スパイクタイヤ
スパイクタイヤとは、かつて積雪路用のタイヤとして使用されていた自動車用のタイヤである。現在の日本国内では環境問題からスタッドレスタイヤに完全移行したため、特別な事情がない限り使用されることは滅多に無い。
概要[編集]
タイヤのトレッド面に金属性のスパイク(鋲)が備わっており、氷や雪に対して強力に食い込むことから凍結路などの低μ路でも抜群に安定走行ができたといわれている。一方、乾燥路ではスパイクがアスファルトを削り、粉塵を大気中にまき散らすため騒音や粉塵公害の原因にもなった。また、湿潤路面でも舗装面に対するダメージが強く、道路補修費用がかさむ原因にもなっていた。
かつて仙台市ではスパイクタイヤが原因で著しい粉塵が舞い上がり、仙台砂漠とまで呼ばれるほどの粉塵被害が発生していた[注 1]。1983年には仙台市営バスのスパイクタイヤを全廃。1985年に宮城県でスパイクタイヤ対策条例を制定し[注 2]、日本で初めてスパイクタイヤの使用を制限する条例を施行した。1990年にはスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律が定められ、人口密集地やその他の地域におけるスパイクタイヤの使用が制限されることとなった。
なお、スパイクタイヤが完全に使用禁止になったわけではなく、指定地域の道路でも凍結や積雪があればスパイクタイヤが使用できるほか、指定地域外の道路や未舗装道などにおいてはスパイクタイヤの使用が(法律上は)可能である。また、緊急自動車などの特定の自動車についても路面状況に関わらずスパイクタイヤの使用が許可されている。もっとも、スパイクタイヤ規制法の施行後は国内のスパイクタイヤの生産だけでなく、海外のスパイクタイヤ輸入に対する自粛要請もあり、スパイクタイヤの入手は非常に難しいものとなっている。個人輸入やスパイクタイヤを自作[注 3]して使用するケースもある。また、原付バイク(~125cc)はスパイクタイヤ規制の範囲外[1]となっているため、郵政カブなどはスパイクタイヤで配達している地域もあるらしい[2]。なお、この場合はスパイクが多すぎると乾燥路でのグリップが無くなるため、「ほどほど」のスパイクに調整している場合もあるとか。