中村真一郎

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中村真一郎(なかむら しんいちろう、1918年3月5日-1997年12月25日)は、小説家・評論家・フランス文学者。

人物[編集]

東京市日本橋区生まれ。東京帝国大学文学部仏文科卒。優秀で、助教授になる話もあったが、作家の道を選ぶ。プルーストを範とし、芥川龍之介堀辰雄を師表とする反私小説的な立場をとり、『失われた時を求めて』に倣って「死の影の下に」以下の作品を書く。妻を亡くして重いうつ病になり、電気ショックで回復したという。

後期には日本古典への傾斜が激しく、平安朝文学、近世漢文などに親しみ、1972年『頼山陽とその時代』で芸術選奨文部大臣賞受賞。74年『この百年の小説』で毎日出版文化賞受賞。小説も多く書いたが、小説より評論のほうが優れていると思われていた。小説では『四季』を書き、続編『夏』で1978年、谷崎潤一郎賞受賞。続けて『秋』『冬』と書いたが、女性との性的交渉を描くことが多く、晩年には『美神との戯れ』など、ポルノ風の小説を次々と書いた。

1985年『冬』で日本文学大賞、90年『蠣崎波響の生涯』で読売文学賞受賞、90年、日本藝術院賞受賞、日本藝術院会員となる。岩波新書『色好みの系譜』から「色好み」という言葉がやや流行した。晩年、谷崎潤一郎賞の選考委員を務めていたが、他の委員が候補作の細かなミスをあげつらうことを不服として辞任、同年末に死去した。また死去前には、小説というジャンルは、20世紀前半までに新しい試みをやり尽くして、この先発展する余地はあまりないとも書いていた。