辻邦生

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辻邦生(つじ くにお、1925年9月24日-1999年7月29日)は、作家・フランス文学者。

人物[編集]

東京駒込生まれ。旧制松本高等学校で、北杜夫とともにトーマス・マンに心酔していた。東京大学文学部で、独文科ではなく仏文科に行ったのは渡辺一夫に教わりたかったため。卒業論文はスタンダール。その後フランスへ留学し、加賀乙彦、のち妻となる辻佐保子と知り合う。1963年『廻廊にて』で近代文学賞受賞。学者としては、立教大学助教授、東京農工大学教授をへて学習院大学文学部教授を定年まで務めた。学者としての業績は特になく、作家としての評論が主となった。1969年『安土往還記』で芸術選奨新人賞受賞、1972年の『背教者ユリアヌス』で毎日芸術賞受賞、95年『西行花伝』で谷崎潤一郎賞受賞、96年、日本藝術院会員となる。

芥川賞候補になったことがないのは、長編作家だからだが、歴史小説が多いことから、いわゆる純文学作家とは毛色が違い、江藤淳から「フォニイ」とされたこともあり、芸術派だが純文学とは違うという特異な位置にある。ほかに『フーシェ革命暦』は未完に終っている。甲斐の医家だった先祖のことを書いた『銀杏散りやまず』が唯一の私小説的作品。妻の辻佐保子は名古屋大学教授で西洋美術史家。没後四半世紀をへるがいまだ伝記は書かれていない。