海賊の石
『海賊の石』(かいぞくのいし、原題:英: The Viking's Stone)は、イギリスのホラー小説家ブライアン・ラムレイによる短編ホラー小説。
1970年8月に書かれた[1]。タイタス・クロウが関与する幽霊譚[2]。
あらすじ[編集]
タイタスは、アンリから借りた稀覯書「英國海洋傳」の記述をもとに、海賊の墓の実地調査を行う。アラートンの森での調査に際して、タイタスは「海賊の石」に災厄が宿っていることを知る。タイタスはふと、考古学者ソールソンに石の存在を漏らす。
興味を抱いたソールソンは、アンリから本を借りて海賊の石について調べ、本に「スカルダボルグ」と記された地、すなわち現在のスカーボロへと赴く。ソールソンから手紙で「<血まみれ斧>ラグナールの石を見つけた」と報告を受け取ったタイタスは、事態の深刻に受け止め、ソールソンを説得するために、アンリを呼び出して共にスカーボロへと向かう。道中の列車内で、説明を聞いたアンリは状況を理解する。
ホテルでソールソンを見つけ、2人は「呪われるぞ」と説得を試みる。ソールソンは発掘してから奇妙な夢に苛まれており、渋々ながら説得に耳を貸す。石は既に郵送されて明日の朝にソールソンの自宅に到着するよていになっているため、3人は夜の列車で先回りしてロンドンへと戻ることにする。3人は仮眠していたが、悪夢を見て目を覚ます。窓の外では、列車と並行して幽霊船が疾走しており、斧を掴んだ骸骨がソールソンに殺意を漲らせていた。海賊の投擲した斧がソールソンの胸を貫き、幻影は消えて何事もなかったかのように列車は元の運行へと戻る。
ソールソンに外傷はなく、検視の結果は心臓発作と結論付けられた。またソールソンが石を輸送させていた業者のトラックは、交通事故を起こして大破炎上し、3人全員が死亡した。積んでいた荷物については報道では何も言われておらず、タイタスはいつか再びアラートンの森を訪れて海賊が墓を奪還したのかを確かめてみるつもりと述べる。
主な登場人物・用語[編集]
主要人物[編集]
- タイタス・クロウ - オカルティスト。
- アンリ‐ローラン・ド・マリニー - 語り手。怪奇作家。「英國海洋傳」をソールソンに貸す。
- ベンジャミン・ソールソン - 考古学者。海賊と古代ノルウェーについて、異端児ながら有数の碩学と評される。古物コレクター。
海賊時代[編集]
- ラグナール - <血まみれ斧>の悪名を馳せたヴァイキング。アラーストンの森に埋葬された。
- ヒルドゥルスレイフ - 魔女。ラグナールの母。ラグナールの戦に助力していた。
- エイステイン王 - ノルウェー王。ラグナールを打ち倒した。
- 「英國海洋傳」 - ジョン・ロフトソンの著作。原本はラテン語で書かれ、英訳された。古代ノルウェー王たちの英雄譚とイギリス海賊の冒険談を記している。アンリの1冊以外に現存するかもわからない稀覯書。
- 「海賊の石」 - 高さ8フィート、重量3.5トンの大石。魔女が我が子の墓を守るために置いた。ルーン文字が刻まれており、墓を侵す者に呪いがふりかかることを警告している。
関連人物[編集]
- ウォームズリー - 古代文字の権威。タイタスがルーン解読の知識源とした本「記号暗号および古代碑文の注釈に関する注解」の著者。『狂気の地底回廊』の登場人物であるが、ラムレイの作品にてしばしば言及される。
- バニスター・ブラウン‐ファーレイ - 収集家。海外の古物を盗んでイギリスに持ち込んでいた、悪名高い冒険家。タイタス曰く、ソールソンと同類のコレクター。『ニトクリスの鏡』の登場人物。