特殊相対性理論

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特殊相対性理論(とくしゅそうたいせいりろん)とは、アルバート・アインシュタインが提唱した、物理学の理論の一つである。

概要[編集]

「エーテル仮説」を検証しようとして「マイケルソン=モーリーの実験」が行われたが、「誰がどう測っても、真空中の光速度は一定」という結果が出て、「『エーテル』って、空間そのものじゃねぇの?」という話になったため生まれた理論である。進学校の理系の高校生だったら理解できる程度の話なので、さほど難しくはない。
ただし、「真空中の光速度は、それぞれの慣性系において同一である」というのを認めてしまうと、いろいろとヘンな結論が出てくる(「絶対的同時性の否定」とか)ので、物理学上重要な理論とされる。
我々がいる宇宙空間は、「三次元空間+時間」というふうに理解されており、ニュートン力学においてはこれは実用的に正しいが、さまざまな観測によって説明のつかない事象が観測されるようになり、「時空連続体」という概念を生んだのが特殊相対性理論である。
「相対性」とは、世界の人がみな同じ時間空間を共有しているのではなく、空間・時間は相対的なもので、人によって異なるという意味である。例えば、地上にいる人にとっての「長さ1メートル」と、飛行機に乗っている人から見た「長さ1メートル」は異なるものである、という主張も含まれている。
一見、突拍子も無い発想の様に見えるが、20世紀初頭、多くの物理学者が独自に考えていた内容でもある。実は、「相対性理論」自体は、アインシュタインが発見したものではなく、アインシュタインより前に数学者としても有名なポアンカレがほとんど同じ理論を先に発表していた。
ただ、特殊相対性理論の前提の一つである「光速度不変性の原理」について、ポアンカレがまだ証明が残っているとした一方で、アインシュタインが自然界の根本原理と位置付けたこと[1]、後に一般相対性理論に発展させたのがアインシュタインであることから、アインシュタインの業績として有名になっている。

背景[編集]

時速100km/hの球を投げる人が、時速60km/hで走るトラックの荷台から前方に球を投げると、球は時速160km/hで前方に飛んでいく。これが古典的な物理学の理論である。同じ理屈だと、秒速18万kmで飛ぶ飛行機から、秒速30万kmのを放つと、光は前方向に秒速48万kmで、後方向に秒速12万kmで飛ぶはずである。しかし、こうはならず、光の場合はどちらも秒速30万kmであることが19世紀に分かってきた。

だとすると、ニュートンによって確立された古典力学が、厳密には誤りということになる。そこで、地上にいる人と、飛行機に乗っている人では、時間・空間が異なるという仮定を置くことで、この矛盾を解決しようとした。そのうち、アインシュタインが示した解決策が、特殊相対性理論である。

なお、「特殊」とは、特定の場合にしか成り立たないという意味である。実際、一定速度で運動している、あるいは静止しているものにしか適用できない。これを、加速する物体について適用したものが一般相対性理論である。

理論の主張[編集]

特殊相対性理論では、以下の様な「古典力学と矛盾する現象」が発生する。

  • 何らかの媒体中を除き、より速いものは世の中に存在しない。
  • 列車の先頭と最後尾に、時計があるとする。列車の乗客から見て、どちらの時計も全く同じ時刻を指しているとする。でも地上の人から見ると、最後尾の時計の方が進んでいる様に見える。さらに、時計の針の進み方も、地上にある時計と比べて遅い。
  • 逆に、列車の乗客から見ると、地上の時計の方が、列車内の時計より遅く進む様に見える。
  • 列車の乗客から見て、先頭と最後尾から同時に人が中央に向かって歩き出し、列車の中央で出会ったとする。これは、地上の人から見ると、最後尾の人が先に出発した様に見える。
  • 乗客から見て長さ400mの列車が、秒速18万kmで走っているとする。この時、地上の人から見ると、長さ320mに見える。
  • 逆に、地上で停止中の長さ400mの列車は、秒速18万kmで移動している人から見ると、長さ320mに見える。

なおこうした効果は、光に近い超高速では大きな影響があるが、日常生活での速度帯における特殊相対性理論の効果は微々たるものである。なので、日常生活や機械工学といった範囲では、17世紀に確立されたニュートン力学にほぼ従っていると言える。

これらの理論から、以下の様な副産物も生まれた。

  • もし、質量エネルギーに変換できるのであれば、質量とエネルギーの関係式はで表される。1グラムの質量をエネルギーに変えると、300,000トンの物質を時速2800km/hで投げ飛ばせるだけの膨大なエネルギーになる。
    • 核分裂といった原子力のエネルギーが莫大であることを示す式として有名。
    • 質量保存の法則にも影響があるが、変化量は微小なので、日常の範囲では影響しない。

関連項目[編集]

脚注[編集]