心理操作

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心理操作(しんりそうさ)とは、報酬や懲罰に依ることなく自分の思うように相手の心や考え方を誘導し、自分の希望する行動を相手に起こさせること。「説得」や「立ち回り」のほか、「育児」や「教育」なども含む。脅迫や無視を伴う洗脳マインドコントロールとは区別される。

解説[編集]

テレビCMや買い物での値引き、デートの誘いや寄付のお願いなど、相手に何かを伝えて何らかの行動を起してもらう「説得」は、ただ自分の考えに同意してもらう以上の力が必要となる。相手の持つ要因(年齢や知識、自尊心やテーマの重要性、さらにはあなたの容姿等に対する見解など)に応じて自分が単語や身振りなどを上手く使わないと、相手の行動は自分の希望と全く逆になることもある。つまり「説得」とは、自分が持つ要因を上手く組み合わせて相手の心理的抵抗以上の力(言動)を生み出す「力学」(科学)であると説明される。

多くの説得において、その強さの秘訣は「質より量」である。説得したいテーマについて、手を変え言葉を変えメリハリをつけて相手の記憶に残るようにしておいて、効果的なタイミングで「最後のもう一押し」を演出するのである。その演出までには「ユーモア」や「怒り」を混ぜたり「哀れみを誘う」等、あたかも俳優やウソツキとまでいわれる幅広い演技力が必要となる。

演技力あるいは「立ち回り」の基本は「相手のリクエストに応えること」でもある。言われない部分を理解すること、場の空気を読むこと、暗黙のルールを守ることなどがある。一般に職場では「結果が全て」であることが多い。しかし相手の心を掴むためには、さらに「立ち回り」が求められる。もし職場で、あなたが上司として部下に何かを頼むときは多少の自由を与えるべきであり、あなたが部下としていつも9や10の力を出しているとやがて上司は11や12を要求するような事態になってあなた自身を追い込むことになりかねない。求められる「立ち回り」を要約すると「人が見ているところだけ一所懸命に汗をかくこと」であるともいえる。

イエス・セット話法[編集]

頑固な上司やなかなか決断しない優柔不断な人に対して「はい」と言わせる方法として、「イエス・セット話法」がある。相手に「イエス」と答えるような質問を何度か続けておいて、最後に本題の質問で意図したように問いかける方法である。これは心理学やカウンセリングなどでも使われており、相手に波長を合わせる「ペーシング」というコミュニケーション技術に基づいている。一致団結を求める際にも有効な手段である。数日や一ヶ月、場合によっては年単位で計画することもある。

ベンジャミン・フランクリン効果[編集]

アメリカの政治家フランクリンは、政敵に「本を貸してくれないか?」と頼みごとをして、敵意を友情に変えることに成功した。この効果をベンジャミン・フランクリン効果(ベンフランクリン効果)という。嫌われていると思った相手におべっか等を使うことなく、逆に相手の感情と矛盾した行動を相手に起こさせることで、自分に対する相手の評価を変えることに成功している。

吊り橋効果[編集]

吊り橋効果とは、およそ恋愛において、ドキドキと緊張した時間を共に過ごすことで連帯感や近親感などの感情が生まれるという効果。大袈裟な会話や身振り手振りなどでもその効果を発揮でき、効果的かつ意識的に使うことで自分に好意を持たせることができる可能性を持つ。

育児と教育[編集]

「心理操作」の最も強く求められる場面が、親子の「育児」や学校の「教育」である。独り善がりにならないよう相手の気持ちを考えさせ、自分自身に対する心理操作を身につけさせることでもある。

当然ながら子供にも生きていくための欲求が発生する。よほど小さいときは食欲や睡眠欲程度であるが、社会性を身につける幼児期にもなると、好奇心から承認欲求を抱え、おもちゃや本を欲しがったり取られると困るものを隠したり、ウソをついたり万引きしたりするようになる。その際に、親や教師がどのような向き合い方をするかで子供の成長の方向性が大きく変わってくる。親が平気で約束を破るようならその子供も当然そうなるであろう。「子は親の鏡」「三つ子の魂百まで」と云われるように、他者に感謝し感動する心、言葉や音楽にもたらされる感性などをしっかり磨く大切な心理操作である。

民主主義が唱えられる近代までは政府や国王が教育に宗教を利用することが多々見られ、日本では天皇制及び日本神話などが挙げられる。また仏教(浄土宗)においては「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)と唱えれば全ての苦しみから救われる」と信じさせ、実際に仏壇を用意させて念仏を唱えさせているが、これらも心理操作である。

脚注[編集]


参考文献[編集]

  • 人の心を手玉に取れる心理操作(内藤誼人、KKベストセラーズ)
  • 子どもを「ガマン」させる時、受け止める時(PHPのびのび子育て2011.3月号)

関連項目[編集]