ベン・ライトマン

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ベン・ルイス・ライトマン(Ben Lewis Reitman、1879年1月1日 - 1943年11月16日)は、アメリカ合衆国アナーキスト、貧民のための医師(「ホーボー・ドクター」)。現在はアナーキストのエマ・ゴールドマンの恋人の1人として最もよく知られている。

ライトマンは派手でエキセントリックな人物であった。エマ・ゴールドマンは自伝『リヴィング・マイ・ライフ』(1931年)の中でライトマンと初めて会ったときのことを語っており、その様子を伝えている。

 訪問客は大男で、すばらしく形のよい頭は明らかにいつ洗ったのかわからない黒い縮れ毛の塊で覆われていた。目は茶色で大きく、夢見るようだった。唇といえば肉付きがよく情熱的で、笑うときれいな歯が見えた。ハンサムな獣のようだった。手はほっそりと白く、不思議な魅力を発散させていた。指の爪は髪と同じく、石鹸とブラシに対してストライキ中であるかのようだった。私は彼の手から目を離すことができなかった。不思議な魅力がその手から放射されているようで、人の心を愛撫し、揺り動かしているようだった。 — エマ・ゴールドマン著、小田光雄、小田透訳『エマ・ゴールドマン自伝・上』ぱる出版、2005年、616頁。

経歴[編集]

1879年にミネソタ州セントポールで貧しいロシアユダヤ人の家に生まれ、シカゴのスラム街で育った。10歳でホーボー(渡り労働者)となり、レールを伝って各地を放浪した[1]。その後、シカゴに戻り、総合病院の研究室で用務員として働いた[1]。1900年にシカゴ医科大学に入学し、1904年に医学課程を修了した[1]。この間、1901年にメイ・シュワルツと結婚し、翌年に娘のヘレンが生まれたが、1905年に離婚した[2]。娘のヘレン・ライトマンは一般にヤン・ゲイの名で知られる作家、ヌーディストニューヨーク州ハイランズのヌーディスト・コロニー「アウト・オブ・クラブ」の設立者である[2][3][4]

ライトマンはシカゴで医師として働き、ホーボー、売春婦、貧民、その他社会から見放された人々にサービスを提供する事を選んだ[1]。1907年にホーボー大学のシカゴ支部を開設し、「ホーボーの王」として知られるようになった[5]。ホーボー大学は移民の教育、政治的組織化、社会サービスのための国際友愛福祉協会(IBWA)の中で最大の施設となった。1908年3月にエマ・ゴールドマンと出会い、講演のために大学のホーボー・ホールを提供した。2人は恋愛関係となり、ゴールドマンは彼女の人生の「偉大で大きな情熱」("Great Grand Passion")だと表現した[6]。2人は約8年間一緒に旅をし、避妊、言論の自由、労働者の権利、アナーキズムのために活動した。

この間、2人はサンディエゴの言論の自由のための闘争(1912年 - 1913年)に参加した。ライトマンは自警団に拉致され、激しく殴られ、タバコとタール、山よもぎの葉(羽毛の代わり)で尻に「I・W・W」の焼印を押された[7]。また直腸と睾丸に虐待を受けた[8]。その数年後の1916年に2人は避妊を推進したためにコムストック法で逮捕され、ライトマンは6ヶ月間刑務所に収監された[9]

2人とも自由恋愛を信じていたが、ライトマンの行動はゴールドマンに嫉妬心を起こさせた[10]。1917年の最後の避妊運動の後、2人は関係を終わらせた[1]。1917年頃、ライトマンは投獄の直前にアンナ・マルティンデールと再婚し、服役中の1918年に息子のブルータスが生まれた[1][2]

出所後、ライトマンはシカゴに戻り、シカゴ保健局で働き始め、シカゴ矯正院の性病診療所に配属された。1924年にクック郡刑務所に最初の性病診療所を設立した。1930年代に性病予防のためのシカゴ協会のディレクターとなった。またボヘミアン・クラブ「Dill Pickle Club」(1917年 - 1935年)に参加した。1930年に2番目の妻が亡くなると、ローズ・シーガルと3度目の結婚をした[1]。2人は離婚しなかったが、1935年頃にライトマンはメディナ・オリバーと同棲を始めた[1][2]。2人の間にメッカ、メディナ、ビクトリア、オリブの4人の娘が生まれた[1]

