エナメル質
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エナメル質は歯の歯冠の滑らかな最表層にある生体で最も硬い生物組織である。
概要[編集]
内部の象牙質や神経を損傷から保護している。密度が高く、化学的に不活性であるが、薬物使用や食物から発生する酸に長期間晒されることにより侵食する。エナメル質を作るエナメル芽細胞は歯の萌出時にはすでに存在しないため、一度失われたエナメル質が再生することはない。
エナメル質は滑沢で乳白色、半透明の光沢を有する。外胚葉に由来する内エナメル上皮細胞から分化したエナメル芽細胞から形成される。象牙質よりも後に形成される。
エナメル質の形成過程は下記2時期に分かれる。
- 基質形成期:有機質の分泌と厚さの成長の進行。
- 成熟期:厚さの成長が止まってから完全に成熟までの期間で、主に石灰化が進行する。
組織[編集]
96%が無機質(大半がハイドロキシアパタイト)、2%が有機物、2%が水分である
- 無機質
- 無機質としては、カルシウムイオンや無機リン酸、炭酸を主成分とするほか、多くの微少元素が含まれる。
- 微少元素の構成割合はエナメル質の深さなどによって異なる。カルシウムイオン、リン酸カルシウムは、その大部分がヒドロキシアパタイトの結晶として存在する。
- 有機質
- エナメルタンパクとしてアメロゲニン、エナメリンなどがある。
- この他、糖や脂質などが含まれている。
構造[編集]
- エナメル質はエナメル象牙境(エナメル質と象牙質の境)から歯冠表面まで伸びるエナメル小柱の群によって構成されている。歯頸部で最も薄く、切端部、咬合部で最も厚い。
- ほとんどの歯では、その最表層の約30μmの比較的無構造なエナメル質層があるといわれ、そこでは深部のものより石灰化が多少強い。
物性[編集]
- エナメル質は圧縮強さや弾性率は高い。
- 表層は深部よりも硬い。これは石灰化の差や結晶の配向および金属イオンの分布などの構造上の差異による。
- 永久歯エナメル質のヌープ硬さは200KHN以上である(象牙質は70~120KHN)。モース硬度は6~7。
- 永久歯エナメル質は熱、電気の不良導体である。歯に対する熱刺激や電気刺激から歯髄を保護する役割を持つ。
- 象牙質より引張力さが小さい。
- 結晶の大きさは1,500×600×300Å(象牙質は200×30×70Å)。
乳歯と永久歯におけるエナメル質について[編集]
- 乳歯、永久歯ともにエナメル質の結晶はハイドロキシアパタイトCa10(PO4)6(OH)2を最小単位として形成される。
- 乳歯の方が硬度が低い(やわらかい)。
- 乳歯の方が含水量が多い(乳歯2.8%、永久歯2.3%)。
- 乳歯の方が結晶粒子が小さい。
- 乳歯の方が永久歯より脱灰剤の影響を受けやすく、溶け易い。またフッ化物(フッ素)による歯質強化を受けやすい→乳歯は永久歯より化学反応性が大である。
- 乳歯の方が基質の厚さが永久歯より1/2と薄い。
- 乳歯はエナメル小柱の走行が歯頸側に平行で根尖側に向うものは少ない。