エリック・ホウムの死

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

エリック・ホウムの死』(エリック・ホウムのし、原題:: The Passing of Eric Holm)は、アメリカ合衆国のホラー小説家オーガスト・ダーレスによる短編ホラー小説。クトゥルフ神話の1つで、『ストレンジ・ストーリーズ』1939年12月号に掲載された。

ダーレスが創造したオリジナル文献「告白録」と、旧神によって各地に封印された怪物達「クトゥルフの落とし子」にまつわるダーレス神話作品の1つでもある。死因審問を舞台に、不審な死の真相を探っていくという謎解きでもあるが、実は半端な愚か者が自滅しただけだったという結末を迎える。本作には「旧神の印」は登場せず、呪文が重視される。邪神を撃退することもなく、同シリーズの他作品とは、テーマが共通するものの雰囲気が異なる。

東雅夫は『クトゥルー神話事典』にて、合作ではなくダーレスの単独オリジナルであることを強調しつつ、「魔導書『発狂した修道士クリタヌスの告白録』が引き起こす怪異を描いた<妖術師物語>系の凡作」と解説している。同文脈では、ラヴクラフトの作風を踏襲した作品に欠点が大きいことと、独自神性イタカや邪神ハンターものに注目性があることを述べつつ、本作をどちらでもない「凡作」と結論付けている。[1]

あらすじ[編集]

エリック・ホウムには、妖術の本を集める趣味があり、呪文を試しては失敗してばかりだった。1939年4月、ホウムは邪神を召喚する呪文が記された「修道士クリタヌスの告白録」という本を購入し、友人のランシングの家に召喚しようとする。その際ホウムはランシングに安全確保の防御法を教える。

当日、まずランシングが自宅で防御呪文を唱え、指定された時刻にホウムが呪文を唱える。ランシングは自宅で、扉の向こうまで何かがやって来る気配を感じ取る。何かが帰った後にはずぶ濡れの足跡が残っていた。

ランシングはホウムに電話で報告し、恐怖を話すと、ホウムは本と呪文が本物だったことを喜ぶ。その直後、ランシングは電話越しにホウムの絶叫を聞く。ランシングは警察に通報して、ホウムの家に向かう。現場には、同じ足跡と、海のにおいと、ホウムの惨殺死体が残されていた。

実は、ホウムはランシングに「獣を海に帰す呪文」を教えたつもりだったが、ページを間違えて「送り出した者のもとに送り返す呪文」を教えており、ランシングは死因審問でそのことを説明する。

主な登場人物・用語[編集]

  • エリック・ホウム - 独身貴族。青白い顔と、似合わない口髭の男。オカルト本を買い込んで呪文を唱えるという趣味があった。不可解な怪死を遂げる。
  • ジェレミイ・ランシング - ホウムの唯一の友人。中年紳士。ホウムの死について証言をする。
  • 「獣」 - 非オカルティストである、ランシングと裁判関係者による呼称。海底の存在であり、「クトゥルフの落とし子」と呼ばれる、邪神の眷属。
  • 修道士クリタヌス - 文献「告白録」の作者。海から魔物を呼び出したことで、イギリスの修道院を追放された狂人。
  • 聖アウグスティヌス - 実在した聖人であり、クリタヌスの上司。魔物を海に送り返した。
  • 「発狂した修道士クリタヌスの告白録」 - 「告白録」の、書籍として刊行された版。クリタヌスにより「賢人ならば邪神すら利用できる」と、召喚や使役の方法が書かれている。

収録[編集]

関連作品[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. 学習研究社『クトゥルー神話事典第四版』454ページ。

関連項目[編集]