1943年にシカゴで心臓発作のため63歳で死去し、イリノイ州フォレストパークのワルドハイム墓地[11](現在のフォレストホーム墓地)に埋葬された。

作品[編集]

出典[編集]

  1. a b c d e f g h i Ben L. Reitman papers UIC
  2. a b c d Helen Reitman Gay History Wiki
  3. 1932, JAN GAY, ON GOING NAKED, FALSTAFF PR,PRIVATE PRINT! LIM/NUMBERED/SIGNED!!”. Worthpoint. 2022年6月7日確認。
  4. THE NUDIST Vol. 02, No. 07, October [stated; otherwise identical to September issue]”. AbeBooks. 2022年6月7日確認。
  5. JWA "Women of Valor — Emma Goldman - Love & Sexuality - Ben Reitman", Jewish Women's Archive. Retrieved September 2, 2018.
  6. Emma Goldman, Living My Life, Volume 1.
  7. エマ・ゴールドマン著、小田光雄、小田透訳『エマ・ゴールドマン自伝・上』ぱる出版、2005年、741頁
  8. John A. Farrell, Clarence Darrow: Attorney for the Damned, (Doubleday 2011), p. 243. ISBN 978-0-385-52258-8
  9. Wexler, Intimate, pp. 211–215.
  10. Wexler, Intimate, pp. 140–147.
  11. Roth, Walter 『Looking Backward: True Stories from Chicago's Jewish Past』 Chicago Review Press、2005年8月1日。ISBN 97808973382712020年5月17日確認。
  12. Boxcar Bertha: Tales spun from the hobo world The Portland Alliance, Ruth Kovacs, November 2002 issue
  13. "Despite decades of scholarship claiming otherwise, Boxcar Bertha is not a real woman but an imagined representation of unconventional female life in the early twentieth century. In her unpublished dissertation, Martha Reis carefully documents the lives of the women who inspired Bertha’s character, including a female pickpocket, anarchist, and ex-patriot poet." Venturing More Than Others Have Dared: Representations of Class Mobility, Gender, and Alternative Communities in American Literature, 1840-1940; dissertation, Heather Joy Thompson-Gillis, MA, The Ohio State University 2012
  14. Hidden histories, Ben Reitman and the "outcast" women behind Sister of the Road : the autobiography of Box-Car Bertha Martha Lynn Reis, dissertation, Ph. D. University of Minnesota 2000
  15. Pfahlert, Jeanine (2004-04-01). “Book Reviews (Rev. of Sister of the Road)”. European Journal of American Culture 23 (1): 6465. doi:10.1386/ejac.23.1.63/0. ISSN 14660407. http://openurl.ingenta.com/content/xref?genre=article&issn=1466-0407&volume=23&issue=1&spage=63. 
  16. デイヴィッド・トンプソン、イアン・クリスティ編、宮本高晴訳『スコセッシ・オン・スコセッシ――私はキャメラの横で死ぬだろう』フィルムアート社、1992年、71頁

引用文献[編集]

  • Frank O. Beck, Hobohemia: Emma Goldman, Lucy Parsons, Ben Reitman & Other Agitators & Outsiders In 1920s/30s Chicago. Charles H. Kerr Press, 2000. ISBN 978-0-88286-251-4.(description
  • Roger Bruns, The Damndest Radical: The Life and World of Ben Reitman, Chicago's Celebrated Social Reformer, Hobo King, and Whorehouse Physician. University of Illinois, 2001.
  • Mecca Reitman Carpenter, No Regrets: Dr. Ben Reitman and the Women Who Loved Him. SouthSide Press, 1996.(ライトマンの娘による自伝的回想録)
  • Emma Goldman, Living My Life. Knopf, 1931.
    • エマ・ゴールドマン著、小田光雄、小田透訳『エマ・ゴールドマン自伝(上・下)』ぱる出版、2005年。
  • University of Illinois at Chicago, University Library, "Ben L. Reitman papers".
  • Alice Wexler, Emma Goldman: An Intimate Life. Pantheon Books, 1984. ISBN 0-394-52975-8. Republished as Emma Goldman in America. Beacon Press, 1984. ISBN 0-8070-7003-3.
  • Tim Cresswell, The Tramp in America. London: Reaktion Books, 2001. ISBN 1-86189-069-9.

参考文献[編集]

外部リンク[編集]