火消し
火消し(ひけし)とは、消火・消防活動に出動する人物・役割・職業・組織。
物理的な「火災」以外にも比喩的の用いられる。問題解決力のある人物を云う場合がある。
概要[編集]
日本では、おそらくは江戸時代の「町火消」のイメージがあるらしい。
具体的には、
- 江戸時代の「町火消」(および「常火消」)
- 油井火災の消火に関わる人々
- 刑事事件などで、事件解決のために外部から招かれた捜査官
- ソフトウェア開発におけるプロジェクト業務における火消し
などがあるが。それぞれのスタイルは異なっている。
燃焼は酸化還元反応であり、常温ではあまり起きにくいため、燃焼に必要なことは
- 酸化物と還元物(燃料)を分離する。一般的には酸素を遮断する。かつては「破壊消火」なども行われた。
- 温度を下げる。水をかけると温度が下がるとともに水蒸気によって酸素が遮断されるが、場合によっては水が酸素と水素に分離して火勢が上がったりもする。いわゆる「水蒸気爆発」であり、「焼け石に水」はこれを指す。
江戸の町火消[編集]
日本江戸時代においては、寺社や武家屋敷の火消し(武士の課役である「大名火消」など。定火消)以外に、町人組織の「町火消」(現在の消防団)がおり、神田佐久間町の町火消である「め組」が知られている[1]。この町火消の名残で、地域の消防消火活動は、専門職でない消防団に頼る地域も多い。
構成員は「臥煙」「臥烟」と呼ばれる。
油井火災[編集]
火薬などの爆風によって、「酸素を遮断する」「鉄などの金属部分の温度を下げる」などの方法で鎮火する。
- アメリカ合衆国の映画『危険の報酬』はこれを主題にしている。とはいえ、ニトログリセリンは液体のまま運ぶと不安定なので珪藻土に染みこませたダイナマイトが登場したという経緯があるので、時代背景設定については不明である。
- アメリカ合衆国の映画『ヘルファイター』(1968) - 1962年の「悪魔のシガレットライター」と呼ばれるサハラ砂漠の油田火災を鎮火したことで有名な消防士レッド・アデアの活躍を基にした作品。なお、レッド・アデアは腕時計ロレックス・オイスターの広告にも出ている。
- 萩尾望都『続・11人いる 』(小学館文庫) - 登場人物のひとりである「火消しの“赤毛(レッド)”」のモデルがレッド・アデアである。
システム開発における「火消し」[編集]
システム開発業務で「火消し」というと、「火がついた」状況を「鎮火」させる役割をいう。ただし「プロジェクトが炎上している」という用法は、「バグ」と同じく不適切な用語である。要するに「関係各所の当事者の尻に火がついた」だけの話で、昨今のネット上の「炎上」とは まったく意味が異なる。
破壊消火に相当するのが、「旧来のシステムを新しいシステムと置換える」というリプレイス であるが、旧システムのコードがクズだとこれが難しく、すでに旧システムの使いにくさに慣れてしまっているエンドユーザの見捨てられ感もあって難しい。旧システムのコードを洗浄して、エンドユーザに納得していただいてから、移植なりリスケ(リスケールアップ。より高性能のハードウェアに乗換えること)するのが順当な対応である。
現在開発中のシステムである場合は、とりあえず状況整理である。これを「溝掃除(どぶそうじ)」といい、「各開発チームのメンバーに聞取りをして、その結果をドキュメントにして撒く」を気長にやっていると、だんだん開発者の頭が冷えてきて収束する。ところが このときに「バグの棲処」みたいなものが浮上がってくることがあり、そうなると対処できるプロも限られるため、陰陽師よろしく追払ってくれる凄腕の火消しもいたりする。この手の火消しは たいてい短期の派遣であり、黒澤明の『七人の侍』ではないが、製造の現場から去ってゆく。こういうタイプの火消しは英語では「ガン・マン」と呼ばれ、決めゼリフは(志村喬 風に)「勝ったのはわしたちではない。ユーザだ」である。
火消し業務に入ったら最後、深夜に電話で たたき起こされるのは日常の一部である。夜中の二時過ぎにいきなり電話がかかってきて「システムが落ちた!」とかいわれてタクシーで駆けつけるというのが お約束である。展示会とかいったら魔法瓶と大型のトートバッグは常備品であり、まず最寄りのコンビニに駆けこんで店員に「これにコーヒーを!」と注文してからおにぎりやらサンドイッチやらも籠に詰めこんで「こっちは袋で!」(差し入れ用なので)と言いつつ駆けつけるのはお約束のネタである。
ところが通信用のスーパーミニコンは二十四時間運用なので、「再起動」ということを行なうことはめったになく、万が一にもシステムダウンしないように、起動時にはプリンタが生きているかをチェックすることになっている。それで、駆けつけたのはいいが「システモコンソール(シスコン)のプリンタの電源が入っていませんでした(苦笑)」と言われて盛大にずっこけたという人がいる。
人間生活との関わり・利用[編集]
「ファイアファイター」の語もあるが、「そんな勇ましいもんでもねぇんだがな(苦笑)」という当事者の弁がある。要救助者が助かって自分が生きて還ってくるのが至上命令でもあるし。
関連作品[編集]
- 映画『恐怖の報酬』 - 石油の油田火災の消火に用いるニトログリセリン運搬に関する作品。
- 刑事コロンボ『ロンドンの傘』 - 自己紹介で「火消し(ファイアマン)です」と自己紹介する場面がある。
その他[編集]
プロ野球では抑え投手は「ファイヤマン」(火消し人)と通称される。