フェアリー詰将棋
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フェアリー詰将棋( - つめしょうぎ)とは、本来の将棋のルールには存在しない特殊な制限や、特殊な駒を導入した上で、王将(玉将)を詰めることを目的とするパズル作品である。要は、フェアリールールの詰将棋のことである。
主なルール[編集]
- ばか詰
- 「ばか」という言葉のニュアンスが嫌いな人は「協力詰」とも呼ぶ。
- 攻方が受方の王を詰めようとするのは通常のルールと同じだが、この「ばか詰」では受方も自らの王を詰まそうとして、応手を行う。
- 駒数が異様に少なかったり、受方の王の近くに守備駒が大量にあったりすることで、一見詰められないような初形図であることが多い。ただし通常の将棋の感覚では詰まなくても、受け方が協力することにより意外な方法で詰んだりするのである。
- チェス・プロブレムのフェアリールール「ヘルプメイト」から輸入されたアイデアである。
- ばか自殺詰
- 「ばか詰」と「自殺詰」の複合ルールだが、「自殺詰」が単体で用いられる事はない。「自殺」という言葉のニュアンスが嫌いな人は「自玉詰」とも呼ぶ。
- これは双方協力した上で、攻方の王将を詰めるというルールである。王手は常に攻方から受方へと行われるのにも拘わらず、最終手になると攻方側の王将が詰んでいる、というのは慣れるまでは相当に奇妙な感覚である。
- 悪魔詰
- 攻方も受方も、受方の王が詰まないように王手と応手を行うにもかかわらず、手を進めるうちに不思議と詰んでしまうという作品。あたかも悪魔に魅入られたようであるから、この名がついたとか。
- もはや「解く為の」パズルと呼んでいいのかも疑問である。その特異なルールのためか作品例は少ない。
- キルケ/アンチキルケ
- 駒が取られると、その駒は駒台に行かずに、指し将棋における初期位置に戻る、というルールである。取られた時点の枡の位置から最も近い所へと戻り、また、既にその枡が別の駒でふさがっている場合には、通常通り敵の持ち駒とされる。なお、当然ながら、王だけは対象外である(そうじゃないと「詰む」という概念が意味を成さないので)。
- 以上が「キルケ」のルールであり、「アンチキルケ」はその真逆、すなわち取った方の駒が初期位置に戻るルールである。なお、戻れない場合には「そのまま」。受方の王が駒を取った場合、5一地点に戻る為、ここをふさぐ事(5一に駒を配置するか、5一に利きをつくる)がポイントとなる。
- 天竺詰
- 受方の王の動きが、王に王手をした駒の動きとなるルール。王手をされていないときは通常の「王」の動き。
- 強い駒で王手をすると受方の王も強くなってしまうため案外詰め難い。「歩」で王手をして詰め上げることが多い。
- マドラシ
- 攻方と受方の同種の駒(但し、生駒と成駒は区別する)が互いの利きに入りあうと、両方とも利きがなくなるというカルチャーショックが激しいルール。主に飛車・角行・香車などの飛び駒において重要となる。離れた場所から互いの利きに入りあった場合、その間に別の駒を挟む事によって、それぞれの利きを回復する事が出来る。この利きの回復を用いて王手をかける手筋も、しばしば登場する。
- 「Kマドラシ」(読み:キング・マドラシ)はこれの上位版で、王と王とが互いの利きに入る事さえも可能となる。
- PWC
- Platzwechselcirce の略。フェアリーチェス由来のルールである。
- 取られた駒は取った駒の在った位置に移動する、といういい感じにぶっ飛んだルール。要は場所が入れ替わる。通常ルールとのあまりの違いに、慣れるまでは頭痛がすることだろう。なお当然ながら「王将」だけは例外として普通に取れる(キルケと同じく「詰める」ということが意味を成さなくなってしまうため)。
- Isradam
- 同種の敵駒の利きに入る手を禁止するルール。但し、生駒と成駒は区別する。
- なお、王手を掛けた状態で、その王を「実際に」取ると同種の敵駒の利きに入ってしまう場合、これを有効と認めるか否かでタイプ(A)とタイプ(B)とに分類される。
- Isradam(A)では、このような王手は王手ではないとされ(無効とされ)、Isradam(B)ではこのような王手は有効となる。
- 禁欲/強欲詰
- 「禁欲詰」は駒を取らない指し手が可能であるならば、必ず駒を取らない手を指さなければならない、というルール。王手の回避などの必要が生じた際には、駒を取る事も出来る。「強欲詰」は駒を取れる状況ならば必ず取らなければならないというルール。上手く受方の王に駒を取らせ続けて詰めやすい位置に誘導する、などのテクが使われる。
