名古屋キャバクラ放火殺人事件

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名古屋キャバクラ放火殺人事件(なごやキャバクラほうかさつじんじけん)とは、2010年に愛知県名古屋市のキャバクラで起きた放火殺人事件である。

概要[編集]

2010年9月3日午前0時46分ごろの深夜、愛知県名古屋市中村区のキャバクラ「クラブインフィニティ」で、ペットボトルに入れたガソリンをまいた後に点火する事件が発生。従業員ら1人が敗血症で死亡、従業員2人が重軽傷を負った。

2011年4月、愛知県警中村署捜査本部は、火災が起きた約2時間前に店で暴れるなどして店に損害を与えたとして、暴力行為処罰法違反容疑で山口組弘道会系元組長の池本賞治ら6人を逮捕。5月20日、名古屋地検は6人のうち池本、A、Aの手下のとび職のHの3人を器物損壊罪と建造物損壊罪で起訴。他の3人については処分保留とされていたが、7月29日に不起訴処分となった。

2011年5月20日、放火に関与したとして、池本、元組員の又村光俊とA、別件で起訴されていたM(売春防止法違反事件で5月2日に起訴)の4人を殺人と殺人未遂、現住建造物等放火の容疑で再逮捕した。事前共謀に当たるとして逮捕された4人は、いずれも同じ組の所属だった。その後、池本・又村は、殺人や現住建造物等放火などの容疑で起訴。共犯として逮捕された残りの2人は、処分保留とされて、2012年3月30日に不起訴処分となった。

事件現場周辺は、元組長らが所属する弘道会系組織の勢力下で、放火されたキャバクラ店は、同暴力団への用心棒代という名のみかじめ料を要求されていたが、拒否したという経緯があった。そのため、報復のために暴力団が組織的に犯行に及んだとされている。

裁判経過[編集]

元組長[編集]

弁護側は、店のトイレだけに放火するよう指示していたとし、店の中央付近に火を付けようとした又村を止めようとしたと同時に火が上がったとして、殺意を否認して傷害致死罪を主張。一方で、検察側はガソリンで放火すれば人が死ぬと認識していたとし、殺意があったと主張した。

2012年3月22日、名古屋地裁手崎政人裁判長)は無期懲役(求刑無期懲役)を言い渡した。公判で争われた殺意の有無について、元組長が勢いのついた火をみてもあわてていなかったことなどから、放火により人が死ぬ可能性を認識していたとして、未必の殺意があったと認定した。この判決に弁護側が控訴した。

2012年11月15日、名古屋高裁志田洋裁判長)は、一審判決を支持して無期懲役判決。店のトイレへの放火を指示しただけで殺意はなかったと事実誤認を主張する被告の主張を退けた。暴力団員が繁華街で一般人を巻き込んだことの社会的影響を考慮すると、刑事責任は重大とした。この判決に弁護側は上告した。

2013年3月19日、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は、決定で被告の上告を棄却して、無期懲役が確定した。

実行犯の組員[編集]

2012年3月8日、名古屋地裁手崎政人裁判長)は懲役30年(求刑無期懲役)の判決を言い渡した。判決では、放火をして3人を殺傷した犯行を無差別的かつ凶悪としたが、首謀者は元組長の池本賞治で指示に従っていたことなどが考慮されて、有期刑となった。この判決に弁護側は控訴せずに確定した。

Hの裁判[編集]

暴力行為等処罰法違反で起訴された後に、別件の窃盗事件と併合審理。2011年11月29日、名古屋地裁伊藤納裁判官)で懲役3年6月(求刑懲役4年6月)の判決が言い渡された。

Aの裁判[編集]

放火の2時間前に実行犯の指示役としてキャバクラ店のドアや窓などを壊したとして器物損壊罪と建造物損壊罪で起訴されていた元暴力団幹部は、2011年8月19日に名古屋地裁水野将徳裁判官)で懲役2年・執行猶予4年(求刑懲役2年)の判決が言い渡されている。

民事訴訟[編集]

2013年5月20日に死亡した男性の遺族が、実行犯2人に加えて山口組組長、ナンバー2の若頭、3次団体の総長の5人を相手に、約1億5500万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。2008年の改正暴力団対策法の使用者責任規定を適用した訴訟としては8件目。その後、2015年7月14日に遺族と和解していたことが判明している[1]。組長らが7月末までに連帯して1億円を支払うこととなり、遺族に対する謝罪や接触を禁ずる文言が和解条項に盛り込まれている[2]。なお、実行犯2人は、事件後に暴力団を破門されている。

店の経営者や建物の所有者ら3人は、2013年7月16日指定暴力団山口組の組長らを相手に、事件で閉店に追い込まれ、経済的損失を受けたとして、約1億500万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした[3]。2016年6月24日、篠田組長ら3人が連帯して賠償金を支払い、報復や加害行為をしないと確約。原告の親族や会社関係者に対しても、原告関係者と知った上での接触はしないとした内容で和解が成立した[4]

関連項目[編集]

脚注[編集]