セルジオ・マルチーノ
セルジオ・マルチーノ(Sergio Martino、1938年7月19日 - )は、イタリアの映画監督、脚本家、映画プロデューサー。マルティーノとも表記される。『死霊の暗殺/エトルスカン』(1982)ではChristian Plummer、『サイボーグ・ハンター/ニューヨーク2019』(1983)、『片腕サイボーグ』(1986)、『ミラクル・タイガー/魔界大冒険』(1989)、『復讐のキリマンジャロ』(1990)、『Sulle tracce del condor』(1990)ではマーティン・ドルマン(Martin Dolman)、『殺しへの微笑』(1992)ではジョルジ・ラミント(George Raminto)の別名を使用した。
経歴[編集]
ローマ生まれ。祖父は映画監督のジェンナロ・リゲルリ。兄はプロデューサー・脚本家のルチアーノ・マルチーノ[1]。兄ルチアーノらの現場で監督助手・美術・製作等に携わり[2]、1969年にモンド映画『Mille peccati... nessuna virtù』で監督デビュー。以後、様々なジャンルの娯楽映画を量産する職人監督として活躍する。1971年から72年に兄ルチアーノのプロデュースで4本のジャッロ映画『Lo strano vizio della signora Wardh(ワード夫人の奇妙な悪癖)』、『Il tuo vizio è una stanza chiusa e solo io ne ho la chiave(黒猫の目)』、『La coda dello scorpione(蠍の尾)』、『Tutti i colori del buio(全てを暗黒に[2]/暗闇に待つあらゆる災厄[3])』を監督し、そのうち3本に当時兄ルチアーノの妻だったエドウィジュ・フェネシュが出演した[2]。フェネシュはセクシーコメディ『40 Gradi all'ombra del lenzuolo』(1976)や『Cornetti alla crema』(1981)などにも出演し[1]、マルチーノ監督作品の常連となった[3]。『Tutti i colori del buio』はロマン・ポランスキー監督の『ローズマリーの赤ちゃん』(1969)を下敷きにしている[3]。1973年に代表作といわれるジャッロ映画『影なき淫獣』を監督した。マリオ・バーヴァ監督の『血みどろの入江』(1971)とともにボディ・カウント系スラッシャー映画の先駆となり[2][4]、クエンティン・タランティーノ監督の『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007)[5]やイーライ・ロス監督の『ホステル2』(2007)にも影響を与えた[6]。
その他の監督作品にポリツィオテスキ『イタリアン・コネクション』(1973)、マカロニ・ウエスタン『ハチェット無頼』(1977)、アクションアドベンチャー映画・食人映画『ホウリー・マウンテンの秘宝/密林美女の謝肉祭』(1977)、H・G・ウェルズの『モロー博士の島』を基にしたアクションホラー映画『ドクター・モリスの島/フィッシュマン』(1979)、アドベンチャーホラー映画『パニック・アリゲーター/悪魔の棲む沼』(1979)、ホラー映画『死霊の暗殺/エトルスカン』(1982)、『ニューヨーク1997』(1981)と『マッドマックス2』(1981)の影響を受けたポストアポカリプス映画『サイボーグ・ハンター/ニューヨーク2019』(1983)、日本では『吐きだめの悪魔』と2本立てで公開されたSFアクション映画『片腕サイボーグ』(1986)などがある。80年代からはTV映画やTVドラマの監督として活躍している。
作品[編集]
監督[編集]
映画[編集]
- Mille peccati... nessuna virtù(1969)
- アリゾナ無宿・レッドリバーの決闘(1970)
- 裸と猟奇の世界(1970)
- Lo strano vizio della signora Wardh(1971)
- La coda dello scorpione(1971)
- Il tuo vizio è una stanza chiusa e solo io ne ho la chiave(1972)
- Tutti i colori del buio(1972)
- 影なき淫獣(1973)
- Giovannona Coscialunga disonorata con onore(1973)
- イタリアン・コネクション(1973)
- セクシー・リレーション(1974)
- 愛のほほえみ(1974)
- La città gioca d'azzardo(1975)
- La polizia accusa: il servizio segreto uccide(1975)
- Morte sospetta di una minorenne(1975)
- 40 gradi all'ombra del lenzuolo(1976)
- Spogliamoci così, senza pudor...(1976)
- ハチェット無頼(1977)
- ホウリー・マウンテンの秘宝/密林美女の謝肉祭(1977)※ソフトタイトルは『食人伝説』。
