彼方からあらわれたもの

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彼方からあらわれたもの』(かなたからあらわれたもの、原題:: Something from Out There)は、アメリカ合衆国のホラー小説家オーガスト・ダーレスによる短編ホラー小説。クトゥルフ神話の1つで、『ウィアード・テールズ』1951年1月号に掲載された。

ダーレス神話である。ダーレスが創造したオリジナル文献「告白録」と、退魔アイテム「旧神の印」、旧神によって各地に封印された怪物達「クトゥルフの落とし子」にまつわる作品の一つ。特に「告白録」には、キリスト教聖人が旧神の力を借りて邪神を封じたという古潭が備わっており、ダーレスの独自性がある。

東雅夫は『クトゥルー神話事典』にて、「英国の海辺の廃墟を舞台とするM・R・ジェイムズ風の作品で、読みごたえがある」と解説している。[1]

あらすじ[編集]

イギリスを訪れた聖アウグスティヌスは、教皇に宛てた手紙に、「彼方からのものが岸辺にあらわれ、わたくしが処理いたしました」という、謎めいた報告を記す。

時は流れて20世紀。オックスフォード大学から、オカルトに手を付けた4人の学生が追放され、ジェフリイ・モールヴァーンだけが父親の権力で退学を免れる。ある日ジェフリイは、廃修道院で奇妙な「星型の石」を拾う。その日の夜、彼は錯乱した状態で発見され、カリイ医師のもとに連れ込まれる。カリイはジェフリイを鎮静剤で寝かしつけ、彼が持っていた「石」に興味を抱く。第三者からジェフリイの足取りを聞き、錯乱した原因を探る。また石に刻まれていた文字を解読し、司教アウグスティヌスの書いたものと突き止める。

ジェフリイが発作を起こした夜、老齢の漁師が行方不明になり、後に廃修道院の洞窟で変死体で発見される。彼は圧死し粉砕され、さらに凍り付いたように硬直していた。

謎を追うカリイは、ジェフリイの友人である、オックスフォードを退学になったオカルト仲間の2人を呼び出す。彼らは文献「クリタヌスの告白録」について語り出し、聖人アウグスティヌスが洞窟に邪神を封印したと説明する。そして、ジェフリイがうっかり「石」を外して、怪物を解放してしまったのだろうと結論付ける。さらに、2人目の犠牲者も発生する。

3人は小修道院へと出かけ、怪物と対峙する。彼らは石の力で怪物を後退させ、元の棺へと追い込む。そして元通りに石で棺を封印した上で、海に沈める。カリイは、封印されている怪物が他にもいるかもしれないと不安を抱きつつ、物語を締めくくる。

主な登場人物・用語[編集]

  • ウィリアム・カリイ - 語り手。医者。
  • ジェフリイ・モールヴァーン - モールヴァーン卿の子息。
  • ソウムズ・ヒメリイ - 退学になった元学生。
  • ダンカン・ヴァーノン - 退学になった元学生。
  • 修道士クリタヌス - 不用意に石を外して、旧神の封印から怪物を解き放ってしまう。イギリスから追放され、発狂したままローマで書物を記した。
  • 聖アウグスティヌス - 実在の聖人。クリタヌスが解放した怪物を、石の力で修道院地下の石棺に再封印した。

収録[編集]

関連作品[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

出典[編集]

  1. 学習研究社『クトゥルー神話事典第四版』454ページ。