マカオ邦人女性強盗殺人事件
マカオ邦人女性強盗殺人事件(マカオぽうじんじょせいごうとうさつじんじけん)とは、2012年7月に中国のマカオで日本国籍の女性が殺害された上に現金を盗まれた事件である。所謂殺人・強盗事件。
概要[編集]
2012年7月6日ごろ、中華人民共和国のマカオにあるマンション16階の部屋で、日本国籍を持つ女性Aが、腹を数カ所刃物で刺されるなどして殺害される事件が発生。娘と連絡が取れないことを不審に思った母親が7月19日にAの住むマカオのマンションを訪れたことで、事件が発覚した。室内からは、約140万香港ドル(当時は、1香港ドル10円で、日本円にして約1400万円)と携帯電話が奪われていた。
この事件で埼玉県警は、日本人が海外で被害に遭った場合に日本の警察が捜査できるという国外犯規定の基づき、マカオ警察から捜査資料を入手するなどして捜査。マンションの防犯カメラの映像などから、事件発生から数日後に日本に帰国していた男性Mが捜査線上に浮かんだ。女性Aは、スナックを経営していて、男性Mは客として通っていた。当時、男性Mは女性Aと交際しており、2013年7月に二人で一緒にマカオに出国していたが、男性Mだけが帰国していた。また、男性Mは女性Aから借りていた約20万香港ドルの返済を免れていた疑いもかけられた。
男性Mは、東京都新宿区歌舞伎町のインターネットカフェに滞在しているところを発見。女性Aと交際していた同時期に知人の女性Bからクレジットカードを盗んだとして、2012年9月に窃盗と詐欺容疑で逮捕・起訴した。窃盗事件の公判が終わって判決が言い渡された2013年7月19日、強盗殺人容疑で逮捕した。男は、当初は「別れ話で揉みあいになっていたら、気づくと女性Aに刃物が刺さっていて倒れていた」という旨の供述をしていたが、後に「殺していません。お金も奪っていません」と容疑を否認していた[1]。
2013年8月9日、さいたま地検は強盗殺人罪で男性Mを起訴した[2]。
裁判経過[編集]
2013年7月19日、さいたま地裁は、知人女性Bに対する窃盗・詐欺罪で懲役1年10月の実刑判決を言い渡した。判決では、女性Bと2012年4月に知り合って同居を始めたあと、クレジットカードを盗んで財布を購入したり、7月から10月にかけて現金140万円を盗んだと認定。Mは犯行を認めており、生活のためにやったという旨の供述をした。なお、この犯行時期には、男性Mは女性Aと交際関係にあった。
2014年3月20日、検察側は無期懲役を求刑[3]。検察側は、Aや友人に多額の借金があったMが、事件後数日で借金を返済したことから、現金目的の犯行だったと主張した。一方、弁護側は「借金の返済を強く要求する人はいなかった」として、現金目的の犯行を否定。別れ話で刃物を持ち出したAから身を守ろうとした結果で、正当防衛を主張した。
2014年3月28日、さいたま地裁(片山隆夫裁判長)は、求刑通りの無期懲役の有罪判決を言い渡した[4]。判決では「犯行は強固な殺意に基づくもの」として、不自然な弁解に終始していて反省がないとした。