よみもの:ジャパンカップ外国馬来ない問題
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近年、日本中央競馬会(JRA)が東京競馬場で施行する中央競馬の重賞競走(GI)であるジャパンカップ(英:Japan Cup)に外国馬が出走しない、あるいは出走してもごく少数に留まっていることが問題視されている。
2016年に日本経済新聞の関根慶太郎が執筆した記事によると、ジャパンカップには1981年の創設以来、2005年までは毎年5頭以上の外国馬が出走していた[1]が、2006年の2頭を境に減少に転じ、2006年から2015年までの10年間で外国馬の出走数が最も多かったのは2010年の8頭、5頭以上が出走した年も2009年・2010年・2012年の3度しかない[1]。2019年の第39回ジャパンカップは、創設以来初めて、外国馬が1頭も出走しないこととなった[2]。代わりに、外国人騎手がJRA所属騎手を含めて7人が参戦した。クリストフ・ルメール(フランス)、ミルコ・デムーロ(イタリア)のおなじみ2人にくわえてオイシン・マーフィー(アイルランド)、ウィリアム・ビュイック(デンマーク)、クリストフ・スミヨン(ベルギー)、ライアン・ムーア(イギリス)、ランフランコ・デットーリ(イタリア)がやってきた。これにて一応「国際競走」の面目は保った・・・のか?
関根は、外国馬の出走数が減少傾向にある「最大の理由」を「日本馬が強くなったということに尽きるのだろう」としている[1]。サラブレッドインフォメーションシステム・奥野庸介の指摘によると、かつては日本の馬は弱く、外国の競馬関係者は日本に行けば容易に高額賞金を得られると考えていたという[1]。ところが、日本馬の水準が高くなり、日本馬が外国へ進出して大レースを勝つようになると、外国馬は勝てなくなり、日本へ遠征しても十分な賞金を得られず収支が合わない、と考えられるようになってきた[1]。そのうえ、仮にジャパンカップで優勝したとしても、凱旋門賞やドバイワールドカップに較べると、得られる名誉や賞金は少なく、こうしたことが外国馬が出走を見送る傾向が強まっているとしている[1]。
関根は、ほかにも外国馬の出走が減った理由を考察している。関根によれば、かつては外国の一流競走馬を種牡馬として日本へ輸入することがさかんであり、その際にジャパンカップを「お披露目」の場に利用していたという[1]。しかし、日本国内の種牡馬の実績向上とともに外国種牡馬の輸入が減少したことで、こうした「お披露目」目的の出走が減ったという[1]。
このほか関根は、「外国馬が日本の高速馬場を敬遠している」「検疫手間の不備」「英語が通じない」などの説があることを紹介しつつ、これらを否定している[1]。1989年にホーリックスが世界レコードを記録したあとも外国馬の出走は衰えず、その後もアルカセットがレコード勝ちするなど、「高速馬場」と外国馬の出走数との間には相関関係・因果関係は認められないという[1]。また、検疫や英語が通じない点などはジャパンカップ創設期から条件が大きく変わっているわけではなく、近年になって外国馬の出走が減っていることを説明する理由にはできないという[1]。
同じく日本経済新聞の野元賢一が2019年に執筆した記事によれば、「日本に来る外国馬が少ないのは、勝つチャンスが少ないから」としており[3]、日本調教馬の資質向上が遠征する外国馬の出走数減少を招いているとしている[3]。野元は近年比較的多くの遠征馬を集めている香港やオーストラリアの例を挙げながら、凱旋門賞のように厳しい戦いになることを承知の上で、多くの関係者が馬を送り込むようなレースは例外[3]とし、馬を出す側にとって魅力的なのは「地元馬が弱く、勝つチャンスが十分に見込める状況」としている[3]。