートは長きに渡りロードスを覆う戦乱を終結に導く「統一王」足り得ると期待を寄せていた。

当初は若さゆえに、苦悩や未熟さを露呈する場面もあったが、度重なる戦いと激動する情勢、そして彼を支える仲間たちとの触れ合いによってその才覚を開花させ、多くの英雄たちの信頼を一身に集めてゆく。

魔神との戦いの中で、「光(ファーン)と闇(ベルド)を従え、天(フラウス)と地(ニース)の祝福を受け、文武(ウォートとフレーベ)に支えられ」、ロードス島初となる統一王への道を着実に登り始めていた。長くロードスを見つめ続けたカーラもそれを認めている。本人は魔神を倒すことと人々の平和以外に関心はなかったが、ロードスの情勢が彼を英雄王へ押し上げるだろうと信じられていた。

しかし、結果的にはそれらの並外れた才覚が父王ブルークを「魔神の開放」という凶行に走らせ、スカード王家の滅亡、ひいてはナシェル自身の破滅へと繋がってしまう。

戦いの中でハイランド公女・ラフィニアを妻として娶り、間に子供をもうけている。ナシェル自身は後の歴史の表舞台に姿を現すことはなかったが、邪神戦争後にヴァリス王国からマーモ公国へ招聘された薬草師ラーフェンがナシェルの子孫であることが暗示されている。

経歴[編集]

情勢の推移は魔神戦争を参照。

亡国の王子[編集]

国王ブルークによってベルドとウォートが幽閉され、ブルーク自身も失踪するという非常事態の中、突如襲来した魔神によってドワーフ族の『石の王国』が滅ぼされてしまう。辛くも『鉄の王』フレーベだけは助けたものの、魔神とヴェノンの脅威に挟まれた小国スカードは石の王国なしでは国家の存続をできないと判断したナシェルは、自らヴェノンの傘下となった。

立場上、ヴェノンにとっては都合の悪い人物として暗殺される恐れがあったので、薬草師のタトゥスを伴ってフレーベを回復させるとともに身を隠していた。回復後、仲間の仇を討とうと死に急ぐフレーベを制し、共に生きようと改めて『エールの誓い』を交わすことで彼を説き伏せる。

ヴェノンの一部となったことでモスに定められた『竜の盟約』を発動し、魔神との最初の大規模な戦闘になったスカード城戦に密かに参戦する。その戦いの中、魔神を率いているのがブルーク王だと知れると、彼は密かに城を離れた。

天空の騎士[編集]

もはやいつ誰に殺されてもおかしくない立場となってしまったナシェルは、血縁を頼って、伯父マイセンの治めるハイランドに保護される。自分の存在を他人に認めさせるために竜騎士となることを決意し(モスでは竜騎士は最大限の敬意を受ける立場にある)、フレーベと共に山に篭る。

過酷な日々の果てに風竜の心をつかみ、ワールウィンドの名を与えることで竜騎士となる。以降は形を成しつつあった『百の勇者』とは別に魔神と戦い、それまでの汚名を払拭し「背徳の父王に立ち向かう正義の王子」としての名声を轟かせた。父ブルークの真の狙いは自分がロードスを統一した後に息子に討たれ、息子に「非道の父を討った英雄王」という栄誉を与える為でもあったため、奇しくも父の意図通りの行動を取っていたことになる。

栄光の勇者[編集]

それまでは単身で戦ってきたが、マイセンの娘ラフィニアと恋仲になり、ハイランド公爵として領地を与えられ、再び守るべきものを持つ立場となった。一方でフレーベとニースを伴ってスカードの現状を調査し、情報戦においても大きく貢献。

ヴァリスとモスの争いのとばっちりを受ける形で捕虜にされていたファーンを、身元を保証することで解放。これにより、ナシェルの館に名もなき魔法戦士を除く、後に「六英雄」と呼ばれる者たちとフラウスが集い、魔神討伐の決意をあらたにする。

ロードス各地から集結した『百の勇者』たちを纏めあげる指揮官として任命され、ベルドやファーンの協力を得て、大役を成功させてゆく。

伝説の英雄[編集]

ナシェルの指揮のもと、勇者隊は魔神を駆逐してゆく。かつてブルーク王の魔神解放により閉ざされたウォートの野望である『ナシェルによるロードス統一』と、『賢者としてその隣に立つ自分』が現実味をおびてくるようになった。しかし、それを憂いた名もなき魔法戦士によって魔神解放の真実が白日のもとに晒され、ナシェルは失脚してしまう。その際カーラに恨み言を言うことなく、真実を解き明かしたことに感謝し、限られた者にだけ真実を伝え、自らは「魔神解放によるロードス征服」を企んだ魔神の王としての汚名を被ることで混乱する勇者たちが再び団結し、戦うための原動力とした。

自分の最後の役割として父ブルークの首をとるため『面会』を申し込む。最も親しい英雄たちに別れの言葉を告げて単身最後の戦いに挑むが力及ばず、魔神王の『魂砕き』によって斬られ、命を落とす。肉体は死に至ったが、竜であるワールウィンドの持つ力(夢で見たものを具現化する魔法)によってナシェルは人知れずいつとも知れぬ『夢』として復活する時を待つことになり、ナシェルの名は歴史の闇に消えた。

その後[編集]

ナシェルは最後の戦いに赴く前に、一度だけ契りをかわし、ラフィニアとの間に子をもうけていた。ラフィニアは魔神戦争の後、薬草師タトゥスの世話を受けながらファーンの領地で暮らし、子育てをしながらナシェルを待ち続けていた。そして復活したナシェルは地位も名誉も持たない一人の人間としてラフィニアの待つもとへと帰っていった。

竜の夢となっても歳はとるようで、英雄戦争でのベルドとファーンの一騎討ちの場に、老いた彼が姿を現していた。彼が『生きて』いれば避けられた戦いであり、これを見届けることが自分の義務と考えていたことによる。

TRPGのキャラクターとしてのナシェル[編集]

ソードワールドRPGのロードス島ワールドガイドに掲載されたキャラクターデータでは、超英雄ポイントを1点持っている。これはデザイナーの清松みゆきによると、「これから、いよいよ超英雄への階段を上り始めるはずだったのにね〜」との意図である[1]

脚注[編集]

  1. グループSNE. “今月のクローズアップ 98年12月 ロードス島ワールドガイド”. 1999年10月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月3日確認。

関連項目[編集]