食べるラー油
食べるラー油とは、2010年代頃にブームとなった一連の辣油商品の総称。
概要[編集]
桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」や、S&Bの「おかずラー油」などが代表的。
ラー油はもともと食べるものなのであるが、特にガーリックやオニオンなどの薬味を多めに加えて、単なる「味つけ」に留まらず「ごはんのおかず」として食べることを志向した商品が「食べるラー油」と称された。
Business Media 誠(現:ITmediaビジネスONLiNE)の調査による「ビジネスパーソン1000人が選んだ「2010年のトレンド」」では、第2位にランクインしている。ちなみに、1位は「スマートフォン」、3位は「~なう」であったというから、それに挟まれた「食べるラー油」のインパクトの大きさが伺い知れよう。
ネットカルチャーへの影響[編集]
ここからは、明確な証拠のない筆者の推測であるが、「食べるラー油」というフレーズは現在のネットカルチャーに少なからぬ影響を与えている。
まず、2010年代頃、ニコニコ動画では「クッキー☆」という例のアレが流行していた。クッキー☆声優の一人・KTK姉貴は「歌ってみた」動画をいくつか投稿していたが、お世辞にも上手とは言い難く、心無いクッキー☆視聴者(≒淫夢厨)の格好の餌食となっていた。そのねっとりとした歌い方から「耳にラー油がかかる」や「聴くラー油」と揶揄されていた。「ねっとり=油」は分かるとしても、なぜ「ラー油」なのか? これは明らかに当時流行していた「食べるラー油」をもじった言い回しであろう。
また、ほぼ同時期には、クッキー☆MMDを称するフレーズとして「見る実家」が定着していた。「クッキー☆」はもともと音声のみで構成されたボイスドラマであったため、有志によって映像化(MMD化)されたものが「見る」と称されたのである。また、霊夢役を演じた声優・KNN姉貴のしゃべり方は「若い女性」というより「実家のオカン」を彷彿とさせるものであった。そのため、以前から淫夢界隈で定着していた「実家のような安心感」というフレーズと融合して「見る実家」という言い回しが生まれるに至った。「聴くラー油」と「見る実家」のどちらが先に存在したかは立証しようがないが、同時期に似た響きのフレーズを面白がるカルチャーが存在したことは確かであり、間接的に「食べるラー油」の影響を見て取るのも無理筋ではあるまい。
2010年代後半にもなると、淫夢=クッキー☆文化はニコニコ動画を離れてインターネット全体に広まり始め、元ネタを知らない人でも言い回しだけは知っているという状況が進行した。「(聴く/見るなどの五感を表す動詞)+(名詞)」という言い回しは、この過程でインターネット全体に広まったと思われる。例えば、元気が出る動画のことを「見る抗うつ薬」と称するのは、昔から存在した「電子ドラッグ」というフレーズと「(見る)+(名詞)」という形式が融合して生まれたものと推察できる。(ちなみに、ニコニコ大百科では「電子ドラッグ」の記事が2008年と古くから存在するのに対し、「見る抗うつ薬」の記事が作られたのは2017年であり、ごく最近発生した単語であることが伺える。)
牽強付会だとお思いになるだろうか。しかし、特定の言語パターンを本来の文脈から離れて再生産してゆく「言語的な感染力の高さ」こそが、淫夢=クッキー☆界隈の特徴であるのだ。元からインターネット・ミームというのはそうしたシミュラークル的なものではあるが、とりわけ淫夢界隈は「言葉だけが独り歩きしてゆく言葉遊び」という傾向が色濃い。そして、それらの影響は直接的に元ネタを知らない多くの一般ネットユーザーに対しても意外なほど影響を与えていることがある。
2019年には『みるタイツ』というアニメが放送されたが(原作漫画は『よむタイツ』)、こうしたネーミングも上記のネットカルチャーの系譜があってこそ世に現れたのではないだろうか。
なお、「食べるラー油」は当たり前のことをわざわざ表現しなおしている点に可笑しみがあるのに対し(ラー油は元から食べるもの)、「見る抗うつ薬」は本来まったく関係のないもので例えている点が可笑しい、という違いがある(抗うつ薬は本来飲んで服用するものであり、動画が薬の代わりになることはない)。「みるタイツ」は2つのパターンの複合型であるといえよう。タイツは本来「履く」ものであって「みる」ものではない。もともとは女性の実用的な装身具にすぎないタイツが、男性オタクのフェティシズム的視線のもとでは「みる」対象に変じてしまうという意味では、「見る抗うつ剤」と似たユーモアが籠められている。しかし、アニメは元から「みる」ものであって、わざわざ「みる」と表現しなくてもいいものを表現し直しているという点では、「食べるラー油」と似たユーモアも籠められているといえるだろう。
辛そうで辛くない少し辛いラー油[編集]
「食べるラー油」そのものの説明から少し外れて余談じみるが、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」という面白ネーミングも世の中に少なからぬ影響を与えている。
以下に、これをもじったと思しきフレーズを列挙していく。
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