テニスラケット (コールドケース)
『テニスラケット』(Look Again)は、アメリカ合衆国のCBSで放送された『コールドケース 迷宮事件簿』の最初のエピソード(第1シーズン第1話)である。27年前の1976年に起こった少女の撲殺事件を描く。初放送日は2003年9月28日。
クロージングの曲はクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの「Have You Ever Seen The Rain?」[1]。
ストーリー[編集]
以下にはネタバレが含まれています。
1976年、フィラデルフィア。夜道を楽しそうに歩き、パーティへと行く2人の少女。しかし、その内の1人、ジル・シェルビーは翌朝死体となって見つかった。
それから27年後の2003年のフィラデルフィア。市警の殺人課の女刑事リリー・ラッシュは、事件が起きたデラズ・チキン&リブにやってくる。3人が殺されたトリプル殺人の現場である。リリーは相棒のクリス・ラッシングと合流して捜査に参加するが、開始してすぐに同僚のヴェラに促されて、面会にやってきた民間人の話を聞くために署に戻ることになった。しかし、実際はヴェラが言いつけられた話であり、そのことを知ったリリーは聴取に乗り気ではない。面会に訪れたのはボニータという名の老年の女性。彼女は1976年に少女が男に殴り殺されるところを目撃。当時は息子がいてクビになることを恐れていたのだが、癌に冒された今、勇気を出して通報したのであった。
1976年に起こった事件の通報に最初は驚きを隠せないリリーだったが、事件の資料と証言のつじつまがあうことが分かり、再捜査に乗り気になる。ボスのスティルマンとの話し合いの結果、ベテランの黒人刑事ジェフリーズに話を聞くことになった。ジェフリーズによると、容疑者は恋人のトッドとその弟、そして住み込みの料理人や不良黒人の線も当たられた。当時事件の担当だったブリット刑事は、逃亡犯の追跡中に殉職している。第一容疑者でジルに暴力を振るっていたと噂されてた恋人のトッド・ウィットリーに関しては、地元の名手だった親の力が強かったためにちゃんとした捜査を進められずに終わった。昔と状況が変わった今だからこそ事件を捜査することに価値があると主張するリリーだが、事件の捜査を実際にやることには、ヴェラに押し付けられる形となっているために渋る。結局、スティルマンに説得されて、リリーが捜査に当たることになった。
まず最初に、ジルの母親のイヴリンに捜査の再開を報告しに行く。しかし、毎年8月に20年以上警察署に足を運んだイヴリンは、事件の解決の見込みがないことを感じて既に諦めていた。彼女によると、ジルの親友だったメラニーは、現在トッドの妻となっていて、2人とは今も親交がある。彼女はそのしがらみからか、一番に疑われていたトッドのこともかばい、再捜査には関わらないことを告げた。署に戻ったリリーはスティルマンと再び捜査について話し合う。現在売れっ子の弁護士であるトッドと対照的に、弟のエリックは離婚を経験し酒に溺れ職にもあぶれた。スティルマンはどん底状態のエリックを先に当たることを勧める。
家から出てくるエリックを掴まえて聞き込みを開始するリリー。しかし、エリックは事件についてあまり話したがらない。リリーは角度を変え、事件ではなくジルについてを聞くと、エリックは話しを始めた。彼によると、ジルは2人きりだと優しかったが、みんなといるときは冷たくされていた。事件の夜も。また、エリックは1年間だけレスリングをしていたことを話した。次にリリーはトッドに聞き込みをする。トッドは当時警察には弟といたと話したことを告げるが、都合の悪いことを聞かれると、リリーをすぐさま帰そうとする。リリーは咄嗟にジルへの暴力について言及すると、トッドはその暴力を行ったのはジルの父親だと証言する。
リリーは再びイヴリンに会いに行く。検死報告と医療記録から幼少時から何度も大怪我をしていたことが発覚し、そのことについて事情を聞くためである。イヴリンはそのことに関する決定的なことは何も言わなかったが、ジルの父親は9年前に死んでおり、事件の夜はヒューストンにいたことを証言した。イヴリンはリリーが持っていたジルの写真に反応する。自分が撮った写真だという。感傷に浸るイヴリンを見たリリーは彼女に捜査の協力を再度説得し、イヴリンはリリーと共にメラニーの元を訪ねる。トッドから口止めされていたメラニーだが、イヴリンが自分のためにと懇願し、証言を始める。当時トッドのことをかばい続けたことを指摘されたメラニーは、警察が何度も聞いてくるからだと理由を述べる。そのとき、イヴリンが料理人のティム・ドーンについて警察がほとんど調べてなかったことを話す。シェルビー家の下宿人だったティムは事件の夜にジルとメラニーに会っていた。メラニーはティムがジルに後で遊びに来いと告げていたことを証言した。
署に戻ったリリーはティムについての資料を漁るが、1枚の紙切れとたったの二行のメモしかない。トッドに的を絞られていたため、ちゃんと調べられてなかったとラッシングに指摘され、リリーは現在刑務所に収監されているティムに会いに行くことにする。ラッシングも合流して、ティムへの聞き込みを開始するが、ティムは犯行を否定。ティムは、ジルから打ち明けられたことを喋り始める。メラニーは暴力に悩んでいたジルを尻目に、当時からトッドと影で付き合っていたのであった。再びメラニーの元へ行くリリーとラッシング。リリーらに影で付き合っていたことを指摘されて焦ったメラニーは、事件の夜に4人でいたときのことを話す。トッドにからかわれたジルが場を去ってそれを追いかけたエリック、2人きりになったトッドとメラニーはそのまま一緒に二階で共に過ごしたのだった。また、メラニーによると、エリックが昨晩6年断っていた酒を飲んでやってきたという。ラッシングはジルの名前を聞いた途端に6年も断った酒を飲み始めたエリックの行動におかしさを感じる。