- ドクター・モリスの島/フィッシュマン(1979)
- Sabato, domenica e venerdì(1979)
- パニック・アリゲーター/悪魔の棲む沼(1979)
- La moglie in vacanza... l'amante in città(1980)
- Zucchero, miele e peperoncino(1980)
- Spaghetti a mezzanotte(1981)
- Cornetti alla crema(1981)
- Ricchi, ricchissimi... praticamente in mutande(1982)
- 死霊の暗殺/エトルスカン(1982)
- Acapulco, prima spiaggia... a sinistra(1983)
- サイボーグ・ハンター/ニューヨーク2019(1983)
- Occhio, malocchio, prezzemolo e finocchio(1983)
- Se tutto va bene siamo rovinati(1983)
- Gigi e Andrea, comici in a... scesa(1984)
- L'allenatore nel pallone(1984)
- Mezzo destro mezzo sinistro - 2 calciatori senza pallone(1985)
- 片腕サイボーグ(1986)
- オポネント(1988)
- カサブランカ・エクスプレス(1989)
- ミラクル・タイガー/魔界大冒険(1989)
- 復讐のキリマンジャロ(1990)
- Sulle tracce del condor(1990)
- Un orso chiamato Arturo(1992)
- 殺しへの微笑(1992)
- Graffiante desiderio(1993)
- L'allenatore nel pallone 2(2008)
TV[編集]
- Gigi e Andrea, comici in a... scesa(1984)
- Alla conquista di Roma(1985)
- Doppio misto(1985)
- Caccia al ladro d'autore(1985-86)※3エピソード
- Ferragosto O.K.(1986)
- La famiglia Brandacci(1987)
- 誘惑の香り(1987)
- Provare per credere(1988)
- Rally(1989)※4エピソード
- Delitti privati(1993)※4エピソード
- La regina degli uomini pesce(1995)
- Padre papà(1996)
- Mamma per caso(1997)※4エピソード
- A due passi dal cielo(1999)
- L'ispettore Giusti(1999)
- Mozart è un assassino(1999)
- Cornetti al miele(1999)
- L'ultimo sogno(2000)
- L'ultimo rigore(2002)
- Una donna scomoda(2004)
- L'ultimo rigore 2(2006)
- Carabinieri(2006-07)※48エピソード
- Il paese delle piccole piogge (2012)
脚本[編集]
- Per 100.000 dollari t'ammazzo(1967)
- 続・人類の恥部を剥ぐ!(1971)
- 死神ジョーズ・戦慄の血しぶき(1984)※原案
- Gratta e vinci(1996)
製作[編集]
- 二匹の流れ星(1967)※製作総指揮
- 砂漠の戦場エル・アラメン(1969)※製作総指揮
- L'altra faccia del Peccato(1969)※アソシエイトプロデューサー
- 甘く危険な女(1969)※製作総指揮
- La ragazza di Cortina(1994)※製作総指揮
- Biuti quin Olivia(2002)
出典[編集]
- ↑ a b IMDb
- ↑ a b c d 山崎圭司編『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ――血ぬられたハッタリの美学』フィルムアート社、2008年、184-187頁
- ↑ a b c ele-king編集部編『決してひとりでは読まないでください──ダリオ・アルジェント『サスペリア』の衝撃』Pヴァイン、2023年、135頁
- ↑ ele-king編集部編『決してひとりでは読まないでください──ダリオ・アルジェント『サスペリア』の衝撃』Pヴァイン、2023年、137頁
- ↑ 『グラインドハウス映画入門(洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)』洋泉社、2007年、168-169頁
- ↑ Keith Phipps「24 Hours Of Horror With Eli Roth」A.V. Club、2007年10月24日