ニトクリスの鏡 (小説)

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ニトクリスの鏡(にとくりすのかがみ、原題:: The Mirror of Nitocris)は、イギリスのホラー小説家ブライアン・ラムレイが1971年に発表した短編ホラー小説。

概要[編集]

ラムレイのタイタス・クロウの中短編シリーズの一編であるが、タイタスが登場せず、アンリ-ローラン・ド・マリニーが主人公・語り手となっている。

ニトクリスは、古代からの記録にはあるものの、実在が疑問視されている人物である。ラヴクラフトは彼女を題材にして『ファラオとともに幽閉されて』を創作しており、その影響を受けてロバート・ブロックは『暗黒のファラオの神殿』を書いており、続くラムレイの本作は先2作品のパスティーシュである。『ファラオとともに幽閉されて』時点ではクトゥルフ神話ではなかったが、ラムレイの本作によってニトクリスはクトゥルフ神話の人物になった。

東雅夫は『クトゥルー神話事典』にて「古代エジプトの魔女王ニトクリスにまつわる呪物ホラー」[1]と解説している。

あらすじ[編集]

エジプトの女王ニトクリスは、呪いの鏡を用いて政敵を処刑していたという。やがて鏡は副葬に供される。

カイロの市場で、アブーという男が、あまりにも高価な品物を扱っていたうえ入手元を公開するのを頑として拒んだために、怪しまれて逮捕される。彼は留置所内で、官憲に「ニトクリスの呪いが降りかかる」とわめきちらす。探検家ブラウン-ファーレイはニトクリスと呪物について調べ上げ、さらにアブー老を探し当てて薬物や現金を握らせて墓所を暴露させることに成功する。旅は難航するも、ついに探検家は墓所にたどり着き、レイス老が盗掘し損ねた鏡を持ち帰る。だが、帰宅した探検家は、悪夢にうなされるようになる。錯乱した思考で、夜に鏡を布で覆わなければならないなど迷信と断じ、布を剥がして深夜0時を迎えようとする。そして突然失踪する。

ブラウン-ファーレイが所持していた「ニトクリスの鏡」と彼の日記が、競売にかけられ、ド・マリニーが落札する。ド・マリニーは日記を読み進め、鏡の危険性を察し始める。ふと気が付けば、深夜0時を迎えつつあり、鏡に目をやると、怪物が映っており、しかも鏡面からせり出しつつあった。そいつは、不定形の胴体に、2人の人物が混在したような顔を備えており、半々の顔は、ニトクリスの肖像画と、新聞に載っていたコレクターの顔写真にそっくりであった。

目撃したド・マリニーは、咄嗟に抽斗から破魔の拳銃を取り出し、鏡を破壊する。破片はテムズ川に投棄し、青銅製の枠縁は高熱で溶かして埋める。恐怖を鎮めるために、睡眠薬を飲んで無理やり眠りにつく。

主な登場人物・用語[編集]

  • エティエンヌ-ローラン・ド・マリニー - アメリカニューオリンズの高名なオカルティスト。アンリの亡父。
  • アンリ-ローラン・ド・マリニー - 主人公。アメリカ人だが、作中時点ではイギリスに住んでいる。呪物コレクター。
  • ネフレン-カ - エジプト史から記録を消された、暗黒のファラオ。ニトクリス以前の、鏡の所有者。
  • ニトクリス - エジプト第6王朝の女性ファラオ。ネクロノミコンやジャスティン・ジョフリの詩に言及がある。
  • アブー・ベン・レイス - アラブの古物商。エジプト人ですらなく、盗賊であった。墓所で、鏡以外の全てを盗み去っていた。
  • バニスター・ブラウン-ファーレイ - 探検家・考古学者・古美術コレクター。鏡を所有していたが、日記を残して失踪する。
  • カント男爵 - 魔女狩り貴族。「銀の拳銃と弾丸」が、競売に出されており、ド・マリニーが(本物か疑わしいと思いつつ)落札している。
  • ニトクリスの鏡」 - 深夜0時になると、鏡からショゴスが出てくる。ニトクリスは、鏡を置いた牢獄に政敵を投獄することで、処刑に用いた。

関連作品[編集]

関連項目[編集]

収録[編集]

  • 創元推理文庫『タイタス・クロウの事件簿』夏来健次

脚注[編集]

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注釈[編集]

出典[編集]

  1. 学習研究社『クトゥルー神話事典第四版』507ページ