サンドウィン館の怪

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サンドウィン館の怪』(サンドウィン原題:: The Sandwin Compact)は、アメリカ合衆国のホラー小説家オーガスト・ダーレスによる短編ホラー小説。

ウィアード・テイルズ』1940年11月号に掲載された本作は、クトゥルフ神話の1つ。インスマス事件のおよそ10年後の出来事であることが作中でも言及されており、情報は伏せられているが語り手もただならぬ出来事があったことを察している。また過去作品『潜伏するもの』にて倒されたロイガーが再登場する。前年に発表された『ハスターの帰還』では四大霊の水と風の対立が説明されているが、本作は真っ向から反しており、水が風を使役している。さらに翌年の作品『戸口の彼方へ』とはプロットがそっくりであり、主人公がミスカトニック大学の図書館司書というところまで共通する。

時系列は、1927年『インスマスの影』、作中時不明『潜伏するもの』、1938年『サンドウィン館の怪』となっている。

東雅夫は『クトゥルー神話事典』にて、「旧支配者に仕えるものたちの間に起こる内紛と葛藤を、一種の呪術合戦の形で描いた作品。『インスマスを覆う影』の後日譚としても読むことができる」と解説している[1]

あらすじ[編集]

インスマスの道沿いに建つサンドウィン館の当主は、深きものどもと契約し、金銭と知識を受け取る代わりに、自身と息子の肉体と魂を捧げることを誓う。死んだ当主の死体は持ち去られ、代替わりして当主となった二代目もまた、同じ契約を結ぶ。そして三代目のアサ・サンドウィンの代となり数十年が経過する。蛙じみた容貌の当主は、金に困るとどこかへと旅立ち、戻ってきたときには十分な財産を得ているということをくり返す。

1938年の晩冬、サンドウィン館にて、ドアのノブが濡れていたり、屋敷内で異様な音楽や足音が聞こえたり、魚臭いにおいが発生するといった奇妙な現象が起きていた。そんな中、アサの息子・エルドンは父の様子がおかしいことに気づき、ミスカトニック大学付属図書館の司書として勤務する従兄のデイヴに連絡する。

サンドウィン館を訪問したデイヴは、風の音や鳥の声のような音を聞き、エルドンはこれらの音がアサへと話しかけているのだと主張する。デイヴはアサとも面会するが特に異様な印象は受けず、むしろエルドンの神経の方を心配する。就寝したデイヴは、中国の高原イースター島などの光景や、異様な生物を夢に見る。足音を聞いてデイヴとエルドンは目覚め、2人は同じ夢を見たことを確認しあったのち、叔父の書斎へと向かう。

鍵のかかった書斎の中では、アサが訪問者の<深きものども>に、自分は息子のエルドンを絶対に売らず、代々の契約を打ち切ると宣言していた。訪問者は脅しをかけ、アサは「クトゥルーもイタカも退ける」と猛るも、訪問者にロイガーの名を出されると言葉を失う。訪問者は窓から去り、デイヴとエルドンが書斎に入ったときには、アサは悪臭をただよわせ、床はずぶ濡れになっていた。アサは2人に、サンドウィン家の資金源とおぞましい契約について説明し、自分の代で終わらせて子孫を守ることを宣言する。

デイヴは司書として禁断の文献に関する知識を持っていたため、すぐに事情を理解し、いったんアーカムに戻って文献を調べる。その後、デイヴが再びサンドウィン館を訪れた際、アサの容姿は以前とは異なっていた。事情を呑み込めないエルドンをよそに、アサはデイヴに、ロイガーと対決することを告げる。その際、アサは勝てば自分は自由になれるし、負けてもエルドンは守れるという思惑を語る。

4月27日の夜、デイヴはエルドンから緊急の呼び出しに応じてサンドウィン館に来る。夜鷹[注 1]の鳴き声、水のぬかるみや風、美しい邪悪な音楽など、不浄な気配がただよう中、アサは書斎にて籠城しながら魔術でロイガーと戦っていたが、書斎に侵入したロイガーによって連れ去られる。書斎には鍵がかかっており、デイヴとエルドンは介入できかったが、書斎から深きものどもによるロイガーの詠唱に続いて、アサの絶叫が響き渡った後、2人はドアを破って書斎に入る。部屋の中にアサの姿はなく、彼の服だけが残されていた。

主な登場人物・用語[編集]

  • デイヴ(デイヴィッド) - 語り手。ミスカトニック大学付属図書館の司書。
  • エルドン - デイヴの従弟。父アサとは似ていない。詳しいことは何も知らない。
  • アサ・サンドウィン - サンドウィン館の主。両生類じみた容貌をしている。年齢は60代だが若く見える。息子を守るために、ロイガーと対決する。
  • ロイガー - 宇宙の風に乗って現れる邪神。うしかい座アルクトゥールスが上っているときに召喚される。

収録[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ヨタカ科ウィップァーウィルヨタカ ()。クトゥルフ神話においては主にダニッチ関係でなされる演出で、邪神の行動に、夜鷹が死者の魂を連れ去るという迷信を絡めている。

出典[編集]

  1. 学習研究社『クトゥルー神話事典第四版』356ページ。