翌朝、ボートを漕ぎに行っているトッドの元へ、偶然を装い現れるリリー。トッドのエリックと居たという証言と、メラニーのトッドと居たという証言に食い違いが見られることから、トッドがエリックをかばっているのではないかと推測。畳み掛けるように推測を述べ続けるリリーに、トッドはリリーのことをいつでも潰せると脅しをかけるが、リリーはひるまずに喋る。そんなリリーにトッドは何故今頃蒸し返すのかを聞く。リリーは「忘れちゃいけないから」「正義は平等なの」と答える。それから暗くなるまで休まずに事件を調べるリリーの元にスティルマンがやってくる。どうやら早速トッドからの圧力が来たようである。市警本部長への告げ口に呆れるリリーは、ヴェラから酒気帯び運転でエリックが連行されていることを教えられる。話しかけてきたリリーにエリックは市警本部長の件を持ち出すが、リリーは了承済みである。そんなリリーに捨て台詞を吐いてエリックは去っていく。
翌日、イヴリンがジルの写真などを持って署にやって来る。イヴリンはアルバムの中からチャーリー・ウィンターズという男の写真を見せる。ジルが死んで数年後に「犯人はウィットリー兄弟だ」と告げに来たらしい。ジルの父親が警察に話しに行ったが、本当は行かなかったために、記録にはなかった。リリーはチャーリーを探すことをイヴリンに伝える。郊外で瞑想センターを開くチャーリーの元を訪れたリリーたち。チャーリーは事件当夜、デッキチェアの上で眠り込んでいたときに、ウィットリー兄弟の口論を目撃。トッドは凶器と思われる物を手にし、エリックは汚れたジャケットの心配をしていた。ジャケットのことを疑問に思うリリーに、チャーリーはエリックが1年だけやっていたレスリングのジャケットだと教える。レスリングはエリックがトッドに勝てた唯一のものであった。
リリーはメラニーにトッドが凶器を持っていたことを告げるが、メラニーは信じようとしない。が、ついに折れて、トッドがエリックと言い争っているときに、「叔母の家には行くな」と言っていたことを話す。このことを喋ったことで家に帰れないと心配するメラニーとその子供を、リリーは自分の家へと連れて行くことにする。夜、駐車場を歩くリリーの元にトッドが現れる。力ずくでメラニーの居場所を聞き出そうとするが、リリーは動じない。叔母の家の件のことで家宅捜索の準備中であることを教えると、トッドはもうかばいきれないとエリックが犯人であることを署で供述することに同意する。バーで酒を飲むエリックを見つけたリリーは、トッドが色々喋ったことを話し始める。自分が殺したことになっていることに激昂するエリック。トッドの証言を覆せるのは、血で汚れても捨てられなかったレスリングのジャケット。エリックはあの夜のことをリリーに話し始める。―テニスコートで愛し合うジルとエリック。そんな2人の元にトッドがエリックのレスリングのジャケットを着てやってくる。2人を罵倒するトッドに言い返すジル。言い争いの中、ジルに中指を突きつけられたトッドはついに彼女をテニスラケットで殴り始める。ジルはエリックに助けを求めるが、エリックはどうすることも出来ずにその場に立ちすくんでいた。
調書をとるリリーに全てを話すエリック。彼らの叔母の家では、凶器となったテニスラケットも見つかり、ウィットリー兄弟が雨が降る中、連行されて行く。大勢の見物客の中には、ボニータにイヴリン、メラニーが彼らを見つめ、そして死んだジルが当時の姿でリリーを見つめていた。リリーもそんな彼女を見つめ、雨に打たれながら噛みしめるように目を閉じた。
ゲスト出演者[編集]
- 1976年
- ケイト・マーラ - ジル・シェルビー
- キップ・マーティン - トッド・ウィットリー
- Finn Wittrock - エリック・ウィットリー
- ベッキー・ニュートン - メラニー
- Diana Burbano - ボニータ
- ロバート・ウォルターズ - チャーリー
- 2003年
- D・W・モフェット - トッド・ウィットリー
- マイケル・レイリー・バーク - エリック・ウィットリー
- リサ・ワルツ - メラニー・ウィットリー
- エリザベス・フランツ - イヴリン・シェルビー
- リリアン・ハースト - ボニータ
- シャーマン・ハワード - ティム・ドーン
- ティム・コート - チャーリー
- 日本語吹替え版
使用楽曲[編集]
- 宇宙の彼方へ (More Than a Feeling) … ボストン
- Soul Searching … Soul Hooligan
- You Sexy Thing … Hot Chocolate
- I'm Not in Love … 10cc
- 雨を見たかい (Have You Ever Seen the Rain?) … クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル
トリビア[編集]
脚注[編集]
- ↑ 「雨を見たかい?」。