キャリアパスポート

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

キャリアパスポートとは、小中高校に在籍する児童生徒が、生活の振り返りや目標、またキャリア教育(社会科見学職業体験)の成果を記録する冊子。新たな学習指導要領でキャリア教育が強化されたことに伴い、各地の学校に対して、2020年度より文部科学省が導入を指示している。

このパスポートの特徴としては、小学校入学から高校卒業までの12年間、継続して使用されることが挙げられる。生徒が転校・進学した場合でも、(多くの場合生徒を通して)引き継がれる。

なお、学校側が作成する調査書と異なり、生徒本人が作成する文書であることから、パスポートを入試や就職試験等に活用することは適切ではないとされる。[1]

導入の背景[編集]

20世紀後半以降、急速なグローバリゼーション情報化に伴い、日本の労働環境は大きく変化した。「いい学校に入れば、自然といい会社に就職でき、いい人生を送れる」といった従来の図式が崩壊し、社会人となる上で、若者たちは学力以外にも様々な能力を求められるようになった。変化にうまく適応できた若者もいたが、コミュニケーション能力や主体性に欠けてニートとなる者が増加し、社会問題になった。また、核家族化などの影響で、子供たちは人生の手本とするような大人を見つけづらくなった。手本のような大人がいなければ、将来のキャリアを具体的に想像することが難しくなってしまう。

世間は学校教育を通じて、生徒にコミュニケーション能力をはじめとした「生きる力」を身につけさせ、また働くことに関して具体的なイメージを持たせることを求めるようになった。文部科学省は、従来から行われてきた社会科見学や職業体験といったキャリア教育を拡充し、この流れに応えることとした。拡充の一環として、キャリアパスポートなるものを新たに導入することとした。

パスポートの導入により、平時の学習や、これまで「感想文」や「ワークシート」などとして散逸していたキャリア教育の成果が一元的に保管でき、必要なときに見返せるようになると期待されている。

概要[編集]

文部科学省が、パスポートの仕様例を紹介している。以下はその一部抜粋。

  • (1) 児童生徒自らが記録し,学期,学年,入学から卒業までの学習を見通し,振り返るとともに,将来への展望を図ることができるものとする
  • (2) 学校生活全体及び家庭,地域における学びを含む内容とする
  • (3) 学年,校種を越えて持ち上がることができるものとする
    • 小学校入学から高等学校卒業までの記録を蓄積する前提の内容とすること
    • 各シートはA4判(両面使用可)に統一し,各学年での蓄積は数ページ(5枚以内)とすること
  • (4)大人(家族や教師,地域住民等)が対話的に関わることができるものとすること
  • (8) 通常の学級に在籍する発達障害を含む障害のある児童生徒については,児童生徒の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等に応じて指導すること。また,障害のある児童生徒の将来の進路については,幅の広い選択の可能性があることから,指導者が障害者雇用を含めた障害のある人の就労について理解するとともに,必要に応じて,労働部局や福祉部局と連携して取り組むこと[2]

なお、以前から学校独自に、学校行事や学期・学年を節目として継続的に目標を立てたり振り返ったりする取り組みがある場合、パスポートを新たに作成する必要はないとされる。[3]

導入のメリット[編集]

  • 学校で得られた様々な経験を、体系的に見返すことができる。パスポート自体が入試や就職試験等に活用される可能性は低いものの、推薦入試や就職の面接などに際して自身の経歴を見返すとき、非常に役立つと考えられる。
  • 記入方法などの自由度が高く、各学校が独自に行っている取り組みに合わせて柔軟に対応できる。[4]

導入のデメリット[編集]

  • パスポートに多くの個人情報が含まれているため、紛失の際のリスクが高い。
  • 教員の負担を増加させる。特に、以前振り返り活動を行っていなかった教員には、影響が大きい。[5]
  • 文部科学省の資料を見る限りは、キャリア・パスポートは紙媒体で保管することを基本としているようである。IT技術がこれほど発達した現代において、教員に数十ページにもわたる紙の書類を何冊も保管させるのは、さすがに時代錯誤ではないか。
  • 小中高でパスポートを引き継ぐこととされているが、実際には私立校を中心にキャリア・パスポートを一際活用しない学校が存在する。例えば、初版編集者の高校進学時、公立高校に進んだ友人が入学直後にキャリア・パスポートの持参を求められたのに対し、他の友人が進学した私立高校の教師は、このパスポートの存在そのものを認知していなかった。最も、初版編集者はキャリア・パスポートが実装されて3年目の世代であるため、以降の世代ではパスポートが普及し、状況が変わる可能性があることを付け加えておく。
  • 肝心の生徒からの関心が薄い。例えば、Googleでキャリア・パスポートを検索しようとすると、サジェスト上位に「キャリアパスポート なくした」と表示される。多くの生徒にとって、気づいたら紛失していた、というほどに関心が薄いキャリア・パスポート。導入4年目にして、その存在意義が危ぶまれている。[Jokeこの一文には冗談が含まれています。真に受けるかどうかはあなた次第です。]

参考文献[編集]