- 取禁詰
- 禁欲詰と異なり、そもそも駒を取る事が出来ない。但し駒を取ることによってのみ詰んだ状態を回避できる場合は、特別に可能とされる。これさえも禁止とするルールは「全取禁詰」。
- 成禁詰
- 成れない。読んで字の如く。
- 安南/安北詰
- 味方の駒が縦に並んだ時に、上の駒が下の利きになるのが「安南詰」、逆に下の駒が上の利きになるのが「安北詰」である。
- 対面/背面詰
- 攻方と受方の駒が向かい合ったときに、互いの利きが入れ替わるのが「対面詰」、背中合わせになったときに入れ替わるのが「背面詰」。
- 駒数非制限
- たとえば通常の将棋には「歩」は最大18枚しか存在しないが、フェアリー詰将棋では軽く100枚や200枚登場することがある。
- フェアリー駒
- 受方の王が通常とは異なる動きをするもの。#主なフェアリー駒で詳述する。
なお、これらのルールは組み合わせる事が出来る。たとえば「背面キルケばか自殺詰」といった具合である。初めての人が聞くと、思わず「は?!」と聞き返したくなるようなルールだが、案外これぐらい複雑なルールの作品も多く発表されている。
主なフェアリー駒[編集]
受方の王が通常と異なる動きをするとき、それをフェアリー駒という。このような作品自体は「駒詰」と呼ばれる。例えば受方の王が飛車の動きをする場合「飛王詰」と呼ぶ。以下では本将棋(一般に「将棋」と呼ばれているルール)にない駒のうち、特にフェアリー詰将棋において扱われる事が多い駒について解説する。
- 宝
- 普通、王将は成る事が出来ないが、フェアリー駒では成れる場合がある。そのような成った状態を一括して指すのに「成王」ではなく「宝」という語を用いることがある。
- 獅子/鳳凰/麒麟/奔王
- それぞれ古将棋に登場する駒。ここらへんやここらへんやここらへんやここらへんを参照してください。
- 八方桂
- チェスのナイトと同一の動き。
- 駱駝(Camel)/縞馬(Zebra)/きりん(Giraffe)
- フェアリーチェスに登場する駒。いずれもKnightを拡張した動きである。
- Knightの進む大きさを1対2と表現した場合、「駱駝」は1対3、「縞馬」は2対3、「きりん」は1対4。
- 伍(Five-Leaper)/梧(Root-50-Leaper)
- フェアリーチェスに登場する駒。いずれもKnightを拡張した動きだが、上の3つより複雑である。
- 隣の枡に移動するのを[距離1]と表現すると、「伍」は直線にして[距離5]の枡、「梧」は直線にして[距離√50]の枡へ動くことができる。解説している筆者でさえ何を解説しているのかよく分からない複雑さである。
- 或いは以下のように言い換えてもよい。「伍」は縦横に5枡の地点、及び斜めに3枡進んだ上に元いた地点から遠ざかるように隣1枡(斜めはダメ、横の1枡)の地点に進むことが出来る。「梧」は斜めに5枡の地点、及び縦横に7枡進んだ上に今の進行と直角方向に1枡の地点に進むことが出来る。
- G(Grasshopper)
- フェアリーチェスに登場する駒。Grasshopperの原義は「バッタ・イナゴ・キリギリス」。
- Queen(上述)の利き上にある駒を、1枡飛び越した先の地点に飛ぶ事が出来る。飛び越した先に敵駒があれば取る事もできる。
- シャンチー(中国将棋)の「包」(炮・砲)に少し似ているともいえる。
- 夜(Nightrider)
- フェアリーチェスに登場する駒。ってか『ナイトライダー』って何だ。かっけぇ
- Knight(上述)の利きの方向に(駒に阻まれない限り)何度でも連続飛びが出来る。
神無一族について[編集]
フェアリー詰将棋の愛好家グループとして、神無一族(読み不明。恐らく「かみなし」か「かんなぎ」)はよく知られた存在である。実際の血縁関係はなく、一郎・次郎・三郎...と各メンバーにコードネームが付けられている。1993年9月に詰将棋誌『詰将棋パラダイス』(450号)にて、神無一族の氾濫と号し大量のフェアリー詰将棋を出題、これが世にフェアリー詰将棋を認知させる契機になったともいわれている。その後も半年に一度ペースで氾濫を起こし、現在では一族メンバー以外からも作品を募集するなど、やや趣向を変えて継続されている。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- Onsite_Fairy_Mate - 神無七郎の運営するウェブサイト。
- フェアリー詰将棋の歴史