アカカマス

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アカカマスSphyraena pinguis Günther, 1874)は、スズキ目カマス科カマス属の[1]硬骨魚[2]

分布[編集]

沿岸性が強く、日本では最も普通に見られるカマス。港や堤防にも多い。カマス科の中では北方に分布する種で、サンゴ礁の海域にはいない[3]

北海道から九州南岸にかけての日本海東シナ海太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島。朝鮮半島(西岸・南岸・東岸)、済州島。渤海。黄海。中国(東シナ海・南シナ海沿岸)、台湾西岸。インド洋から西太平洋にかけて[3]

形態[編集]

体はほぼ円筒形。頭部は小さく、目は大きい[4]。口は大きく、犬歯状の歯がよく発達する。全長60センチ[5]

本州近海ではヤマトカマスが混獲されるが、本種は腹鰭起点が第1背鰭より明らかに前方にあるので区別できる[6]

第1背鰭:5棘条、第2背鰭:1棘条9軟条、尻鰭:2棘条8軟条[7]。側線鱗88-92枚[4]

生態[編集]

産卵期は5-8月、直径0.8ミリ程度の分離浮性卵を多いもので20万個、産卵期を通しては100万個産む。25-30時間で孵化、秋には5センチ程度の稚魚となり、藻場や沿岸浅所の表層から中層で群れて暮らす。1年で25センチに成長する[8]が、これ以降は季節的な深浅移動を行うようになる。周年漁獲されるが、夏は沿岸の浅所に、冬はやや沖合の深所に移動する[3]

寿命は7年程度[8]

人との関わり[編集]

鱗がはがれやすく、それが原因で傷ついて死んでしまう個体も多い。それゆえ飼育は難しいとされてきたが、1994年、東海大学海洋科学博物館(通称・海のはくぶつかん)で飼育に成功した。静岡市清水区由比町の定置網に協力を要請して採集した個体の30%は傷が治った。なお、餌付けには苦労した[9]模様[10]

水産業[編集]

日本産カマスの中でも高価で美味な本種は、定置網や釣りで漁獲される[11]

クドアの一種Kudoa megacapsula[12]が寄生していることがある。中国産アカカマスを輸入して干物に加工する過程で、筋肉が融解しているのが発見されて問題となった。ただし人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。また、融解した魚肉がなんらかの毒性を持つという報告もない[13]

釣りの対象魚として[編集]

伝統的なサビキ釣りのほか、ルアー釣りの対象として人気がある[8]

食材として[編集]

秋から冬が旬。食材としては他のカマスよりも高級品とされ、本カマスの別名もある[14]

水気が多い肉質で、焼き物として利用するときは塩で軽く締めてから焼くことが多い。皮目が特に美味とされ、焼き霜の刺身で提供されることも多い[15]。握り寿司にするには、塩[16]、または塩と酢[17]で締めてから握る。

卵巣は塩辛になる[14]

出典[編集]

  1. Sphyraena pinguis Günther, 1874 アカカマス”. BISMaL. 国立研究開発法人海洋研究開発機構. 2020年12月8日確認。
  2. 『日本産魚類検索 全種の同定』 中坊徹次、東海大学出版会、2013年2月26日、第三版、2428頁。ISBN 978-4-486-01804-9
  3. a b c 『日本魚類館』 小学館〈小学館の図鑑Z〉、2018年3月25日、442頁。ISBN 978-4-09-208311-0
  4. a b 『新訂原色魚類大圖鑑』 多紀保彦, 河野博, 坂本一男, 細谷和海(監修)、北隆館、2005年12月10日、701頁。ISBN 4-8326-0820-7
  5. 蒲原稔治、岡村収 『原色日本海水魚図鑑(Ⅰ)』 保育社、1985年7月31日、40頁。ISBN 4-586-30072-8
  6. 『新訂原色魚類大圖鑑「解説編」』 多紀保彦, 河野博, 坂本一男, 細谷和海(監修)、北隆館、2005年12月10日、59頁。ISBN 4-8326-0820-7
  7. 阿部宗明 『原色魚類検索図鑑Ⅰ』 北隆館、1989年3月31日、79頁。ISBN 483260029X
  8. a b c 『「特徴・仕掛け・さばき方」が分かる672頁超図鑑 さかな・釣り検索』 つり人社、2020年7月1日、266-267頁。ISBN 978-4-86447-344-6
  9. 金魚のような動く餌は食べたが、アジの切り身は最初食べなかった。空腹にさせたのち切り身を与えることで解決
  10. 鈴木宏易「アカカマスの餌付け」、『海のはくぶつかん』第24巻第3号、東海大学海洋科学博物館、1994年、 7頁。
  11. 伊東正英「笠沙で水揚げされる水産重要種」、『鹿児島大学総合研究博物館Newsletter』第43号2018年、 11頁、 ISSN 1346-7220
  12. 刺胞動物門粘液胞子虫綱
  13. Yokoyama, H.; Itoh, N. (2005). “Two multivalvulid myxozoans causing postmortem myoliquefaction: Kudoa megacapsula n. sp. from red barracuda (Sphyraena pinguis) and Kudoa thyrsites from splendid alfonso (Beryx splendens)”. J. Parasitol. 91: 1132-1137. doi:10.1645/GE-548R.1. 
  14. a b 西潟正人 『改訂新版 日本産魚料理大全』 瀬能宏(監修)、緑書房、2020年9月10日、157-158頁。ISBN 978-4-89531-430-5
  15. 『刺身百科』 柴田書店、2007年8月10日、86頁。ISBN 978-4-388-06020-7
  16. 新庄綾子 『すし語辞典』 藤原昌髙(監修)、誠文堂新光社、2019年8月9日、75頁。ISBN 978-4-416-51917-2
  17. 目黒秀信 『すしの技術大全』 誠文堂新光社、2013年8月30日、94-95頁。ISBN 978-4-416-61350-4