異次元通信機
異次元通信機(いじげんつうしんき、原題:英: The Plain of the Sound)は、イギリスのホラー小説家ラムジー・キャンベルが1964年に発表した短編小説。クトゥルフ神話の一つ。
1964年にアーカムハウスから短編集『The Inhabitant of the Lake and Less Welcome Tenants』に収録されて発表された[1]。
事件後に、グラーキの黙示録がブリチェスター大学に回収されるが、重要なページが破り取られている。またこの本は、他作品によると、大学から失われたようである。
あらすじ[編集]
1958年夏、ブリチェスター大学の学生3人は、セヴァンフォードの田舎にある店の話を聞き、興味を抱いて行ってみるも、営業していなかった。バスは午前中しか出ておらず、帰りは歩くしかない。新聞販売店の主人に道を教わるも、3人は迷う。
謎の機械音が聞こえ、音を辿ると赤茶けた石造りの家が見つかる。住人に道が聞けるかもしれないと期待して、3人は中に入る。だが無人で、家具も寝室も埃まみれであった。本棚には「グラーキの黙示録」があり、別の一室には通信機のような妙な機械が設置されていた。トニーが見つけたアーノルド・ハード教授の日記は、1930年12月8日で途切れていた。日記によると、この機械は、音を映像に変換する装置であるという。ハード教授は、異界スグルーオと交信を試み、危険を見越して防御策も準備していたらしい。そして日記の途切れた日に、教授は何かを呼び出したのだ。
興味にかられたレスとフランクが、トニーの静止を振り切って強引に装置を作動させると、スクリーンに異界の生物が映し出される。これはやばいと装置を止めようとするも、トニーが襲われ正気を失う。2人はトニーを閉じ込め、道を探してブリチェスターに戻り、医師と教授たちに知らせる。フランクが隙を見て「黙示録」のページを剥ぎ取って破棄したために、現場を調べた研究者たちは事件を解明できていない。トニーは完全に発狂し、回復の見込みはない。
主な登場人物・用語[編集]
- フランク・ナトール - ブリチェスター大学の学生。セヴァンフォード行きを提案した。帰り道をメモする。
- トニー・ロールズ - 同大学生。ゴーツウッド行きにもセヴァンフォード行きに乗り気ではなかった。正気を失う。
- レス(わたし) - 同大学生。ゴーツウッドに行きたかった。方位磁石を持っている。
- アーノルド・ハード教授 - ブリチェスター大学の研究者だが、暴力事件で大学を追われた。「グラーキの黙示録」の海賊版を所有し、第9巻の2057ページにあった設計図から異次元通信機を組み立てた。
- 「グラーキの黙示録」 - 1870年ごろまで存在したグラーキ教団の内部文書。『湖畔の住人』などで言及される。
- 「スグルーオ湾の世界」 - 音から成る世界であり、物質は単なる臭気として知られるのみ。「ネクロノミコン」に記述がある。スグルーオ人たちは、夢を介してハード教授に交信をとってきた。
- 「アラーラ」 - ハード教授が召喚しようとした謎の名前。もとはアーサー・マッケンの『白魔』に登場する謎の固有名詞。キャンベルが本作で取り込んだ。
収録[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ↑ 国書刊行会『新編真ク・リトル・リトル神話大系4』解題435-437ページ。