チャイドル
チャイドルは、小・中学生の女性アイドルを指す言葉である[1]。チャイルド・アイドルの略(和製英語)[2]。定義について、『大辞泉』第二版(2012年)は「10代前半(=10歳から14歳)の女性アイドル」とする[3]。なお、チャイニーズ・アイドルの略(和製英語)で中国系アイドルのことをこう呼ぶとする文献もある[4]が、初版立項者はこのような用法を知らない。『広辞苑』第七版(2018年)は見出し語として採録していない。
概要[編集]
子供向けのファッションモデルから人気に火が付いたのが1990年代後半のチャイドルブームのきっかけで、彼女たちと同年代の少女たちの間で人気を博した[5]。もちろん、大きいお友達の中にも何かに目覚めてしまった者は多い。男性アイドルもチャイドルに含まれるという用例もわずかながら存在する[6]。
なお、野村佑香によるとチャイドルと子役はイコールではない。本来は子供向けのファッション雑誌などで活動する非常に若いファッションモデルをチャイドルと呼ぶのであり、チャイドルブームと『木曜の怪談』の放送時期(1995年10月19日 - 1997年9月25日)が重なったことで混同されてしまったのだという(前田愛はファッションモデルではないのでチャイドルのイベントには登場しなかった)[7]。
沿革[編集]
1994年に放送開始した『家なき子』などりより安達祐実がブレイクすると、各事務所は「子供も商売になる」と食指を動かし始めた(北川昌弘の説)[8]。1996年3月に発売された『SPA!』がチャイドルと言う単語の文献初出で[9]、これは写真集『Namaiki』を売るために中森明夫によって作られた造語である[10]。この年早くも『キッズ デ・ビュー』誌が創刊している(勁文社。1999年には公称15万部に達する)[11]。
「毎索」でヒットした最古の記事は1996年4月11日[12] 、「朝日新聞クロスサーチ」では1997年1月22日の日付である。1997年には「97年のヒット商品番付」に「チャイドル」「ねるじぇら」がランクインした[13]。この年、久田恵はチャイドルについて「かつては清純の象徴であったJC・JKに援助交際などにより汚いイメージがついてしまったので代用としてJSを登場させた」と分析している。また、子供が大人の女のふりをしているアンバランスから滲み出るエロスを売ろうとしているのは気持ち悪いとも述べている[14]。
1998年2月の報道では知らないと恥ずかしい言葉という扱いになっていた。『朝日新聞』の記事はチャイドルの例として野村佑香・前田愛・前田亜季・大村彩子・栗山千明・吉野紗香・SPEEDを挙げている[5]。1999年3月の『調査月報』誌に「いまチャイドル人気が大沸騰」という記述が見られるが[15]、この年にはチャイドルブームのピークは過ぎていたのではなかろうか。同年1月の『宣伝会議』誌が水谷妃里を「最後のチャイドル」と呼んでいる[16]。新たにチャイドル路線でデビューする少女も減ってきたのかもしれない。「国立国会図書館デジタルコレクション」(雑誌・書籍の全文検索)でヒットした最新の文献は2000年12月の『週刊宝石』である。『ブースカ! ブースカ!!』に出演した斉藤麻衣を「ブレイクが予想されるチャイドル」としている[17]。
調査方法・調査結果[編集]
公共図書館で利用可能なデータベースで全文検索を行い、明らかにチャイドル無関係と思われるもの・チャイドルという単語がリアルタイムの事象ではない文脈で使用されている物を除外。
- 毎索 - 1996年4月11日から1999年3月9日にかけて記事がヒット
- 朝日新聞クロスサーチ - 1997年1月22日から1999年1月1日にかけて記事がヒット
- 国立国会図書館デジタルコレクション
- 1996年 - 8件
- 1997年 - 88件
- 1998年 - 62件
- 1999年 - 45件
- 2000年 - 14件
そしてジュニアアイドルへ[編集]
チャイドルについて調べたのと同じ方法でジュニアアイドルという単語を全文検索。
- 国立国会図書館デジタルコレクション(ジュニアアイドルが出てくるような雑誌は収蔵してないのかも)
- 1998年 - 1件
- 1999年 - 1件
- 毎索 - 2002年9月17日から2012年4月2日にかけて記事がヒット
- 朝日新聞クロスサーチ - 2007年9月4日から2023年10月30日にかけて記事がヒット
1999年以前にも用例はあるが、この時期はまだチャイドルという言葉が一般的だった。2002年9月の報道ではジュニアアイドルと言う単語について特に新語であると断っていない[18]。どうやら2001年が謎の空白期間、2002年以降がジュニアアイドルの時代のようだ。まさに独自研究
出典[編集]
- ↑ “[いまどき語]チャイドル”. 毎日新聞: p. 27. (1996年4月11日)
- ↑ “[時事流行語] チャイドル”. 毎日新聞: p. 12. (1996年4月26日)
- ↑ 『大辞泉【第二版】下巻せ~ん』 小学館、2012年11月7日、第二版第一刷、2332頁。ISBN 978-4-09-501213-1。
- ↑ 『現代用語の基礎知識 カタカタ・外来語/略語辞典 第4版』 堀内克明(監修・執筆), 大森良子(執筆)、自由国民社、2011年3月3日、第4版第1刷、385頁。ISBN 978-4-426-11204-2。
- ↑ a b 森川 1998, p. 4.
- ↑ 池田多恵子「ちぇんじTHEアイドル」、『小学四年生』第77巻第11号、小学館、1999年、 31頁、 。
- ↑ “チャイドルとして一世を風靡、野村佑香が振り返る「私がブレイクした時代」(page=1)”. 週刊女性PRIME (2019年9月6日). 2024年7月2日確認。
- ↑ 「9歳女児Tバック写真集も… 娘を「裸」にして稼ぐ仰天親たち」、『サンデー毎日』第86巻第17号、毎日新聞出版、2007年4月22日、 30頁。
- ↑ “チャイドル年表’94―’97”. netnavi.nikkeibp.co.jp. 株式会社日経BP. 1998年12月3日確認。
- ↑ 「ニュースな女たち287 新少女」、『SPA!』第45巻第13号、扶桑社、1996年4月3日。
- ↑ 三沢敬; 大野さえ子, 菅野俊秀, 阿久津篤史 (1999年1月1日). “ステージ 世界一の娘と思い出求め”. 朝日新聞
- ↑ “[いまどき語] チャイドル”. 毎日新聞: p. 27. (1996年4月11日)
- ↑ “子供向け・小粒が売れました 97年のヒット商品番付”. 朝日新聞: p. 2
- ↑ 久田恵 (1997年3月11日). “「大人のふり」少女の不気味”. 朝日新聞: p. 8
- ↑ 「新語」、『調査月報』第189号、群馬経済研究所、1999年、 30頁、 、 。
- ↑ 「有望美人 任天堂・水谷妃里」、『宣伝会議』第590号、宣伝会議、1999年、 141頁、 。
- ↑ 八木隆一「ブースカのヒロインは単身赴任中」、『週刊宝石』第20巻第4号、光文社、2000年、 22頁、 。
- ↑ 大嶺こず恵「キティちゃんを超えた少女ブランド」、『週刊エコノミスト』第80巻第39号、毎日新聞出版、2002年9月17日、 40-41頁、 。
参考文献[編集]
- 森川敬子 (1998年2月22日). “チャイドル 十代前半の美少女、TV・映画で人気”. 朝日新聞: p. 4