Zoom
Zoom(ズーム)は、Zoomビデオコミュニケーションズが提供するクラウドコンピューティングを使用したWeb会議サービスおよびコラボレーションプラットフォームである。主にビジネスや教育分野で利用され、遠隔コミュニケーションやリモートワークの支援に重要な役割を果たしている。
概要[編集]
Zoomビデオコミュニケーションズは、Eric Yuanによって2011年に設立されたアメリカ合衆国の企業である。当初は主にビジネス向けのビデオ会議ソリューションとして開発されたが、COVID-19のパンデミックの影響により、世界的な需要が急速に増加した。
Zoomはクラウドベースのサービスであり、ユーザーはデスクトップコンピュータ、モバイルデバイス、ウェブブラウザを介して利用することができる。ユーザーはビデオ会議の実施、チャットの送受信、ファイルの共有、画面共有などの機能を利用することができる。
主な機能[編集]
Zoomには、以下のような主な機能がある。
ビデオ会議[編集]
Zoomは、高品質のビデオ会議機能を提供しており、参加者はビデオやオーディオを通じてリアルタイムでコミュニケーションを行うことができる。画面分割やグリッドビューなどの表示オプションも備えており、多くの参加者と効果的に対話することが可能である。
チャット[編集]
Zoomのチャット機能は、参加者間でテキストメッセージをやり取りするための手段を提供する。個別のチャットやグループチャットのほか、ファイルの添付や絵文字の使用も可能である。
画面共有[編集]
画面共有機能により、ユーザーは自分のデスクトップ画面や特定のアプリケーションを他の参加者と共有することができる。プレゼンテーションやデモンストレーションを行う際に便利である。
予定されたミーティング[編集]
Zoomでは、予定されたミーティングの設定が可能である。ユーザーは特定の日時に会議をスケジュールし、参加者に招待状を送信することができる。また、予定されたミーティングはカレンダーとの連携も可能であり、参加者は通知を受け取り、予定された会議に参加することができる。
セキュリティとプライバシー[編集]
Zoomはセキュリティとプライバシーに重点を置いており、さまざまな機能を提供している。
パスワードと待ち合わせ室[編集]
Zoomでは、ミーティングにパスワードを設定することができる。また、待ち合わせ室と呼ばれる仮想的な待機エリアを利用することで、ホストが参加者を承認する前にミーティングに入室することができる。
エンドツーエンドの暗号化[編集]
Zoomはエンドツーエンドの暗号化をサポートしており、参加者間の通信を保護することができる。これにより、第三者が会議の内容を傍受するリスクを低減することができる。
ロールベースのアクセス制御[編集]
Zoomでは、ホストが会議のアクセス制御を管理することができる。特定の機能の使用を制限したり、参加者の役割と権限を設定することができる。
ライセンスとプラン[編集]
Zoomはフリーミアムモデルを採用しており、基本的な機能は無料で提供されている。ただし、一部の機能や拡張機能は有料のサブスクリプションプランが必要となる。
有料プランにはさまざまなオプションがあり、ユーザーは自身のニーズに合わせてプランを選択することができる。
批判と論争[編集]
Zoomは急速な成長に伴い、セキュリティとプライバシーに関する問題に直面したことがある。一部の報道では、ゼネラルデータ保護規則(GDPR)の違反や、会議の録音や収集されたデータのセキュリティに関する懸念が報じられた。Zoomはこれらの問題に対処し、セキュリティアップデートやプライバシー機能の強化を行っている。
セキュリティ上の問題[編集]
訴求していたエンドツーエンドの暗号化が事実と異なっていた[編集]
「エンドツーエンドで暗号化されている」ことを売りにしていたが、事実と違うことが判明した[1]。
UDPパケット偽装によるミーティング乗っ取り[編集]
2018年11月には、セキュリティ上の脆弱性(テンプレート:CVE)が発見された。リモートの認証されていない攻撃者が、会議出席者またはZoomサーバーからのUDPメッセージを偽装し、ターゲットクライアントの機能を呼び出せる。攻撃者は会議から出席者を削除したり、ユーザーからのメッセージを偽装したり、共有画面をハイジャックしたりできる。2019年7月、セキュリティ研究者のJonathan Leitschuhはゼロデイ脆弱性を開示した[2]。この脆弱性により、任意のWebサイトがmacOSユーザーをズームコールに強制参加させられると示した。macOSでZoomクライアントをアンインストールしようとすると、ソフトウェアはバックグラウンドで自動的に再インストールを続ける。最初のインストール中にクライアントを削除しようとしてもアクティブのままである非表示のZoom由来のWebサーバーが残る問題があった。即日Zoomはアップデートを提供し、Appleはサイレントアップデートで対処した[3]。
ユーザー承認なしでシステムにインストール/root権限奪取問題[編集]
