スレイン・トロイヤード
スレイン・トロイヤード(すれいん・とろいやーど)とは、オリジナルテレビアニメ『ALDNOAH.ZERO』に登場するキャラクターである。本作の主人公の一人。
概要・活躍[編集]
CV:小野賢章
火星の国家『ヴァース帝国』に属する地球生まれの少年。アルドノアを研究する科学者・トロイヤード博士の息子であり、地球に住んでいた頃は生まれ故郷の北欧を離れ、世界各地転々と渡り過ごしてきた。
物語開始時より5年前の2009年にアルドノア関係の研究のために父と一緒にヴァース帝国本国の火星へ移住し籍を移し宮殿で暮らすようになる。この移住の際に事故に合い一人用ポッドが皇族の宮殿内に墜落。溺死しかけるが、そこをアセイラム・ヴァース・アリューシアによって救出される。この一件以来、アセイラムと親交を持つようになり、彼女に恩義と忠誠を誓うようになる。また、その時に人工呼吸のためにアセイラムと口づけをした事で、両者知らず知らずのうちにアルドノアの力を授かっていた。
トロイヤード博士の死後はアセイラムたっての願いにより彼女の家庭教師役兼火星騎士・クルーテオ卿の召使いを務めるようになるが、地球産まれである事からヴァース国民からは差別を受け、クルーテオやトリルラン卿からは「犬」と蔑まれ暴行を受けていた。
第1期[編集]
アセイラムが地球とヴァースとの親善大使として地球に赴き、そこでテロに巻き込まれ死亡した事で戦争が勃発。スレインも一兵士として戦場に派遣され、地球との友好を願ったアセイラムの思いとは真逆の光景を目の当たりにする。更に戦場で死亡したはずのアセイラムを目撃。アセイラムをテロに見せかけて暗殺しようとした首謀者であったトリルランを射殺してしまう。
トリルランの背後には計画の黒幕が潜んでおり、スレインはアセイラム生存の報を誰にもこの事を打ち明けられなかった。起死回生の手段としてヴァース現皇帝でアセイラムの祖父・レイレガリアとホログラム装置を使って謁見、アセイラムの存命を伝えるも、それは黒幕であるザーツバルム卿によって歪められ、逆にスレインはスパイとして逮捕されそうになる。「スカイキャリア」で脱出したスレインはアセイラムが居る場所である「オレンジ色の機体=界塚伊奈帆」が戦う戦場へと向かう。
しかし、目的地である種子島に着いたはいいが、ここで伊奈帆達とフェミーアン卿のカタクラフト「ヘラス」との戦闘に巻き込まれ、一時的に伊奈帆と共闘する事になる。更に戦闘終結後に伊奈帆の不意打ちを受け撃墜されるという悲惨な結果に終わった。
そのままクルーテオに捕えられ恐ろしい拷問を受けるがアセイラムを守るべく一切口を割らず、最後まで耐え抜きそのまま気を失ってしまう。命を賭してまでアセイラムへの忠義を貫く姿勢にクルーテオは感動し騎士の陰謀を知るが、直後にザーツバルムの駆る「ディオスクリア」が襲撃しクルーテオを殺害。そのままスレインを攫って行ってしまう。
ザーツバルムの揚陸城で目を覚ましたスレインは、そこでアセイラム暗殺計画の真相「地球を手に入れ今の腐敗したヴァース帝国を打ち滅ぼす、アセイラム暗殺はその切っ掛け」を聞かされ、ヴァースのシステムに染まっていない人物として仲間に誘われる。ヴァースの酷い現状をスレインもよく知っており、ザーツバルムの掲げる大義とアセイラムを守ろうとする意志の板挟みとなり苦悩する。
答えを出せないうちにザーツバルムは地球侵攻の最終手段として地球軍のロシア本部へと総攻撃を仕掛け、戦いは揚陸城へと飛び火していった。スレインはクルーテオの乗機であったカタクラフト「タルシス」を起動させ出撃。そこでザーツバルムの乗機「ディオスクリア」が伊奈帆の乗機「スレイプニール」に追い詰められとどめを刺されようとする場面だった。咄嗟にザーツバルムを助け戦闘を中断させるスレイン。しかし、この選択が切っ掛けとなり自らの目の前でアセイラムがザーツバルムの放った銃弾に撃たれ倒れる、という悲劇を生みだしてしまった。悲痛な叫び声を上げながらザーツバルムを撃つが、どれも致命傷にはなりえない弾だった。次にスレインは伊奈帆に銃を向け左眼を撃ち抜き昏倒させる。この時が二人の初顔合わせであった。スレインはザーツバルムに「命を助け脱出させる代わりにアセイラムの命も助けさせる」という拒否不可能の取引を行い承諾させ、そのまま揚陸城から脱出した。
第2期[編集]
騎士の称号と正式に「タルシス」を得ており、ザーツバルムの右腕としてその手腕を奮っていた。ハークライトという初めての部下も付いており、彼からは厚い忠誠を得ている。その一方で地球出身者の癖に騎士なんてという差別・嫉妬も受け続けており、マリルシャン卿など反対勢力も多かった。医療装置に入れられ未だに意識の戻らないアセイラムを案じ、悲しみながらも忠誠を誓い続けており、またアセイラムの影武者として用意されたレムリナ・ヴァース・エンヴァースにも献身的に支え忠義を誓っている。
