オーディン (哨戒艦)

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

オーディン(アイスランド語:Óðinn)は、かつてアイスランド沿岸警備隊で使用されていた哨戒艦。その大きさから、沖合巡回船(offshore patrol vessel)に分類されることがある。オーディンの艦名は、北欧神話の主神に由来する。同国の沿岸警備隊で、この名前を持つ艦としては3代目である。

アイスランド沿岸警備隊の現存する艦船としては最古である。また、現在世界で唯一稼働するバーマイスター・アンド・ウェイン[1]製エンジンはこの艦のものだと言われている。

現役を引退してからは、レイキャビク湾レイキャビク海事博物館の浮かぶ展示物として使用されている。機関などの整備は引退後も続けられており、2022年6月時点では出撃も可能な状態である。

艦歴[編集]

1959年9月に竣工、1960年1月に就任した。

1963年10月23日、オーディンは座礁したイギリスのトロール船[2]のNorthern Spray号の救助に向かった。同じく英国のトロール船James Barrie号の協力もあって、Northern Spray号の乗員を全員救助することができた。その後オーディンは座礁した船の引き揚げと曳航を試みたが、失敗した。

タラ戦争[編集]

タラ戦争中の1976年4月30日、オーディンが3回にわたってイギリスのトロール船Arctic Corsairの漁網を切ろうとした[3]後、Arctic Corsairから体当たり攻撃を受けた。この攻撃の影響で、オーディンの船尾が損傷した。

その後、Arctic Corsairは1993年に博物館船となった。2017年、博物館船同士の協力の証として、オーディンとArctic Corsairは船鐘を交換した。

博物館船として[編集]

2006年、オーディンは哨戒艦を引退した。2008年、オーディンはHollvinasamtök Óðinsという団体に寄付され、レイキャビク海事博物館に展示されることになった。

2014年から2020年にかけて、オーディンを稼働状態に戻すための修復作業が行われた。修復作業中、エンジンテストとして10年以上ぶりにレイキャビク湾外を航行した。

また、修復作業に際し、オーディンの新しいシグナルマストが日本気仙沼市みらい造船から寄贈された。この寄贈は、Hollvinasamtök Óðinsの一員であるエギル・ソルザルソン氏が、東日本大震災の被害をうけた気仙沼市の復興活動に協力したことに対するお返しとして行われた。

2022年5月、オーディンはアイスランド運輸局より公式な堪航性証明を得た。

同年6月11日、アイスランドの「船員の日」を記念し、新しいシグナルマストの除幕式と、レイキャビクからグリンダヴィークまでの記念航海が行われた。この行事には、アイスランドのグズニ・ヨハンネソン大統領と在アイスランド日本国大使の鈴木亮太郎氏、さらにはみらい造船の社長の木戸浦健歓氏などが出席した。

映画への登場[編集]

2005年のアイスランド映画「父たちの旗」の背景に登場した。映画の中で、オーディンは崖に打ち上げられそうになった一艘の小船を救助した。

先代のオーディン[編集]

  • 初代のオーディンは、アイスランド沿岸警備隊で2番目に就役した巡視船であった。1925年にデンマークで建造され、1926年の6月23日にアイスランドに到着した。512トンの鋼製の艦で、ロイヤル・オードナンス社製の57ミリ砲を2門装備していた。しかし、アイスランド政府の財政状況が悪くなったため、1936年に安値でスウェーデンに売却された。
  • 二代目のオーディンは、1938年にアークレイリで建造された。わずか85トンの木製の艦であった。この記事の主題である3代目のオーディンが就役すると、Gauturに改名された。Gauturは、オーディンの別名の一つである。

参考文献[編集]

https://www.is.emb-japan.go.jp/itpr_ja/amb.suzuki20220611.html

脚注[編集]

  1. かつてデンマークに存在した造船所
  2. 底引き網漁を行う漁船の一種
  3. 当時、イギリスとアイスランドの間で、タラ戦争と呼ばれる漁業権をめぐる紛争が起きていた。アイスランドの沿岸警備隊は、イギリス漁船への妨害として、イギリス漁船の漁網を切ることがしばしばあった。