2020年3月、ユーザの承認を経ず勝手にインストールする問題とroot権限を奪取しようとするセキュリティ問題[4]を指摘され、4月2日に修正アップデートを実施した[5]。<templatestyles src="Module:Citation/CS1/styles.css" />
Web会議で使用する鍵が中国で生成されている[編集]
Web会議で使用するためには利用開始時に秘密鍵が必要である。秘密鍵はZoom社のサーバーで生成されるが、そのうちのいくつかが中国で生成されていることが発覚した[6]。 中国にデータを送信していた問題を受け、SpaceXとNASAはZoomの使用を禁止している[7]。ニューヨーク市は学校での使用を禁止し、Microsoft Teamsへ移行させた[8]。他にも、アメリカ上院、シンガポール教育省、ドイツ外務省、台湾の政府機関、オーストラリア政府、インド政府、Google、ダイムラー、エリクソン、NXPセミコンダクターズ、バンク・オブ・アメリカもZoomの使用禁止、制限、又は警告等の措置をとっている[9][10][11]。
Zoomを規制する国々[編集]
アメリカ合衆国[編集]
2020年現在まで、国や州をあげての規制などは特に行われていない。しかし、NASAやスペースXなどの機関では2020年4月現在Zoom使用を禁止している[12]。
イギリス[編集]
イギリスの諜報機関である政府通信本部のナショナル・サイバー・セキュリティ・センター(NCSC)が、機密情報が中国の監視の目にさらされる恐れがあるとして、機密業務にテレビ会議サービス「Zoom」を使用しないようイギリス政府や国会に指示を出したと、ガーディアンが報じた[13]。
シンガポール[編集]
シンガポール教育省は、新型コロナウイルス感染拡大を受けてオンライン授業を実施するなかで「極めて重大な事案」が発生したとして、教員にZoomの使用停止を指示した[14]。
台湾[編集]
台湾政府はセキュリティ上の懸念が指摘されているビデオ会議アプリ「ズーム(Zoom)」を公務で使用することを禁止すると通知した[15]。
ドイツ[編集]
ドイツ外務省はZoomの使用を制限している(Zoomとは国際的パートナー関係のため禁止はしていない)[15]。
脚注[編集]
出典[編集]
- ↑ 「Zoom」のヴィデオ会議は、結局どこまで“安全”と言えるのか? 専門家たちの見解
- ↑ Leitschuh (2019年7月9日). “Zoom Zero Day: 4+ Million Webcams & maybe an RCE? Just get them to visit your website!” (英語). Medium. 2019年7月9日確認。
- ↑ Whittaker, Zack. “アップルがビデオ会議システムZoomの隠しサーバーを削除するアップデートを静かにプッシュ配信” (日本語). TechCrunch Japan. 2020年3月1日確認。
- ↑ Felix (2020年3月30日). “Ever wondered how the @zoom_us macOS installer does it’s job without you ever clicking install? Turns out they (ab)use preinstallation scripts, manually unpack the app using a bundled 7zip and install it to /Applications if the current user is in the admin group (no root needed).pic.twitter.com/qgQ1XdU11M” (英語). @c1truz_. 2020年4月1日確認。
- ↑ “New Updates for macOS” (英語). Zoom Help Center. 2020年4月4日確認。
- ↑ ビデオ会議「Zoom」の暗号化は機密情報に不適切、中国との関係を研究者が警告
- ↑ “スペースX、ビデオ会議アプリ「ズーム」を禁止 安全性懸念で” (日本語). ロイター (2020年4月2日). 2020年4月2日確認。
- ↑ “ニューヨーク市は学校でのZoom禁止、セキュリティ上の懸念からMS Teamsに移行へ”. 2020年4月14日確認。
- ↑ “「Zoom」のセキュリティを懸念--米上院や独政府も使用制限との報道”. 2020年4月1日確認。
- ↑ “Zoomは安全ではない、インド政府が政府職員の業務での使用を禁止”. 2020年4月17日確認。
- ↑ ビデオ会議アプリ「ズーム」に逆風、ダイムラーやBofAも使用規制
- ↑ スペースX、ビデオ会議アプリ「ズーム」を禁止 安全性懸念で
- ↑ UK government told not to use Zoom because of China fears
- ↑ シンガポール、教員の「ズーム」使用を停止 「重大事案」発生で
- ↑ a b ビデオ会議アプリ「ズーム」データを中国に送信 株主は集団提訴