宇宙空間での月面基地を巡る戦いで伊奈帆と再会し激突。この戦い前後にお互いの素性を初めて理解した。その後、マリルシャンにケンカを吹っ掛けられたスレインを庇ってザーツバルムが、その忠誠と忠勤っぷりを称してスレインを養子にすると宣言する事で場を収めた。スレインはこの事に感謝しつつも、かつてのアセイラムを意識不明に追い込み信念を踏みにじった行為を許しておらず、続くザーツバルムと伊奈帆の戦闘に乗じ罠を仕掛けザーツバルムを謀殺する。その際の最後の通信がザーツバルムを父と呼んだ最初で最後の会話だった。ザーツバルムの国葬の場で演説でその意志と家名を継ぐ事を宣言、ついに伯爵の地位にまで上り詰めた。
散々攻めても落とせなかった地球軍の防衛拠点をたった一人で陥落させ、反対勢力の筆頭だったマリルシャンを決闘で葬り去るなどでヴァース内部でも認められる存在となる。アセイラムを演じるレムリナを妻として共に地球に新国家を樹立する事を宣言し、他の騎士に干渉出来るアルドノアの力を与えられた事で逆らうものは誰もいなくなった。スレインの下でヴァース側は統制されるようになる。
アセイラムも長いこん睡状態から目を覚まし回復した涙を流し喜ぶ。しかし、アセイラムが願いとは正反対の行為に手を染め地球に更なる戦火をまき散らそうとしている自身の姿に嫌悪し対面を避けるようになっている。また、レムリナにアセイラムの回復を伏せ偽っている事にも罪悪感を感じており、レムリナはいつまでもスレインの心を独り占めにしているアセイラムに嫉妬の炎を燃やしている。
性格[編集]
もう一人の主人公である伊奈帆と正反対となる、年相応の感受性を持ち精神的に不安定な面が目立つ。感情表現も終始ポーカーフェイスである伊奈帆の分を補うかのように豊かで、特に次々と迫りくる苛酷な状況に苦悩する事が多い。直情的で理知的な考えが出来ずに感情を優先して行動する事が多い。その一方で大切な存在のために身を捧げて献身する姿勢を宿しており、そのひた向きさや自らを犠牲にしても守ろうとする姿に心打たれる者も多い。
第2期からは一皮剥けたのか、意を決したような強い決意をした表情を採る事が多くなり、立ち振る舞いや言動も実力者としての姿を表すようになった。リーダーシップを見せヴァース軍を率いる存在となったが、影では自身のありように苦悩している。
登場機体[編集]
スカイキャリア[編集]
火星騎士のカタフラクトを戦場に送り届けるための輸送用航空機。第1期ではスレインはカタフラクトの操縦を認められていない身分だったため、主にこの機体に乗っていた。航空能力は高く旋回性も地球側の戦闘機と互角たが、輸送が主任務であるため武装は機関銃程度しかない。その独特な外見と色合いをして伊奈帆から「コウモリ」と呼ばれ、以後本名を呼ばれるまでのスレインの事を示すニックネームともなった(地球側ではなくヴァース側にもなりきれていないスレインの身の振り方を表現する意味も含まれている)。
タルシス[編集]
クルーテオの専用カタフラクトだったが、ザーツバルムによるクルーテオの揚陸城襲撃の際に強奪され、ロシア基地での戦闘の際にスレインが動かした事でそのまま乗機となった。
白銀の騎士の甲冑を想起させる曲線を多用した優美なフォルムをしており、両腕に楕円状のシールドを備えている。そのシールドには近接武器であるブレードや射撃用のビーム砲などの各種兵装も組み込まれた攻防一体の武装である。各部に配置されたバーニアによって機動力も高く、固有能力による戦闘力を底上げしている。
搭乗者に未来を予測させる固有能力を持つ。未来予知の範囲は狭いと数秒先の弾道の把握・不規則なデブリの動きの予測から、大きければ戦場での戦況予知やそれを活かしての作戦立案までをも可能とする。戦闘では敵の攻撃を悉く先読みしての回避・攻撃を得意とする。当然ながら未来予知出来ても活かせなければ意味はない。
搭乗者に影響を与えるという唯一のタイプの固有能力であり、他の火星騎士用カタクラフトのように無茶苦茶で目立つギミックは持たない。尖った部分は無いもののトータルで優れた機体性能であり、面と向かった戦いに向いた、どこかヒーロー然としたロボットでもある。
伊奈帆からは、そのカラーリングと鳥を思わせるシルエットから「ウミネコ」と呼ばれている。どっちつかずのコウモリから晴れて鳥へと決まっている。これはスレインの覚悟が決まり火星騎士として戦う事を示している。