神戸質店主殺害事件
神戸質店主殺害事件(こうべしちてんしゅさつがいじけん)は、2005年10月18日に起きた強盗殺人事件である。
概要[編集]
2005年10月18日、兵庫県神戸市中央区の質店において、経営者のAが殺害される事件が発生。現金1万円が盗まれており、警察は強盗殺人事件として捜査を開始した。
事件から2年近くたった2007年9月6日、当時電気工のOが逮捕。Oがスピード違反の際に取られていた指紋が現場に残されていた指紋と一致。現場にあった煙草の吸殻もOのDNAと一致。強盗殺人罪で起訴に至った。
裁判経過[編集]
裁判では、強盗殺人罪で無期懲役を求める検察と無罪を一貫して主張する弁護側が対立した。
- 検察側
- 現場に残されていた指紋や足跡が被告のものと一致している
- 現場に落ちていた煙草の吸殻4本が被告のDNAと一致している
- 被告が当初は現場に行ったことがないと供述しながら、指紋が検出されたことを聞いてから現場に言ったことを認めているのは真実を隠すための虚偽の供述をしている
- 被告の防犯カメラを取り付ける相談を受けたという供述は、防犯センサーが元々とりつけてあったことから信用できない
- 被告に目の雰囲気が似た人が現場にいたという目撃証言がある
- 弁護側
- 当初、被告が現場に行ったことがないと供述したのは事件が1年10か月も前にあったことから、記憶違いがあった
- 被告は事件前に、店舗の前の煙草を買おうとしたところ、被害者から声をかけられ、防犯カメラを設置するための相談を受けた。そのために室内に入って防犯カメラの確認作業をしており、そのときに煙草を吸った
- 犯行時に履いていたとされる靴を逮捕までの1年10カ月もの間、とっておいたのは不自然
- 凶器が発見されないなどの計画性が疑われる中で、DNAなどの証拠をわざわざ残すのは不自然
2008年6月30日、一審神戸地裁(岡田信裁判長)は、無罪判決を言い渡した。判決では、目撃証言について、事件から1年10か月が経過しているなか、目が似ているという感覚的なものだけであり、信用性に疑問が残るとした。犯人がわざわざ証拠となる煙草の吸殻を残すことは考えにくいとして、DNAの証拠能力に疑問を呈した。また、物色された金庫に指紋が残っていないことや被害者の倒れていた付近からは足跡が検出されていないことから、指紋や足跡から被告が犯人だとは断定できないとした。防犯カメラの確認のために室内に入り、犯行の数時間前に店を出たという被告の供述については客観的事実に整合するとしているとして、信用性があるとした。
2009年9月24日、大阪高裁(小倉正三裁判長)は、一審の神戸地裁の無罪判決を破棄。逆転有罪判決で検察の求刑通りの無期懲役を言い渡した。判決では、一審判決が事件から1年10か月が経過しているとして信用できないとしていた「被告が殺害現場から出てきたのを見た」という目撃証言の信用性を認定。被告の防犯カメラに関する供述は不自然だとして、信用性がないとした。
2011年12月12日、最高裁(千葉勝美裁判長)は被告の上告を棄却。無期懲役とした二審判決が確定した。
判決後[編集]
2012年2月11日に「えん罪・神戸質店事件支援する会」が結成され、再審無罪判決を目指した活動が行われている。